Advertise with Googlier.com https://1ikkai.com エレクトロミュージックにまつわるいろいろな事 Tue, 27 Oct 2026 03:58:20 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=7.1.3 売ろうと思っていたModel:Cyclesに、カスタムファームを入れてみた https://1ikkai.com/2026/10/%e5%a3%b2%e3%82%8d%e3%81%86%e3%81%a8%e6%80%9d%e3%81%a3%e3%81%a6%e3%81%84%e3%81%9fmodelcycles%e3%81%ab%e3%80%81%e3%82%ab%e3%82%b9%e3%82%bf%e3%83%a0%e3%83%95%e3%82%a1%e3%83%bc%e3%83%a0%e3%82%92/ https://1ikkai.com/2026/10/%e5%a3%b2%e3%82%8d%e3%81%86%e3%81%a8%e6%80%9d%e3%81%a3%e3%81%a6%e3%81%84%e3%81%9fmodelcycles%e3%81%ab%e3%80%81%e3%82%ab%e3%82%b9%e3%82%bf%e3%83%a0%e3%83%95%e3%82%a1%e3%83%bc%e3%83%a0%e3%82%92/#respond Tue, 27 Oct 2026 03:58:20 +0000 https://1ikkai.com/?p=23850 はじめに

Elektron社の6トラックFMベースのグルーヴボックス、Model:Cycles。2020年2月に発売され、現在の国内の正規代理店価格は72,900円だ。私はちょうどパンデミックの頃に購入した。

正直に言うと、Model:Cyclesはそろそろ手放そうと思っていた。音も好き、操作方法も簡単で、このサイズ感が気に入ってはいたのだが、ボタンの固さがどうしても手に合わなかったのだ。DigitaktやDigitoneの計算機的というかパソコンっぽいカチカチとしたタッチではなく、強い弾力のあるゴム製スイッチを押すような感じとでもいうのか。そんなとき、海外で「Model:Cyclesがサンプラーになった」というニュースを見かけた。この秋、特に9月から10月にかけて、Elektronの機材を中心に、ユーザーが作った非公式のファームウェアが話題になっている。

そもそもファームウェアとは、機材の中に組み込まれているソフトのことだ。たとえばModel:Cyclesには、この機材専用のファームウェアがあらかじめインストールされていて、どのつまみを回せばどんな効果がかかるのか、どのボタンで何ができるのかが、すべてあらかじめ決められている。だから普通なら、ユーザーはその機能を一生そのまま使っていくことになる。メーカーがアップデートを出さない限り、できることは増えない。

しかし、こういった機材の仕組みに詳しい専門的な人や、あるいはコードが書ける人たちならば、このファームウェアの中身を解析し、メーカーが用意していなかった機能を、自分たちの手で書き足すことができるわけだ。それが、いわゆるカスタムファームウェアだ。

ファームウェアを書き換えて、そのファームウェアを一般に公開すること自体は、新しいことではない。その昔、AkaiのMPC1000にJJOSというファームウェアを入れることで、オリジナルにはなかった機能(例えばステップシーケンサー)が加わり、はるかに使いやすくなったことを覚えている。ちなみにJJOSは、もともとMPC1000の開発に関わったエンジニアが作ったと言われていて、なんと今も更新が続いている。いわば、中身を知り尽くした人の超マニアックな仕事だ。

一方、今話題になっているModel:Cyclesを含むElektron製品のカスタムファームウェアや、中国製FMシンセM-VAVE FM-1のファームウェアは、作者たちの説明によれば、メーカーとは関係のない人たちが、ファームウェアを自ら解析して作ったものだ。こうした解析は、かつてなら一握りの専門家が何か月もかけてやる、骨の折れるような作業だったわけだが、その手間を一気に縮めたのが、AIだった。

今回私が試してみたModel:Cycles向けにも、もうすでに7種類以上のカスタムファームウェアが出回っていて、サンプラーを追加するもの、Syntaktのエンジンを移植するものなど様々だ。手放そうとしていた私の機材に、思いがけず新しい可能性が出てきたわけだ。

通常、この手のハックで私が嫌なのは、インストールの面倒くささや、もしも壊れたらどうするのかといった、大なり小なりのリスクだ。でも、売るつもりだった機材なら、まあいいか。そう思い立ち、今回は、まずModel-TG v1.0.0、次にModded Cycles 2.0という2つのカスタムファームウェアを、実際に自分のModel:Cyclesに入れて試してみた(2026年10月時点)。

Model-TG

まず試したのは、Model-TGだ。作者はTinyGregAudio。これまでのModel:CyclesのOSに、サンプラーエンジンを書き足すという方式をとった、いわばサンプラー特化のファームウェアだ。

つまり、Model:Cyclesの6つのエンジン、Kick、Snare、Metal、Perc、Tone、Chordに続く、第7番目のエンジンとしてサンプラーが加わることになる。

このファームウェアを入れるには、かなりの緊張感が伴った。というのも、ターミナルの作業があるからだ。Model-TGは自分のパソコンの上でファームウェアを組み立てる。まず、組み立てに必要な道具をいくつかMacにインストールし、Model-TGの材料一式をダウンロードする。そこに、Elektron公式サイトから落とした純正のOSファイルを渡して、組み立てのコマンドを実行する。画面には意味の分からない英数字が大量に流れて、正直ひやひやした。でも、やはりここでもAIのおかげで、ターミナルなどほとんど触ったことのない私でも、一つずつ教わりながら最後までたどり着くことができた。

組み立てが終わったら、あとはそのファイルを、普段の公式アップデートと同じようにTransferで本体に送るだけ。ここまで来れば、もう怖くはなかった。インストールが完了し、さっそく水色のデータノブを回してみると、Samplerエンジンが確認できた。

サンプルはPCからTransfer経由で送ることができる。送るときは、本体の SETTINGS → Device Config › Transfer を「SMP」に切り替える。こうすると本体がTransferに対して、サンプル専用の兄弟機Model:Samplesとして名乗り、サンプルを受け取れるようになる。そしてもちろん、サンプルの波形も表示されて、スタートポイントとエンドポイントを視覚的に確認できる。

Samplerには、ワンショット、ループ、スライス、グラニュラー、ストレッチ、プラック、ウェーブの7つのモードがある。PluckやWaveは、この手のサンプラーマシンではあまり聞き慣れないものだが、これが面白い。

Pluckは、読み込んだサンプルを「弦をはじく力」として使って、ギターやハープのような「ポロン」という音を作るモードだ。仕組み自体は40年以上前からある古典的なもののようだが、自分のサンプルを素材にできるのは珍しい。ドラムの音を入れても、声を入れても、ちゃんと弦の音になるのが不思議で、初めて触ったときは思わず感心した。

Waveは、サンプルを短い波形に区切って、ウェーブテーブルとして鳴らすモード。こちらは少し手強い。普通のサンプルを入れると、ブザーのような荒々しい音になってしまう。きれいに鳴らすには、SerumやVital用に作られたウェーブテーブルのファイルを用意する必要があるのかもしれない。しかも、ちょっと操作が面倒だ。

モード以外にも、面白い機能がいくつかある。

まずはリサンプリング。本体で鳴っている音を録音して、そのままSamplerのサンプルにできる。純正のFMマシンで作った音を録って、グラニュラーやスライスで加工する。いわば、FMで作った音をサンプラーでもう一度料理できるわけだ。全体の音を録って1トラックにまとめれば、6トラックしかないModel:Cyclesで、トラックを空けることもできる。これはありがたい。

次に、純正のマシンにも手が入っていること。PRESETを押しながらDecay、Sweep、Contourを回すと、KickやToneといった元の6マシンにも、ゆっくりした立ち上がり(アタック)やフィルター、レゾナンスがかけられる。Samplerを使わない人にとっても、うれしい追加だ。

そして、逆再生がとても簡単なこと。サンプルの再生開始位置(Start)を、終了位置(End)より後ろにするだけで、逆再生になる。ステップごとに設定できるので、1か所だけ逆再生にする、といった遊び方もできる。

さらに、マスターエフェクトも12種類搭載されている。細かい設定は不可なのだが、本体の12個のつまみを回すことで、各エフェクトのかかり具合を調節できる(0でオフ)。中身はこんな具合だ。

つまみ エフェクト ざっくり言うと
1 ドライブ 音を歪ませる
2 クラッシュ ビット数を下げて、ザラザラにする
3 レート サンプルレートを下げて、ローファイにする
4 ポンプ 音量を周期的に下げる、サイドチェイン風の効果
5 フィルター 左に回すとローパス、右に回すとハイパス
6 レゾナンス フィルターのクセを強調する
7 リングモジュレーター 金属的な、ベルのような響きにする
8 ノイズライザー ノイズがせり上がっていく、盛り上げ用
9 ゲート テンポに合わせて音をブツブツ切る
10 テープストップ テープが止まるように、音が下がっていく
11 ヴァイナル レコードのヒスとプチプチ
12 フランジャー 1小節に1回、音がうねる

どのトラックにかけるかは、パッドで選べる。ビートリピートと同じページにあるので、音を細かく繰り返しながらエフェクトをかければ、その場でフィルインやブレイクが作れる。

気になったこと

これだけの機能が付け加えられるとなると、嬉しい反面、やはりCPUの超負荷が起こってしまう。私が試していた時は、マスターエフェクトを3つ重ね合わせたあたりから、雲行きが怪しくなり、ノイズが出始め、やがてテンポが乱れ始め、最終的にはフリーズしてしまった。一昔前のパソコンで、DAWがフリーズした時のような感じだ。

それから、これは私の主観でしかないのだが、操作は幾分複雑だ。再生モードの切り替えはSETTINGS+PRESET、モードの細かい設定はSETTINGS+PUNCH、リサンプリングはSETTINGS+RECORD。どれも本体のボタンには書かれていないので、最初は説明書と首っ引きだった。

しかし、なかなか面白い。Model:Cyclesに、兄弟機Model:Samplesさながらのサンプラー機能が付いてしまうなんて、とっても得した気分になる。まあ、兄弟機だからこそ、こんなことも可能になるのだろうか。

元のOSに戻すのも難しくない。Elektron公式サイトで配られている純正のOS(1.13)を書き込み直せば、普通のModel:Cyclesに戻る。書き込み方は、普段の公式アップデートと同じだ。実際に一度純正に戻してみたが、問題なく元どおりになった。万が一起動しなくなっても、起動メニュー(FUNCを押しながら電源を入れ、TRIG 4)から復旧できる。

 

Modded Cycles 2.0

次に試したのが、このModded Cycles 2.0だ。作者は18nelli18。このファームウェアを入れることで、

  • サンプラー(7つの再生モードとマスターエフェクト付き)
  • Syntakt(Elektronのドラムシンセサイザー)のエンジン5種類
  • MACRO(Braidsの47種類の音源)
  • ACID(TB-303風のアシッドベース)
  • トラックごとに4つのLFO
  • アルペジエーター
  • ステップ録音
  • サンプルの試聴
  • 6チャンネルのUSBオーディオ
  • テンポ最大546BPM、ラッチミュートなどの細かい改善

これだけの機能がすべて新しく上書きされるという。元の機能を失うこともない。

入れ方

Model-TGのときとは打って変わって、入れ方は拍子抜けするほど簡単だった。パソコンのブラウザで作者が公開しているページを開き、Model:CyclesをUSBケーブルでつないで、30秒ほど待つだけ。Elektron Transferすら使わない。

用意するのは、Elektron公式サイトで配られているModel:Cyclesの純正OSファイルと、Syntaktの公式OSファイル(Syntakt本体は持っていなくていい)。改造済みのファームウェアが配られているわけではなく、自分で用意した公式ファイルから、ブラウザの中で組み立てる仕組みだ。

使ってみて

これだけの数の新機能が入ると、全く新しい機材を手に入れたかのような気分になる。

まず嬉しいのは6chのUSBオーディオ。Ableton LiveとUSBケーブルで接続すると、6つのトラックがそれぞれパラで入力される。Overbridgeに対応していない機種なのに、だ。これまではステレオ1系統でしか取り込むことができなかったので、嬉しい。ただし、各トラックはパンをかける前のモノラルの音で、ディレイやリバーブは入らない。また、6chにしている間は、ステレオミックスはUSBに出てこない(本体の設定で、従来のステレオ2chにも切り替えられる)。

新しいエンジンとしてSyntaktのエンジンが5種類(SD VINTAGE、CP VINTAGE、SY TOY、SY BITS、SY SWARM)も載ってしまう。しかも、自分で用意したSyntaktの公式OSファイルから、エンジンを読み込む仕組みだから、私たちユーザーからしてみれば、なんてオーセンティックなバージョンアップなのかと興奮せずにはいられないのだが、当のElektronとしてみれば鼻息が荒くなるのも理解できる。(これが違法か違法でないのかは後ほど)

さらに、MACROとACIDという2つのエンジンも加わる。MACROは、Mutable Instrumentsのユーロラック・モジュール「Braids」のプログラムを組み込んだもので、SHAPEのつまみ1つで47種類もの音の作り方を切り替えられる。Mutable Instrumentsは、モジュールのプログラムをオープンソースとして公開していたので、Elektronのエンジンと違って、こちらはライセンスの上でも堂々と使える。むしろ、こういう使われ方こそ、望んでいたのかもしれない。ACIDは、その名の通りTB-303風のアシッドベース。カットオフ、レゾナンス、エンベロープ、ドライブを回せば、あのアシッドな鳴りが手に入る。

そして、こうしたエンジンを使いやすくしてくれるのが、アルペジエーターやステップ録音といった機能だ。RETRIGを使って和音を押さえればアルペジオになり、シーケンサーを止めた状態でRECを2回押せば、弾いた音が1ステップずつ置かれていく。メロディやベースラインを組むのが、純正よりずっと楽になる。

それからもちろん、サンプラーエンジンも。ところが触ってみると、見覚えがある。7つの再生モードも、マスターエフェクトも、Model-TGとまったく同じなのだ。実はModded Cycles 2.0のサンプラーは、Model-TGのサンプラーを丸ごと組み込んだものだった。つまり機能の上では、Modded Cycles 2.0はModel-TGをほぼ丸ごと含んでいることになる。違うのは、その上にサンプルの試聴のような使い勝手の機能が足されていることだ。

ちなみにModded Cyclesには、Model:CyclesをModel:Samplesそのものとして起動させてしまう機能まである。Model:SamplesのOSも、Elektron公式サイトで無料で配られているので、それを使って組み立てるのだ。兄弟機の垣根を、文字どおり越えてしまうわけだ。ただし、元のModel:Cyclesに戻すにはUSB-MIDIインターフェースが必要になるうえ、本体のつまみの印字とも合わなくなる(私はまだ試していない)。

気になったこと

使ってみて、これまでModel:Cyclesを使ってきて物足りなかった部分が付け足されていて本当に感心するのだが、しかしここでも、CPUが相当圧迫されているのに気が付く。本体のSystem画面を見てみると、サンプル用のメモリ(RAM)には全然余裕があるのに、CPUのほうはやっぱり厳しい。特にマスターエフェクトを重ねると、ガリガリっとしたノイズが出ることを多々経験した。それからMACROをいじっている間に、何度もノイズが出た。

なので、今のところライブに使うのは危険だ。ただ、このファームウェアはスピーディーにアップデートされているので、さらに洗練されていくに違いない。実際、作者は、同じ音をずっと少ない処理で鳴らす「Optimised OS」を、次の仕事としてサンプラーやSyntaktのエンジンと両立させる予定だと書いている。まさに今困っているCPUの問題に効く改良だ。

Elektronの対応

Model:CyclesもModel:Samplesも、現在も店頭に並ぶ現役機だ。当然、Elektronも黙ってはいない。9月16日、Elektronは自社の公式フォーラム「Elektronauts」やSNSで、カスタムファームウェアのファイルや入れ方、入手先を投稿することを禁止した。ただし、ユーザーが自分の機材を改造すること自体を禁じたわけではなく、改造について話し合うことも認めている。

ユーザーからすれば「できるのにやらせてくれない」と言いたくなる。一方で、メーカーにも事情がある。機能を詰め込みすぎれば、動作は不安定になる。ファームウェアの入れ替えに失敗すれば、機材が起動しなくなる、いわゆる「文鎮化」も起こりうるだろうし、サポートの問題も出てくるだろう。

さて、これが違法かどうかという話。現時点では、はっきりしたことは誰にも言えないことのようだ。というのも、作者たちは、改造済みのファームウェアそのものを配っているわけではないからだ。利用者がElektronの公式サイトから自分でダウンロードした純正のファイルに、自分のパソコンの中で手を加える、という回避策をとった仕組みになっている。今のところは、グレーゾーンとされているようだ。少なくとも、保証は効かなくなると考えておいたほうがいいだろう。

それでも変わらなかったもの:触り心地

ここまで書いてきたように、ファームウェアを入れ替えることで、Model:Cyclesの中身は、まるで大型のアップデートか何かを受けたかのように変わった。しかし、どうしても変わらなかったものがある。それは、指が触れる部分の感触だ。

冒頭にも書いたが、私がModel:Cyclesを手放そうと思っていた一番の理由は、ボタンの固さだった。どのスイッチも押し心地が固く、どうしても手に馴染まない。ファームウェアはソフトの中身を変えるものなので、当然ながら、この感触は1ミリも変わらない。

それどころか、新しい機能の多くはSETTINGSを押しながら別のボタンを押す、という組み合わせで呼び出す作りになっている。つまり、機能が増えたぶん、固いボタンを押す回数もむしろ増えた。便利になったはずなのに、触るたびのイライラは、かえって増した気さえする。

例外があるとすれば、Modded Cycles 2.0のステップ録音だ。音を1つずつ確かめながら置いていけるので、押し直しの手間が減る。触り心地との相性という意味では、数少ない救いだった。

機能は増えた。でも、触り心地は何も変わらなかった。これは、実際に手を動かしてみなければ分からなかったことだ。

機能が多ければ多いほど良いのかというと、そうではないということなのかもしれない。

最後に

ほんの少し前まで、Model:CyclesはFMのドラムマシンでしかなかった。それが今では、サンプラーになり、Syntaktのエンジンを鳴らし、6トラックのパラアウトまでこなす。しかもそれを作っているのは、メーカーではなく、世界のどこかにいる熱心なユーザーたちだ。メーカーが新機能を届けなくなった機材が、ユーザーの手で息を吹き返す。これは素直にワクワクする話だ。

中身をのぞくと、Modded Cyclesは、Model-TGのサンプラーやBraidsをもとにしたMACROなど、あちこちで公開されたコードを持ち寄った、いわば寄せ集めのファームウェアだ。たくさんの人の仕事が積み重なって、一つのファームウェアができあがっている。

AIによって、こういったファームウェアを作ることは格段に簡単になった。しばらくの間、少なくともメーカー側から何かしらの規制がかかるまでは、こうしたカスタムファームウェアが巷にどんどんあふれていくのだろう。

ただ、今回身に染みたのは、作ることより、実機で安定して動くかを確かめるテスト作業のほうが、ずっと大変だということだ。実際問題、今回試した2つのカスタムファームウェアでも、ノイズやフリーズの問題が多発した。そして、こうしたテストは、本来メーカーが一番得意とするところだ。今後メーカーが現状に対してどのような対策をとってくるのか、楽しみにしたい。

果たして私は、このModel:Cyclesを手放してしまうのだろうか。でも一部には、このカスタムファームウェアのブームで、中古価格がやや上がっているという書き込みもある。ここは「ちょっと待て」のサインと読んでおこうか。

Modded Cyclesの18nelli18さんと、Model-TGのTinyGregAudioさんに、大いに敬服したい。

どちらのファームウェアもElektron非公認で、試すなら自己責任だ。保証は効かなくなると考え、入れる前にはバックアップを。起動しなくなったときの復旧には、USB-MIDIインターフェースが必要になる(2026年10月時点、Modded Cycles 2.0とModel-TG v1.0.0で試した内容)。

参考

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https://1ikkai.com/2026/10/%e5%a3%b2%e3%82%8d%e3%81%86%e3%81%a8%e6%80%9d%e3%81%a3%e3%81%a6%e3%81%84%e3%81%9fmodelcycles%e3%81%ab%e3%80%81%e3%82%ab%e3%82%b9%e3%82%bf%e3%83%a0%e3%83%95%e3%82%a1%e3%83%bc%e3%83%a0%e3%82%92/feed/ 0 23850
ベルリン シンセサイザー ミュージアム|名機に触れる、ベルリンの名所 https://1ikkai.com/2026/10/%e3%83%99%e3%83%ab%e3%83%aa%e3%83%b3-%e3%82%b7%e3%83%b3%e3%82%bb%e3%82%b5%e3%82%a4%e3%82%b6%e3%83%bc-%e3%83%9f%e3%83%a5%e3%83%bc%e3%82%b8%e3%82%a2%e3%83%a0%ef%bd%9c%e5%90%8d%e6%a9%9f%e3%81%ab%e8%a7%a6/ https://1ikkai.com/2026/10/%e3%83%99%e3%83%ab%e3%83%aa%e3%83%b3-%e3%82%b7%e3%83%b3%e3%82%bb%e3%82%b5%e3%82%a4%e3%82%b6%e3%83%bc-%e3%83%9f%e3%83%a5%e3%83%bc%e3%82%b8%e3%82%a2%e3%83%a0%ef%bd%9c%e5%90%8d%e6%a9%9f%e3%81%ab%e8%a7%a6/#respond Tue, 06 Oct 2026 04:28:50 +0000 https://1ikkai.com/?p=23831 ベルリンのKreuzberg、Kottbusser Tor駅のすぐそばに「ベルリン・シンセサイザー・ミュージアム(Synthesizer Museum Berlin)」があります。落書きに覆われたビルを見上げると、スーパーマーケットREWEの赤い看板の上に、大きなつまみが描かれたSchneidersladenのバナーが掛かっています。ここはかつて、モジュラーシンセの有名なショップSchneiders Ladenがあった場所。店が移転したあとも、同じ場所でシンセの音が鳴り続けているのは、なんだかうれしいものです。

ベルリンのクロイツベルク地区ではもうすでにお馴染みの外観、この2階にシンセミュージアムが2025年にオープンしました。

入り口は、スーパーの入り口の横にある、ステッカーで埋め尽くされた年季の入った重たいドア。呼び鈴を押して扉を開けると、落書きだらけの階段が2階へと続いています。ベルクハインのような緊張感はないので、どうぞご安心を(笑)。

階段、いわゆるミュージアムっぽくはないです。

中に入ると、スタッフがレセプションまで案内してくれます。その先はラウンジのようなスペースで、天井からはキーボードが吊るされ、バーカウンターの側面にはDoepferをはじめとするシンセメーカーのステッカーがびっしり。飲み物(もちろんビールも)を片手にひと息つけるほか、テーブルにはStylophoneのような小型シンセも置かれていて、子どもたちも気軽に遊べる雰囲気です。

ラウンジ

展示スペースは年代やテーマごとに部屋が分かれ、ほとんどの場合ヘッドホンをつけて実際に弾けるのが最大の特徴です。中にはスピーカーにつながっている機材もあり、音が部屋に響くと、ちょっとしたスタジオにいる気分になります。

訪問時の館内図には50台近い機材が番号つきで並んでいて、MinimoogやProphet-5、DX7といった定番から、BuchlaやDoepferのモジュラー、さらにはソ連のPolivoksや東ドイツのVermonaまで。ベルリンらしく、東側の楽器にも出会えるのがうれしいところです。博物館というより、名機が並ぶ楽器店の試奏コーナーに迷い込んだような感覚でした。

奥の小部屋:System-100とKORG MSシリーズ

私が特に惹かれたのは、奥の小部屋です。壁一面が銀色のアルミシートのようなもので覆われていて、ちょっとSFの宇宙船の中にいるような雰囲気。ここにRolandとKORGの名機がそろっています。

まずはRoland System-100。鍵盤ユニットを中心に、エキスパンダー、シーケンサー、VUメーター付きのミキサー、そして両脇の専用スピーカーまでがそろったフルセットです。いくつかのユニットは東京のFive Gやネットオークションで見かけたことがありますが、フルセットで、しかも自分の手で触るのは初めての経験でした。

Roland System-100

正直なところ、鍵盤のタッチはお世辞にも心地よいとは言えません。それに、下手に触って壊したらどうしようという気持ちも働いて、どうしても手が縮こまってしまいます。そんなとき、スタッフが近づいてきて、シーケンサーを使った簡単なパターンの作り方を教えてくれました。ソフトシンセに慣れきった私にとって、アナログシンセとは改めて「手を動かす」楽器なのだと気づかされた瞬間でした。

それにしても、このSystem-100のデザインは素晴らしい。ユニットごとに独立した筐体を机の上に並べ、ケーブルでつないで一つの楽器にする。1975年の時点で、いまで言う「デスクトップシンセ」のような発想をすでに形にしていたんですね。

KORG MSシリーズ

KORG MSシリーズとSQ-10のセット。System-100のミニプラグとは違い、こちらはフォーンプラグでパッチング。太くて長いケーブルが、まるで蛇のように机の上をのたうっています。

赤い部屋

中央にあるのは、リビングルームのような赤い部屋です。赤いカーテンにふかふかのソファ、デビッドリンチの映像のような雰囲気。壁一面にはRoland System-700がそびえ立ち、私が入ったときには先客がヘッドホンをつけて、真剣な顔でパッチングに取り組んでいました。

この部屋では、Roland Jupiter-8やOberheim OB-X、そしてYAMAHA CS-80といった名機に実際に触ることができました。写真や音源でしか知らなかった機材が、手を伸ばせば届く場所に普通に置かれている。その「普通さ」に、かえってドキドキさせられました。

YAMAHA CS-80

ポップな部屋

一方こちらは、明るくポップな部屋。天井はカラフルなタイルのチェック柄で、窓ガラスには色とりどりの付箋がびっしりと貼られています。私が訪れたときは若い来場者が多く、友だち同士で一つの機材を囲みながら、あれこれ音を出していました。赤い部屋の落ち着いた空気とはまた違う、にぎやかな楽しさがあります。

この部屋で私が大盛り上がりしたのは、Moog Prodigy。そしてその隣のカラフルなMoog Source。こんな機材に気軽に触れられる機会って、なかなかないと思いませんか?奥では若いお客さんがTR-808を爆音で鳴らしています。

オーナーに聞いてみました

館内を一通り回ったあと、どうしても気になったことがあり、ミュージアムにメールで質問を送ってみました(2026年10月に回答をいただきました)。答えてくれたのは、創設者でオーナーのMichael Soltauさんです。

まず驚いたのが、展示されている機材のおよそ95%がSoltauさん自身のコレクションだということ。90年代から集め続けてきたそうで、残りは家主であり友人のAndreas Schneiderさんや、ほかのコレクターからの貸し出しだそうです。ここまで歩いてきた部屋いっぱいの名機が、ほぼ一人の情熱から集まったものだと思うと、見え方が変わってきます。

毎日誰かに弾かれるヴィンテージ機材だけに、修理は日常的。そのため館内には専属の技術者がいるそうです。私たちが気軽にフィルターを回せる裏側には、こうした地道なメンテナンスがあります。

「いちばん貴重で、いちばん心配な一台は?」という質問には、Memorymoogという答えが返ってきました。80年代初頭のポリフォニック・アナログシンセで、Soltauさんも素晴らしい楽器だと絶賛していますが、内部のコンピューター部分が不安定なため、普段は電源を落としているそうです。ほぼすべての機材が電源オンのこの館では、例外的な存在です。

そして「まだ手に入れていない機材は?」と聞くと、Moog System 55、Moog Liberation、PPG Wave 2の3台を挙げてくれました。これだけのコレクションを持つ人にも、まだ追いかけている名機がある。そのことに、なんだか親近感を覚えました。

ラウンジでひと休み

ラウンジに戻ると、今度は比較的新しい世代のシンセが並んでいます。Nord Lead A1、Access Virus TI、そしてベルリンのNonlinear Labsが手がけるC15。不思議なもので、新しいシンセは触った瞬間に「今の楽器だ」とわかり、なんとなく安心して音を出せます。System-100の前で手が縮こまっていたのが嘘のようでした。

ラウンジには昔の雑誌も置かれていて、ひと息つきながら手に取ったのは、イギリスの電子工作誌『ETI』の1983年2月号。読者が自分で組み立てるオルガンの製作記事が、びっしり描き込まれた回路図とともに何ページも続いています。シンセやオルガンを「買う」だけでなく「作る」時代があったことが伝わってきて、思わず読みふけってしまいました。

言い忘れていましたが、このミュージアムでは館内の録音ステーションを使って、自分の演奏を録ることができます。録音には、館内のショップで購入できるミュージアムのロゴ入りUSBメモリー(10ユーロ)を使うのがルールです。気に入った音色をその場で持ち帰れるのは、制作をする人にとってはたまらない仕組み。私も楽しみにしていたのですが、この日は混雑していて、思うように録音できなかったのが心残りでした。

また行きたい場所

混雑していたとはいえ、隣の人がヘッドホンを外して「これ、すごいよ」と目で合図してくるような、音好き同士のゆるやかな連帯感がありました。全部屋を回りきることもできなかったので、近いうちに平日の空いた時間を狙って、USBメモリーを持って再訪するつもりです。

画面の中で見慣れたパラメーターが、手のひらの感触と結びつく瞬間。それを味わえるだけでも、足を運ぶ価値は十分です。シンセサイザー好きなら一度は訪れてほしい、ベルリン観光で外せない名所です。


Synthesizer Museum Berlin(2026年10月時点)
住所:Skalitzer Straße 135A, 10999 Berlin(U-Bahn Kottbusser Tor駅すぐ)
営業時間:10:00〜18:00(火曜休館)
入場料:14ユーロ(2時間)
録音用USBメモリー:10ユーロ(館内に録音ステーション6か所)
ガイドツアー:毎週日曜 11:00(ドイツ語)/12:00(英語)、10ユーロ(別途入場料)
公式サイト:https://www.synthesizermuseum.info
※料金・営業時間・展示内容は変わることがあります。最新情報は公式サイトでご確認ください。

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https://1ikkai.com/2026/10/%e3%83%99%e3%83%ab%e3%83%aa%e3%83%b3-%e3%82%b7%e3%83%b3%e3%82%bb%e3%82%b5%e3%82%a4%e3%82%b6%e3%83%bc-%e3%83%9f%e3%83%a5%e3%83%bc%e3%82%b8%e3%82%a2%e3%83%a0%ef%bd%9c%e5%90%8d%e6%a9%9f%e3%81%ab%e8%a7%a6/feed/ 0 23831
スピーカー禁止のモジュラーフェスに行ってきた https://1ikkai.com/2026/09/%e3%82%b9%e3%83%94%e3%83%bc%e3%82%ab%e3%83%bc%e7%a6%81%e6%ad%a2%e3%81%ae%e3%83%a2%e3%82%b8%e3%83%a5%e3%83%a9%e3%83%bc%e3%83%95%e3%82%a7%e3%82%b9%e3%81%ab%e8%a1%8c%e3%81%a3%e3%81%a6%e3%81%8d%e3%81%9f/ https://1ikkai.com/2026/09/%e3%82%b9%e3%83%94%e3%83%bc%e3%82%ab%e3%83%bc%e7%a6%81%e6%ad%a2%e3%81%ae%e3%83%a2%e3%82%b8%e3%83%a5%e3%83%a9%e3%83%bc%e3%83%95%e3%82%a7%e3%82%b9%e3%81%ab%e8%a1%8c%e3%81%a3%e3%81%a6%e3%81%8d%e3%81%9f/#respond Fri, 04 Sep 2026 13:42:15 +0000 https://1ikkai.com/?p=23802 8月29日、オランダのロッテルダムで行われた Dutch Modular Fest に行ってきました。会場は WORM という独立系のアートセンター。出展は35社ほどのマーケットに加えて、モジュラーのライブ、トーク、ワークショップが一日中並行して行われていました。来場者は数百人といったところで、Superbooth や NAMM のような巨大イベントとは規模が違いますが、そのぶん一つひとつのブースにじっくり時間をかけられる、密度の濃い一日でした。

このシンセフェス、私がこれまでに見てきたフェスより一つユニークな点があります。それは会場でスピーカーを使って音を出すことが禁止されていたことです。来場者には前もってヘッドフォンの携帯が勧められていて、展示物のデモ演奏や試奏はすべてヘッドフォンを通して聴くことになります。いくつかのブースではデモンストレーターがマイクを使っていて、説明までヘッドフォン越しに聴くことができました。

ヘッドフォンで試聴すること自体は、Superbooth でも NAMM でも普通にあります。違うのは、会場全体でスピーカーを鳴らすこと自体が禁止されていた点です。

この手のイベントに行ったことがある人ならわかると思いますが、あちこちから流れてくるランダムな電子音に耳が疲れて、横にいる人ともろくに喋ることができないこともあります。半日も経つと耳がぼーっとしてくるんですよね。主催者によれば今年からの試みで、理由は「もっと意味のある会話ができるように」とのこと。まさに、私がこれまでのイベントで感じてきた不満そのものです。

全員がヘッドフォンを着用と聞くと、静まり返った部屋を想像するかもしれません。実際のところ雰囲気はいつもとそんなに変わらず、私たちも開発者の方々もヘッドフォンの扱いには慣れているので、ごく自然に電子楽器に触れているように見受けられました。

それに、自分のヘッドフォンで聴けるというのは、普段の作業環境の耳でその機材を判断できるということです。展示会場のスピーカーから鳴る音を聴くより、よほど正確かもしれません。主催者の狙いは会話のしやすさだったはずですが、結果として、聴く環境が来場者一人ひとりの手に戻ったことになります。

もっとも、気になる点もあります。各ブースには開発者があらかじめ用意したヘッドフォンが置かれていることが多く、来場者はそれを使い回すことになります。機種もバラバラですし、衛生面が気になる方もいるでしょう。私も次からは、使い慣れたものを持っていこうと思いました。

以下、会場で足が止まった機材について書いておきます。

XOR Electronics の NerdSEQ

ユーロラックの中に収まったトラッカー型のシーケンサーで、音符が縦に流れていく、あのトラッカーがそのままハードウェアになっている。DAW から来た人間には、いちばん見た目で意味がわかる機材でした。

そもそも私がモジュラーを敬遠してきた理由は二つあって、ひとつはこの手の機材はデータの保存ができないのではないかという不安、もうひとつは CV って何なんだという不勉強です。NerdSEQ はその両方を、わりと軽く超えていきました。プロジェクトは microSD に保存できますし、CV については、私が理解していなくてもこの機材が代わりに出してくれる。トラッカーの画面に音を並べれば、それがそのまま電圧になってラックに配られるわけです。

入力の自由さにも驚きました。Novation の Launchpad が完全に統合されているほか、MIDI キーボードやコントローラー、さらにはセガのゲームコントローラーまで挿さります。外部ディスプレイにも対応していて、小さな画面を覗き込まなくていい。ただしこれらは拡張基板を追加した場合の話で、本体だけで全部が挿さるわけではありません。

システム全体の値段が高いのはさておき、いつの日か、これで曲を作ってライブもしたい、そんな風に思いました。

DROID M4 Motorfader Controller

名前の通り、フェーダーにモーターが入っています。設定を切り替えると、フェーダーが自分で動いてその値の位置まで滑っていく。ユーロラックでは長年、つまみの位置と実際の値がずれるのが当たり前だったそうで、それを物理的に解決してしまったわけです。1本あたり最大800mAという消費電力の問題は、各フェーダーにスーパーキャパシタを積むことで回避したのだとか。

感心したのは、パラメーターごとにフェーダーの手応えそのものが変わることです。滑らかに動く設定もあれば、10段階、4段階と、パラメーターに応じて指に刻みが返ってくる。

それと、ランダムのスイッチを押すとフェーダーがそれぞれ勝手に上下して、そのままランダムな値になる。目の前で機械が動くので、何が起きたのかが音より先に目でわかります。こういうのは写真ではまったく伝わらない部分で、触ってみて初めてわかりました。

Faderpunk(ATOV / 650ユーロ)

ベルリンのメーカー。16本のフェーダーそれぞれに独立したアプリを割り当てられます。LFO、シーケンサー、クオンタイザー、乱数生成など。DROID がフェーダーを動かして解決したことを、こちらは16シーンの保存で処理する。見た目は似ていても考え方は逆です。ユーロラックにも入りますが、単体でも動きます。

Auto Rhythm(fruku.club / 2026年Q4予定)

ブースに出ていた未発表の試作機。6ボイスの自動ドラムシーケンサーです。Genre ノブを回すと Drum & Bass と Techno が切り替わり、下に並んだ赤いボタンでリズムのエネルギーを埋めていく。low、mid、high の3段階で密度が変わり、もう一つの Fill ボタンでフィルが入ります。音源は持たず、パターンを生成してトリガーを送るだけ。デモは KAWAI の古いドラムモジュール(おそらく R-50)を鳴らしていました。

 

PolyPulse(λ lambda synthetics / 1999ユーロ)

5トラックのオールインワン。それぞれにシーケンサー、音源、エフェクト、XY モーフパッドがついています。

面白いのはシーケンサーの考え方で、リズムと音程を分けて扱います。リズムは複数のパルスを重ねて作り、音程は別に用意したリストから拾ってくる。だからリズムとメロディを別々に差し替えられるわけです。ステップ数や拍子という前提そのものがないので、パターンごとに長さが違って、トラック間でどんどんずれていく。結果として延々と変化し続けます。

触ってみると、80年代か90年代の大型コンソールの前に座ったような気分に。音の個性というより、すべてを手元でコントロールすることに主眼が置かれている印象でした。インプロビゼーション的なライブをやりたくなります。

KONSTRUKT-8(Erica Synths / 490ユーロ)

8つのモジュールを自分で組み立てる DIY キット。単なる半田付けキットではなく、まずブレッドボードで回路を組んで動作を確かめてから基板に移る、という手順になっています。全部組み上げるのに週末2か月間くらいはかかるようです。でもドラムの音がとにかく良かった。テクノをやるなら、ここから入っていくのがいいのかもしれません。

Spotykach Dual Looper(Synthux Academy / 999ドル)
ステレオの録音デッキを2基積んだルーパーです。テープを模した Reel、リズムを刻む Slice、グラニュラーの Drift という3つのモードがあって、最大50秒のループを扱えます。画面はなく、操作は12個のタッチパッドと LED のフィードバックだけ。USB-C で動くので単体で完結します。

デザインが素晴らしく、音もいい。ただ価格には正直びっくりしました。作っているのはロッテルダムの非営利団体で、最初のロットは20台を代表者が自分で組んだとのこと。設計はオープンライセンスで公開されているので、原理的には自分で作ることもできる。それでも完成品を買う人がいるのは、買うこと自体が団体の活動を支えることになるからでしょう。

Talko 2(Polaxis / 179ユーロ、DIY キット129ユーロ)

ベルギーのスピーチシンセ専門工房。1980年代の音声合成チップのエミュレーションで、サンプリングは使わずリアルタイムに声を作ります。数字やアルファベット、音素を喋らせて、ピッチや速度をその場でいじれる。10年前に出した初代 Talko からの後継機で、その間ずっとこの一本をやり続けているわけです。

この AI 時代に、と思わずにいられませんが、やはりその熱意に感動します。ちなみにグリッチのボタンには Error という名前がついていて、これは同じ会場に出ていた Error Instruments へのオマージュだそうです。

Melancholytron(FRAKnoise / 850ユーロ)

本とセットで売られているシンセ。というより、まずメランコリーについての本があって、シンセはその同伴者なのだそうです。つまみの名前が darkness、waiting、linger、weight。本をめくると音を出したくなり、音を出すと、うーん、メランコリックになる。背面は MIDI と出力端子だけ。モジュラーとはかけ離れた設計ですが、音楽的な表現という点でとても素敵でした。

Chase Bliss

Superbooth 2026 では常に行列ができていて触る機会がなかったのですが、この日ようやく触れて納得しました。複雑じゃない、直感的なんですね。

ブースでは Chompi Club のサンプラーで出した音がペダルエフェクターのチェーンに繋がり、仕上げにこのモーターフェーダー付きディレイに流れる、という仕組みでデモしていました。80年代初期のラックマウント・ディレイの回路を下敷きにしたハイブリッドで、アナログのプリアンプとリミッターをデジタルの処理と組み合わせています。説明が明快で見せ方もうまく、正直すぐに欲しくなってしまいました。

耳が疲れないフェス

ここ最近、自分の中で少しばかりモジュラーブームが来ていたのですが、蓋を開けてみると、モジュラー以外のものにばかり目が行ってしまいましたね。それでも NerdSEQ の前では、これならいつか自分でも曲が作れてライブもできるんじゃないかと思えました。

そして何より、朝から晩まで会場にいて耳が疲れなかった。足腰はいつも通りくたびれましたが、頭がぼーっとしないまま帰れたのは初めてです。これが一番の収穫だったかもしれません。

オランダ、ロッテルダムもとっても興味深い街でした。モジュラーシンセのコミュニティーが脈々とあるところなんですね。そのあたりの話は、note の放浪記に書こうと思います。

10月末には東京でも Festival of Modular があるそうです。二度目に見たとき何が違って見えるのか、確かめてこようと思います。

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主旋律に3度や5度を重ねるような、ソロのハモリも作りやすい。ただ、「複数人が歌っている」感じのコーラスを加えようとすると、少し話が変わってくる。声を何本も重ねれば厚みは出せるが、人数の多さや、同じ場所で歌っているようなまとまりまで作るには、それなりに手間がかかる。

そこで今回は、AM I AUDIOのAI合唱プラグイン、I AM CHOIRを試してみた。実験用にSunoで作った曲から日本語女性ボーカルを取り出し、その声をもとに合唱を作っていく。

I AM CHOIRは、単声ボーカルを読み込むと、歌詞やメロディ、タイミング、フレージングを手がかりに、別の合唱パートを作ってくれるプラグインだ。よくあるコーラスエフェクトのように原音を複製して広げるというより、「このフレーズをコーラス隊に歌ってもらう」感覚に近い。

今回はAbleton Live上で使いながら、Suno由来のボーカルとどれくらい自然になじむのか、実際のアレンジで使えるのかを見ていく。

SunoのステムをLiveへ並べる

まずはSuno AIで、シンプルなデモ曲を作った。書き出したステムをボーカル、ドラム、ベース、その他の伴奏に分けて、Ableton Liveの各トラックに配置する。

今回はI AM CHOIRの変化を聴き取りやすくするため、Sunoでは日本語女性ボーカルの単声を指定し、バックコーラスやダブルはできるだけ入れないようなトラックにした。

ステム分離したSunoのボーカルは完全にドライなアカペラにはならず、伴奏や別パートの成分が少し混ざってしまった。ただ、今回見たいのはSunoのステム分離の精度ではない。少し現実的な条件のボーカル素材でも、I AM CHOIRがどんな合唱を作れるのかを試してみようと思う。

I AM CHOIRの使い方

Ableton Liveの「MIDIトラック」にI AM CHOIRを挿すと、最初に出てくる画面はかなりシンプルだ。中央のエリアへボーカルファイルをドラッグ&ドロップするか、Browserから読み込むだけでいい。

読み込めるオーディオは45秒以内。今回はSunoから書き出したボーカルステムから、サビを含む範囲を切り出して使った。

I am choirの初期画面、ここにボーカルのオーディオファイルを入れる

I AM CHOIRの使い方とモデル選び

ファイルを読み込むと、選択画面に切り替わる。ここでコーラスの種類、マイク、上下オクターブ、曲のキー、3度または5度のハーモニーを設定する。

コーラスのモデルは3種類あり、声のキャラクターだけでなく、対応する音域や向いている役割も少しずつ違う。

  • Gospel Choir:E2〜G5。男性と女性による混声コーラスで、3種類の中ではいちばん幅広く使える。ユニゾンで主旋律を太くしたいときはもちろん、3度や5度のハーモニー、サビのロングトーンにも向いている。まず最初に試すなら、このモデルがいちばんわかりやすい。

  • Kids Choir:A2〜E5。明るく軽い、子どもコーラスらしい響きが特徴だ。主旋律のオクターブ上に重ねたり、曲の上のほうにもう一枚レイヤーを足したりすると、声が少し上へ開いていく。低いフレーズよりも、高めのメロディで使うほうが自然に聴こえる。

  • Shout Choir:E2〜E4。男性によるシャウト/ギャングボーカル。メロディを滑らかに歌わせるためのモデルではなく、「Hey!」「Oh!」のような短い掛け声や、サビ終わりの一言、ブレイク前のアクセントに向いている。曲の中で一瞬だけ人数が増えたような勢いを出したいときに使うと面白い。

今回のように、メロディを持ったサビのバックコーラスを作るなら、まずはGospel Choirが基本になる。その上にKids Choirをオクターブ上で薄く重ねると、高域に空気感や浮遊感を足せる。

設定が決まったら、あとはCreate Vocalを押すだけだ。元のボーカルをもとに、I AM CHOIRが新しい合唱パートを生成してくれる。

コーラスのモデル、マイクの種類、オクターブ、ハーモニーなどの設定を選択する 準備ができたらCreate Vocalsボタンを押す

 

生成からLiveへ戻す

Create Vocalを押すと、すぐに合唱パートの生成が始まる。終わると波形が表示され、その場で試聴できる。

この画面では、生成したコーラスの質感も少し調整できる。Low Cutで低域を整理し、Brightnessで声の明るさを決め、Reverbで空間の広がりを足す。

原音のボーカルと混ぜるなら、Low Cutで下の帯域を少し整理しておくと扱いやすい。Brightnessを上げれば声は前に出るし、少し抑えれば主旋律の後ろに回しやすい。リバーブはここで加えてもいいが、最終的にはLive側でほかの楽器と一緒に調整してもいいだろう。

音を確認したらExportを押す。ボタンの表示がStemsに変わるので、それをAbleton Liveのオーディオトラックへドラッグ&ドロップする。

生成されたコーラスにローカット、ブライトネス、リバーブを加えることができる 設定ができたらExportボタンを押そう

生成したコーラスは、Live上では普通のオーディオクリップとして扱える。必要な場所だけ切り取り、Warpでタイミングを少し直し、EQやコンプ、リバーブを加える。プラグインの中だけで完結させず、普段のボーカル編集と同じように仕上げられるのは便利だ。

StemsスイッチをDAWにドラッグ&ドロップしよう

 

Sunoの女性ボーカルを合唱にする

ここからは、実際に作ったコーラスについて。

まずはSunoで作った曲から取り出した女性ボーカルを、I AM CHOIRに読み込んだ。今回は2種類のコーラスを生成している。

一つ目はGospel Choir。元のメロディと同じピッチで作り、主旋律の後ろに人数感を足す役割にした。いわゆるユニゾンのコーラスで、ボーカルをもう少し太く、大きく聴かせるための土台になる。

二つ目はKids Choir。はじめにオクターブ上を設定したのだが、これはピッチが高すぎたらしい。そこで3度上に設定し直した。主旋律を補強するというより、サビに明るさや浮遊感を加えるイメージだ。結果としては、高音がややキツい音になってしまい、子供らしさが少し足りなかったように聞こえる。

私が作った以下のデモ音源では、1.Sunoオリジナルボーカル 2.ゴスペルコーラス 3.キッズコーラス 4.全部のステムをまとめたので、聴いてみてほしい。

IAMChoir_demo

 

どうだろう? 7、8人のシンガーが合唱しているように聞こえないだろうか(笑)

個人的にいちばん面白かったのは、自宅のコンピュータの前で、これだけ人数のいるコーラスをすぐ試せることだった。

実際のコーラス隊に歌ってもらうなら、歌い手を集め、アレンジを準備し、録音して、編集して、ミックスする必要がある。経費もかかる。

でもI AM CHOIRなら、単声のボーカルを用意して、モデルと音程を選ぶだけで、曲の中に人数のいる声を加えられる。サビをどこまで開くか、どの言葉を複数人で歌わせるか、曲のどこで急に人数を増やすか。そういうアレンジを、デモ段階から試せるのは大きい。

整っているから、重ねやすい

I AM CHOIRは、元のボーカルのメロディ、歌詞、タイミングをかなり正確に追ってくれる。そのぶん、生成されたコーラスはきれいにそろって聴こえる。

単体で聴くと、少し整いすぎていると感じる場面もあった。実際のコーラスであるならば、個々の声の違い、語尾の揺れ、わずかなタイミングのズレがあってもう少し生々しいに違いない。

ただ、この均質さは悪いことばかりではない。I AM CHOIRを、一発で完成した合唱を出すためのプラグインではなく、合唱のレイヤーを作るための素材生成器として考えると、むしろ使いやすい。

今回のように、Gospel Choirをユニゾンの土台にして、その上へKids Choirをピッチ上で重ねる。さらに、別のマイク設定で作ったGospel Choirを小さく混ぜたり、必要な部分だけ3度上のハーモニーを足したり、Shout Choirで短い掛け声を入れたりする。こうして少しずつ違う素材を積み上げると、1種類だけでは出にくい広がりや、声の層が作れる。

もし実在のシンガーに歌ってもらえるなら、同じメロディでも歌い方の違うテイクを何本か録り、それぞれをI AM CHOIRに通して重ねていくことで、より自然で立体的なコーラスに近づけられるのはいうまでもない。

 

AIモデルと歌い手への還元

I AM CHOIRのモデルは、既存の有名歌手の声を無断で集めて学習させたものではない。各モデルは、実際の歌手やコーラスグループと直接協力して作られている。参加者は、自分たちの声がAIモデルの学習に使われることを理解し、同意したうえで録音に参加している。

そして、参加した歌い手には録音時の報酬だけでなく、製品の売上に応じたロイヤリティも支払われる。つまり、声を一度買い取って終わりではなく、I AM CHOIRが使われ、売れていくことで、モデル作りに関わった歌い手にも継続的にお金が戻る仕組みになっているそうだ。

まとめ

I AM CHOIRは、ボタン一つで完璧な人間の合唱を再現するための魔法のプラグインではない。入力ボーカルの状態に結果は左右されるし、生成された声が整いすぎて聴こえることもある。

それでも、自宅のコンピュータでGospel Choir、Kids Choir、Shout Choirという違うキャラクターを呼び出し、曲のとあるセクションに「人数」を足せる体験は新鮮だった。

単一のモデルをそのまま使うのではなく、複数のモデル、オクターブ、ハーモニー、マイク設定、入力テイクを組み合わせていく。そう考えると、I AM CHOIRは単なるAIコーラス生成ツールというより、合唱アレンジのための素材を作る道具として面白い。

169ドルは気軽に買える価格ではない。ただ、これまで予算や制作環境の都合で諦めていた「コーラス隊を使ったアレンジ」を、デモ段階から試せるようにする価値はある。

まずは14日間の無料トライアルを手に取ってみよう。現時点ではmacOS 12以降に対応し、VST3、AU、AAX形式で利用できる。Windows版は開発中となっている。

Am I Audio

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「AudioRoute 0.5」でPC音声をDAWに取り込む、設定不要のサンプリング環境 https://1ikkai.com/2026/08/%e3%80%8caudioroute-0-5%e3%80%8d%e3%81%a7pc%e9%9f%b3%e5%a3%b0%e3%82%92daw%e3%81%ab%e5%8f%96%e3%82%8a%e8%be%bc%e3%82%80%e3%80%81%e8%a8%ad%e5%ae%9a%e4%b8%8d%e8%a6%81%e3%81%ae%e3%82%b5%e3%83%b3%e3%83%97/ https://1ikkai.com/2026/08/%e3%80%8caudioroute-0-5%e3%80%8d%e3%81%a7pc%e9%9f%b3%e5%a3%b0%e3%82%92daw%e3%81%ab%e5%8f%96%e3%82%8a%e8%be%bc%e3%82%80%e3%80%81%e8%a8%ad%e5%ae%9a%e4%b8%8d%e8%a6%81%e3%81%ae%e3%82%b5%e3%83%b3%e3%83%97/#respond Fri, 07 Aug 2026 08:58:12 +0000 https://1ikkai.com/?p=23750 YouTubeの音源やブラウザで鳴らしたサウンドをサンプリングしたいとき。Web会議の音声を記録しておきたいとき。リファレンスにしたい曲をDAWへ取り込みたいとき。

そう思ってから波形がトラックに乗るまで、何工程あるだろう。「Audio MIDI 設定」を開いてBlackHoleを噛ませ、Live側の入力を切り替え、録って、終わったら全部元に戻す。手順は知っている。知っているからこそ面倒で、「まあ後でいいか」と思っているうちに、最初の「この音、使える」という熱はきれいに冷めている。実際、そういうことばかりでした。

サンプリングを止めているのは、たいてい音ではなく手順のほうです。

Arvital Audioの AudioRoute 0.5。これを入れてから、その手順がまるごとなくなりました。ずいぶん楽になった、というのがこの記事の結論です。

1. 仮想オーディオドライバーと何が違うのか

一番の違いは、OSやDAWのオーディオ設定を一切触らないことです。

常駐する本体アプリと、DAWに挿すプラグイン(VST3 / AU / AAX)が連携して動きます。システムの出力先を書き換えるのではなく、鳴っている音をアプリ側から直接受け取る。だから普段のモニター環境もマイク入力も生きたまま使えて、「戻し忘れ」が構造的に起きません。翌朝スタジオで音が出なくて青ざめる、あの事故が起きようがない。

インストールは、インストーラーを実行してmacOSのキャプチャ許可を通すだけ。あとはDAWを起動すれば「AudioRoute Capture」が一覧に並びます。

2. 0.5で入った「Record」モード

従来も音をDAWに流し込んで録ること自体はできました。ただしLiveの場合、フィードバックを避けるためにトラックを2本用意してSends Onlyにする、といった小さな知恵が必要でした。大した手間ではないけれど、思いつきで一発録るには一段重い。

Recordモード は、その一段をまるごと消しました。プラグインの中にレコーダーが入っていて、録った波形をそのままトラックへ引っぱっていけます。

3. 実際にやってみる(Ableton Liveの場合)

Step 1|取り込みたい音を再生する

ブラウザでもプレイヤーでも、ビデオ通話でも構いません。まだ何も設定していない状態で大丈夫です。

Step 2|トラックにプラグイン「AudioRoute Capture FX」をインサート

空のオーディオトラックで十分です。入力設定もモニター設定も触りません。

Step 3|Recordを押してキャプチャ

プラグイン上の録音ボタンを押すと、PCで鳴っている音がそのまま取り込まれていきます。DAWの録音ボタンは押しません。

YouTubeの音声を録音している様子。録れているかはメーターで分かる。右上の「Feedback safe」も安心材料

Step 4|波形をトラックにドラッグ&ドロップ

止めると波形が表示されます。あとはそれを掴んでトラックに落とすだけ。書き出しもバウンスも要りません。

Step 5|あとは普段どおり

置いた時点でただのオーディオクリップなので、Warpもスライスもいつもの手順で通ります。

「環境設定を開いて、ルーティングを変えて、別トラックを作って、録って、戻す」の代わりがこれだと考えると、差は小さくありません。

4. 覚えておくと得をする2つ

Keep my recordings をオンにすると録音がファイルとして残り、「Show Recordings folder」で保存先を一発で開けます。後で素材として整理したい人はオンで。

Advanced の中には Record at native capture rate、DC offset filter、Mono sumdown、Gain。普段は初期設定のままで問題ありませんが、モノ素材として取り込みたいときなどにここを使います。

価格と動作環境

価格 €29(買い切り・アップデート無償)
対応OS macOS / Windows
フォーマット VST3 / AU / AAX(+仮想入力デバイス、単体レコーダー)
体験版 14日間のフリートライアル https://audio-route.com/

バージョンはまだ0.x台です。6月の0.1.13から2か月で0.5.2、この記事を書いている最中にも2回上がりました。このペースは「活発」とも「まだ固まっていない」とも読める。実際、更新のたびにサンプルレート追従や録音中のデバイス切り替えといった足元の挙動が直されてきました。買い切り&アップデート無償なので、このまま走り続けてくれるなら歓迎ではありますが、更新のたびに何かが変わる前提で付き合うツールかもしれません。

 

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https://1ikkai.com/2026/08/%e3%80%8caudioroute-0-5%e3%80%8d%e3%81%a7pc%e9%9f%b3%e5%a3%b0%e3%82%92daw%e3%81%ab%e5%8f%96%e3%82%8a%e8%be%bc%e3%82%80%e3%80%81%e8%a8%ad%e5%ae%9a%e4%b8%8d%e8%a6%81%e3%81%ae%e3%82%b5%e3%83%b3%e3%83%97/feed/ 0 23750
Glitch²、いま触ってもやっぱり面白い ― illformed Kieran Fosterへの追悼 https://1ikkai.com/2026/08/glitch%c2%b2%e3%80%81%e3%81%84%e3%81%be%e8%a7%a6%e3%81%a3%e3%81%a6%e3%82%82%e3%82%84%e3%81%a3%e3%81%b1%e3%82%8a%e9%9d%a2%e7%99%bd%e3%81%84-%e2%80%95-illformed-kieran-foster%e3%81%b8%e3%81%ae%e8%bf%bd/ https://1ikkai.com/2026/08/glitch%c2%b2%e3%80%81%e3%81%84%e3%81%be%e8%a7%a6%e3%81%a3%e3%81%a6%e3%82%82%e3%82%84%e3%81%a3%e3%81%b1%e3%82%8a%e9%9d%a2%e7%99%bd%e3%81%84-%e2%80%95-illformed-kieran-foster%e3%81%b8%e3%81%ae%e8%bf%bd/#respond Thu, 06 Aug 2026 10:24:07 +0000 https://1ikkai.com/?p=23743 ここ一週間ほど、音楽テック系のメディアを回っていると、やたらとこのニュースを目にする。Glitch²の開発者、illformedことKieran Fosterが47歳で亡くなった。追悼として、友人の開発者たちの手でVST3対応が加えられ、フリーウェアとして公開されている。あちこちで見かけるうちに気になって、改めてGlitch²を引っ張り出して触ってみたら、普通に良かった。せっかくなので、その話を書いておきたい。

Glitch²とは

Glitch²は、illformedことKieran Fosterが作ったマルチエフェクトプラグイン。ディストーションやリバース、テープストップ、ゲーターなど、音を分解・再構築する系のエフェクトがずらっと並んでいて、それをステップシーケンサーで細かく組んで、狙ったタイミングで発動させる、というやつだ。

普通のエフェクトが音量やフィルターの変化をシーケンスするのに対して、Glitch²は「このステップでこのエフェクトON」みたいにエフェクトのON/OFF自体を精密に刻んでいくのが面白いところ。このオンオフの組み方自体でフレーズを考えたりもできる。組んだパターンは「シーン」として保存できて、鍵盤を叩くだけで瞬時に呼び出せる(最大128個)。ランダマイズ機能も充実してて、パラメータをいじりながら音の変化を観察してるだけでも面白い発見があるタイプのプラグインだ。

ちなみに2005年に出た初代Glitchは、この「テンポに同期させて音を精密に解体・再構成する」系プラグインの元祖みたいな存在で、2008年のSugar Bytes Effectrixなんかもここから影響を受けていると言われている。

実際に使ってみた感想

グリッチ系のエフェクトって、そもそも「正解」があるわけじゃない。EQやコンプみたいに「良い音を作るための正解の設定」を探る感じとは違って、パラメータをいじりながら偶然出てくる音を面白がる、という遊び方がそのまま許されている感覚がある。Glitch²はまさにそれで、直感的にガチャガチャ触っているだけで、IDMなんかで即使えそうなSFX的な音がポンポン出てくる。それから、曲の展開のある部分をあえてバグらせたい時なんかに、マスターにかけてやると、いい感じで音が溶け出して、また元に戻る、みたいなこともできる。

改めて感じたのは、エフェクトのON/OFFそのものをシーケンサー上でコントロールできる、という発想の斬新さ。普通のエフェクトはパラメータの値を時間軸で動かすけど、Glitch²は「このタイミングでこのエフェクトを発動させる/させない」を組んでいく。だから、狙って作ったというより「勝手に生まれた」ようなグリッチが自然にできる。10年以上前のプラグインなのに、この操作感は今使っても新鮮だった。

作った人の話

Kieran Foster
Kieran Foster氏

Glitch²の裏側を調べていて分かったのは、Kieran Fosterがただのプラグイン開発者ではなかったということ。長年Renoiseフォーラムの中心メンバーとして、トラッカー型DAW「Renoise」そのものの方向性を形作る手助けをしてきた人物でもあった。illformed、dblue、MaDHaTTeRという複数の名義を使い分け、プラグイン開発だけでなくBandcampでの音楽活動やアートワークも手がけていた、いわばマルチな作り手だったらしい。

今回のフリーウェア化を主導したのは、実は開発者仲間ではなく彼の妹Joniさんだったという。友人のjenokiさんがJoniさんとコミュニティの橋渡し役を務め、taktikやbeatslaughterといったRenoise周辺の開発者たちが協力してGlitch²のフリーウェア化を実現させた。開発者コミュニティが遺族と手を取り合って、彼の仕事を残した形だ。

illformed.comの追悼文は、彼を「音楽、サウンド、アート、伝説的なソフトウェア、そして圧倒的な人柄の良さという遺産をこの世界に残した」人物として描いている。一方でBandcampの自己紹介はというと、「気難しいやつ。塩っ辛いおっさん。バカな音を作る人。全体的にオタクっぽいやつ。あのGlitch VSTを作った。さあ、変になろうぜ!」と、いかにも砕けた調子だった。この温度差が、彼という人の輪郭をよく表している気がする。

自分も色々なプラグインを試すのが趣味であり仕事だったりするわけだけど、開発者と実際に話す機会があると、それはもうアーティストと喋っている感覚に近い。会話ひとつでそのプラグインがより好きになることもあれば、逆に印象が変わって、そこから鳴る音のイメージまで変わってしまうこともある。Kieran Fosterと直接話したことはないけれど、今回の一連の記事を読んで感じたのはまさにこれに近い感覚だった。彼と面識はなかったけれど、Glitch²を触るたびに、その存在を少し思い出すことになりそうだ。

Glitch²のダウンロードはこちらから https://illformed.com/glitch/

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Native Instrumentsはなぜ音楽家から愛され、そして巨大化の波に飲まれたのか——あるユーザーの20年 https://1ikkai.com/2026/07/native-instruments%e3%81%af%e3%81%aa%e3%81%9c%e9%9f%b3%e6%a5%bd%e5%ae%b6%e3%81%8b%e3%82%89%e6%84%9b%e3%81%95%e3%82%8c%e3%80%81%e3%81%9d%e3%81%97%e3%81%a6%e5%b7%a8%e5%a4%a7%e5%8c%96%e3%81%ae%e6%b3%a2/ https://1ikkai.com/2026/07/native-instruments%e3%81%af%e3%81%aa%e3%81%9c%e9%9f%b3%e6%a5%bd%e5%ae%b6%e3%81%8b%e3%82%89%e6%84%9b%e3%81%95%e3%82%8c%e3%80%81%e3%81%9d%e3%81%97%e3%81%a6%e5%b7%a8%e5%a4%a7%e5%8c%96%e3%81%ae%e6%b3%a2/#respond Mon, 20 Jul 2026 18:44:38 +0000 https://1ikkai.com/?p=23730 ベルリンが生んだ「未来の楽器メーカー」

Native InstrumentsがinMusicに買収された。

このニュースを、私は一人のユーザーとして受け止めた。2006年にベルリンに来てから20年、私はこの会社の製品とともに音楽をやってきた。だからこれは企業の分析ではない。その時代を、その街で生きた人間の記録である。

私がベルリンに移り住んだ頃、この街は世界の電子音楽の中心にいるような感覚があった。

壁の崩壊から15年余り。空き地と廃墟が残り、家賃は安く、その隙間に世界中から音楽家と技術者が流れ込んでいた。私が住んだのはクロイツベルクの近くだった。トルコ系の商店とレコード屋とスタジオが同じ通りに並び、誰も他人の来歴を問わない。既存の価値観に縛られない独特の空気が、そこにはあった。

その時代、ベルリンと深く結びついた企業がいくつか存在した。

Ableton、Native Instruments、SoundCloud。

彼らは単なるテクノロジー企業ではなく、「これから音楽はどう作られるのか」という未来像を提示していた。

その中でもNative Instrumentsは、まさにベルリン的な企業だった。

Traktorが見せた未来

私がNative Instrumentsと出会ったきっかけはTraktorだった。

2000年代、DJといえばまだターンテーブルが中心だった時代に、コンピューターだけでDJをするという発想は非常に革新的だった。

そして、風当たりも強かった。「それはDJじゃない」と、面と向かって言われたこともある。

批判には理由があった。当時のラップトップDJは、セッティングからして大変だった。オーディオインターフェースを繋ぎ、ドライバの機嫌をうかがい、ブースの隅に場所を確保する。針を落とせば音が出るターンテーブルの隣で、こちらは毎回小さな引っ越しをしていた。おまけに、画面を見つめてマウスを操作する姿は、フロアからは事務作業にしか見えない。「メールでもチェックしてるのか?」というジョークは、何度も聞いた。

もちろん、見方によってはハードウェアDJ機材をPCに置き換えただけとも言える。

しかし、実際に触れた時に感じたのは単なる代用品ではなかった。

大量の楽曲管理、波形表示、ビート解析、ソフトウェアならではの操作性。それらは便利機能ではなく、選曲とミックスの考え方そのものを変えるものだった。

Traktorは機材を再現したのではなく、コンピューターによって音楽表現を拡張する可能性を見せていた。

NIが特別だった理由――音源ではなく未来を売っていた

Native Instrumentsが多くの音楽家から愛された理由は、単に高品質な音源を作ったからではない。

彼らは新しい音、新しい制作方法、新しいワークフローを提示した。

Kontaktは、サンプラーという概念をコンピューターの中へ持ち込んだ。

Massiveは、ソフトウェアだからこそ可能になった新しいデジタルサウンドを作り、2000年代後半以降のエレクトロニックミュージックに大きな影響を与えた。あの太いデジタルベースは、アナログの再現からは絶対に出てこない音だった。

そして、それらを束ねたのがKompleteだった。

当時のフルバンドルは、駆け出しの音楽家が気軽に出せる額ではなかった。何ヶ月か迷って、ようやく手に入れたのは分厚い箱で、中にはインストールディスクが束になっていた。インストールには一晩かかり、終わった後は片っ端からプリセットを鳴らして朝になった。

全部を使いこなせるわけがない。それでも、まだ聴いたことのない音が何千と手元にあるという感覚は、巨大なライブラリを丸ごと手に入れたようなものだった。

KOMPLETEライブラリが全てハードディスクに収録されていた時代もあったんだよなー

Maschine――制作のワークフローを変えた箱

2009年、Maschineが登場した。

当時の音楽制作は、完全にDAWの画面の中にあった。ノートもオートメーションもミックスも、すべてマウスで「編集」する。便利だったが、どこかで身体を置き去りにしていた。

一方で、AkaiのMPCが築いた「叩いて作る」文化は、コンピューター中心の制作から切り離された、別の世界になりつつあった。

Maschineは、その二つを繋いだ。

パッドを叩けば、そのままソフトウェアに記録される。サンプルの編集も、音源のブラウジングも、アレンジも、ハードウェアから手を離さずにできる。「MPCのソフトウェア版」と言われたが、そうではなかった。コンピューターの無限のライブラリと、指で叩く身体性を、同時に成立させる新しいワークフローだった。

実際、Maschineを導入してから、私の制作は変わった。画面を「編集」する時間が減り、パッドを「演奏」する時間が増えた。

この時期、Kontrol X1やS4をはじめ、数々の斬新なコントローラーも登場した。ソフトウェアの会社が、次々とハードウェアで新しい演奏のかたちを提案してくる。

これらの製品に共通していたのは、既存の機材をソフトウェア化しただけではないということだった。

Native Instrumentsは、コンピューターを単なる録音ツールではなく、新しい楽器へ変えようとしていた。

Maschine Jamもあったよなー、まだ全然使えるんだけど

ベルリンから世界へ。そして変化の始まり

しかし、成功とともにNative Instrumentsは大きくなっていった。

ベルリンを拠点に、ロサンゼルス、東京、ロンドン、深圳など世界各地へ展開し、グローバル企業へ成長していった。

これは当然の流れでもあった。NIの製品は最初から国境を越えるものだった。世界中のミュージシャンがKontaktを使い、Massiveで音を作り、Maschineでビートを作った。

しかし同時に、会社の性質も変化していった。

ユーザーの席から、転機を一つ挙げるなら、私はsounds.comだったと思っている。

2018年、NIはサンプルのサブスクリプションサービスを始めた。Spliceが急成長していた市場への参入だった。そして、わずか1年ほどで畳まれた。

サービスの失敗自体は、責められることではない。挑戦には失敗がつきものだ。ただ、このあたりから、この会社の目線が変わったように感じた。「新しい楽器を作る」ことではなく、「音楽制作市場のどこを取るか」を考える会社になっていった。

新製品の発表から「未来」が消え、堅実なアップデートに変わった。Reaktorのような実験的な製品は、ラインナップの脇に追いやられた。届くメールは、拡張音源とセールの告知ばかりになった。

Soundwide――音楽制作エコシステムへの転換

2010年代後半、音楽制作業界も変化していた。

単に優れた音源を販売するだけではなく、サンプル、クラウド、オンラインサービスなど、音楽制作全体を支えるエコシステムが重要になっていった。

Native Instrumentsもその方向へ進んだ。

iZotope、Plugin Alliance、Brainworxなどを取り込み、Soundwideというグループを形成した。目指したのは、「音を作る」「音を編集する」「音を完成させる」までを一つのグループで提供することだった。

しかし、異なる文化を持つブランドを統合し、巨大なエコシステムを作ることは簡単ではなかった。

かつてNIが象徴していたのは、未来の楽器を作る会社だった。

しかし次第に、巨大な音楽制作企業へ変化していった。

同じ頃、街も変わっていた。家賃は上がり、アーティストの部屋にはスタートアップの社員が住み、クラブは一つずつ閉店した。

安く始められて、実験が許される。そういう土壌から生まれた会社が、その土壌の消失と並行して変わっていったのは、偶然ではなかったのかもしれない。

inMusic買収。その先にある未来

そして今、Native InstrumentsはinMusic傘下に入る。

inMusicはAkai Professional、Moog、Denon DJなどを所有する巨大な音楽機器グループだ。

不思議な巡り合わせだと思う。MPCの文化に、コンピューターの側から応えたのがMaschineだった。その二つが、20年近くを経て同じ屋根の下に入る。

MPCにKontaktやKompleteの巨大な音源環境が統合される未来。Maschineがより独立した楽器として進化する未来。TraktorがDJハードウェアと再び強く結びつく未来。

技術的には、面白い可能性をいくつも描ける。製品は続くだろうし、それ自体は悪いニュースではない。

終わったのは、製品ではなく物語の方だ。

「ベルリンの小さな会社が、音楽制作の未来を定義する」という、2000年代に確かに存在した物語である。

Native Instrumentsが残したもの

Native Instrumentsの歴史は、一企業の成功と失敗の話だけではない。

それは、ベルリンのクリエイティブ文化が世界へ広がり、巨大な市場の中で変化していく過程でもある。そして私にとっては、この街で過ごした20年の記録でもある。

ユーザーとして振り返って思う。TraktorもKompleteもMaschineも、素晴らしい製品だった。しかし、この会社が残した一番大きなものは、個々の製品ではなかった。

NIは、常にイノベーションを強調する会社だった。既存の機材を上手く再現することではなく、まだ存在しない使い方を提示すること。その製品は、出た時には必ず「これは何のための道具なのか」という戸惑いを生み、数年後には標準になっていた。

そしてもう一つ、この会社が強調し続けたのは、音楽制作の民主化だった。

高価なスタジオも、高価なハードウェアも持たない人間が、コンピューター一台で音楽を作れること。誰もが参加できる音楽制作。かつてそれは理想を語るスローガンに聞こえたが、20年経った今、現実になっている。ソフトウェアさえあれば、誰もがかなりのレベルの音楽を作れる時代が、実際に来たのだ。

Native Instrumentsが作ったものは、単なるソフトウェアではなかった。

「コンピューターを楽器にする」

という考え方そのものだった。

そしてNIが見せてくれたイノベーションは、いまやあらゆる音楽制作の道具の中に生きている。

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プログラミング不要!AIと一緒にAbleton Liveを最強にカスタムできる新機能「Extensions」の始め方 https://1ikkai.com/2026/06/%e3%83%97%e3%83%ad%e3%82%b0%e3%83%a9%e3%83%9f%e3%83%b3%e3%82%b0%e4%b8%8d%e8%a6%81%ef%bc%81ai%e3%81%a8%e4%b8%80%e7%b7%92%e3%81%abableton-live%e3%82%92%e6%9c%80%e5%bc%b7%e3%81%ab%e3%82%ab%e3%82%b9/ https://1ikkai.com/2026/06/%e3%83%97%e3%83%ad%e3%82%b0%e3%83%a9%e3%83%9f%e3%83%b3%e3%82%b0%e4%b8%8d%e8%a6%81%ef%bc%81ai%e3%81%a8%e4%b8%80%e7%b7%92%e3%81%abableton-live%e3%82%92%e6%9c%80%e5%bc%b7%e3%81%ab%e3%82%ab%e3%82%b9/#respond Tue, 02 Jun 2026 21:04:03 +0000 https://1ikkai.com/?p=23688 Ableton Liveを使っていて、限界を感じたことはないだろうか。あるいは、「こんな機能があれば」と思ったことはないだろうか。現在公開中のAbleton Live 12.4.5のベータバージョンでは、それを、コードで実現できるようになった!

それが「Ableton Extensions」だ。

実際に試してみた体験をもとに、何ができるのか、どう始めるのかを解説する。

1. 「Ableton Extensions」ってなに?

一言で言うと、「Liveの画面を右クリックして、いつでも自分専用の便利ツールを呼び出せるシステム」です。

これまでも「Max for Live(M4L)」という拡張機能がありましたが、アレは「オリジナルのシンセやエフェクター(音を出す・加工する道具)」を作るのが得意でした。

今回の「Extensions」は違います。音をいじるのではなく、「Liveの操作そのものを自動化・便利にする」のが大得意なのです。

例えばこんなことができる(公式の例)

名前の一括変更: たくさんあるクリップの名前を一瞬で書き換える。さらに、AIがMIDIの中身を読んで「これはCメジャーのコード進行」などと自動で名前をつけてくれる。

曲の構成をパズルみたいに入れ替え: 専用のポップアップ画面で「イントロ、Aメロ、サビ」の順番を入れ替えるだけで、Liveのタイムライン上のクリップも自動で連動して大移動する。

画面の中でゲームが動く: Liveの画面の中に『Flappy Bird』のようなミニゲームを表示させて、ゲームで鳥がジャンプするたびに、LiveにドラムやベースのMIDIノートが自動で打ち込まれる、なんていうぶっ飛んだ実験も行われています。実際に試してみたのですが、これには正直かなり驚きました。

2. 「プログラミング未経験」の人に関係あるの?

「でも、自分でプログラムを書けないし……」と思いますよね。ここが一番のポイントです。

① AI(ChatGPTやCursor)に丸投げできる

今回のシステムは、Webの世界で一番使われている「JavaScript」という言葉で動いています。そのため、AIの得意分野ど真ん中です。「右クリックしたら、選択したMIDIノートの音量をランダムにばらつかせるツールを作って」とChatGPTやCursor(AIエディタ)に日本語で頼めば、一瞬でコードを作ってくれます。プログラミングの知識ゼロでも、自分だけの神ツールが作れる時代になったんです。

② 誰かが作った便利なツールを貰うだけでOK

自分で作らなくても、世界中の天才プロデューサーやギークたちが「僕の作った最強の自動化ツール」をネット上でたくさん公開し始めています。私たちは、それをダウンロードしてLiveに入れるだけで、制作環境が劇的にパワーアップします。

公式で公開されているExpansionsの数々 画像をドロップするだけでMIDIへ変換するPhoto MIDI、MIDIをLive内でそのまま楽譜表示できるNotation、ピッチを保ったまま、極端なタイムストレッチを実現するPaulstretch for Live、フォーリングサンドゲームのように変化し続ける生態系シミュレーションVivariumなど

3.  誰かが作ったExtensionsをインストールして使う方法

自分でコードを書かなくても、公式のサンプルや世界中のクリエイターがネットで配布している便利なExtensionsをダウンロードして、自分のLiveに組み込む手順です。

始める前の必須チェック

  • Ableton Live 12 Suite(v12.4.5 Beta以降)が入っていること※Standard・Intro・Liteでは使えません https://ableton.centercode.com/welcome/
  • Node.js v24.16.0(LTS) がPCにインストールされていること(nodejs.orgから無料ダウンロード)
  • Ableton Extensions SDK がインストールされていること(Centercodeからベータ参加者向けに無料配布)
  • これらが準備できたら、以下の4ステップで導入できます!

ステップ1:使いたいExtensionをダウンロードする

まずは、ネット上(Ableton公式の共有ページ、GitHub、Discordコミュニティなど)から、使いたいExtensionのフォルダ(またはZIPファイル)をパソコンにダウンロードします。

※ZIPファイルの場合は、あらかじめ右クリックして「すべて展開(解凍)」すること。

ステップ2:Liveの環境設定を開く

Live 12 Suite(ベータ版)を起動します。上部メニューの [設定 (Settings)]を開きます。

ステップ3:Extensionsタブからインストールする

設定画面の左側に、新しく [Extensions] というタブが追加されているので、そこをクリックします。画面上部に「Drag and drop to install.」と表示されているエリアに、ステップ1で用意したExtensionのフォルダをそのままドラッグ&ドロップするか、[Choose file] ボタンからフォルダを選択します。これだけでLiveへの組み込みは完了です!

ステップ4:右クリックでいつでも呼び出す

あとはLiveの画面(MIDIクリップ、トラック、タイムラインなど、そのツールが対応している場所)を右クリックするだけ!コンテキストメニューに、インストールしたツールの名前(例:RNMR など)が表示されます。クリックすれば専用のポップアップ画面が立ち上がり、すぐにその便利機能を使えます。

4. ベータ版を使う上での注意点(実体験より)

現時点ではパブリックベータ版なので、いくつかバグがあることも正直に書いておきます。

実際に試していたところ、再起動後に突然右クリックメニューからExtensionsが消えてしまうという現象が起きました。画面下部に「The Ableton Extension Host has stopped running.」というエラーメッセージが表示されており、「Restart」ボタンを押しても何も起きない状態に。

Ableton公式Discordコミュニティで調べたところ、インストールしていたExtensionの一つ(Notation)にバグがあり、それがExtension Host全体をクラッシュさせていたことが原因でした。問題のあるExtensionをアンインストールしたところ、他のExtensionsは正常に動作するようになりました。

もし同じ現象が起きたら、以下を試してみてください:

  1. Settings → Extensions タブでインストール済みのExtensionを一つずつ確認する
  2. 問題の原因となっているExtensionをアンインストールする
  3. Liveを再起動する

ベータ版ということもあり、Ableton公式Discordの #extensions チャンネルには同じ問題を抱えたユーザーが集まっていて、情報交換が活発に行われています。困ったときはぜひ覗いてみてください。

結び:Abletonが提示した「DAWの未来」

今回の「Extensions SDK」の発表を見て強く感じるのは、Ableton Liveが単なる『音楽制作ソフト』から、いくらでもリフォーム可能な『オープンな音楽プラットフォーム』へと完全にシフトしたということです。

これまでは「DAWのアップデートを待ち、メーカーが用意したワークフローに従う」のが当たり前でした。しかしこれからは、「足りない機能は、右クリックメニューに自分で(あるいはAIと一緒に)足していく」という次元に突入します。

海外の老舗テックメディア『CDM』のレポートによると、今回のExtensionsはWeb標準技術のほか、WebAssembly(ブラウザ上で重いプログラムを爆速で動かす技術)にも対応しているとのこと。

実際、記事内では伝説的な音響アルゴリズム『PaulStretch』の移植や、複雑なブレイクビーツのチョップライブラリの活用例がすでに挙げられています。

これが意味するのは、今後は**「1960年代のビンテージなヨレ方を再現するアルゴリズム」や「数学的なカオス理論に基づいたメロディ生成器」**のような、これまでスタンドアロンの特殊なソフトでしか動かなかったような変態ツールたちが、Liveの右クリックメニューの中に直接、大量になだれ込んでくるということです。

Web標準のJavaScriptとNode.js、そして現代のAIコーディング(Cursorなど)が融合したとき、世界中のクリエイターからどんな奇妙で、便利で、ルール無用なツールが飛び出してくるのか。

この新しい次元に舵を切ったAbleton Live 12が、これからの音楽制作をどう変えていくのか、今から正式リリースが楽しみでなりません。

Ableton

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https://1ikkai.com/2026/06/%e3%83%97%e3%83%ad%e3%82%b0%e3%83%a9%e3%83%9f%e3%83%b3%e3%82%b0%e4%b8%8d%e8%a6%81%ef%bc%81ai%e3%81%a8%e4%b8%80%e7%b7%92%e3%81%abableton-live%e3%82%92%e6%9c%80%e5%bc%b7%e3%81%ab%e3%82%ab%e3%82%b9/feed/ 0 23688
ドイツ政府、クラブを「文化施設」に認定へ。─ ベルリンのクラブと、時代のこと。 https://1ikkai.com/2026/06/%e3%83%89%e3%82%a4%e3%83%84%e6%94%bf%e5%ba%9c%e3%80%81%e3%82%af%e3%83%a9%e3%83%96%e3%82%92%e3%80%8c%e6%96%87%e5%8c%96%e6%96%bd%e8%a8%ad%e3%80%8d%e3%81%ab%e8%aa%8d%e5%ae%9a%e3%81%b8%e3%80%82%e2%94%80/ https://1ikkai.com/2026/06/%e3%83%89%e3%82%a4%e3%83%84%e6%94%bf%e5%ba%9c%e3%80%81%e3%82%af%e3%83%a9%e3%83%96%e3%82%92%e3%80%8c%e6%96%87%e5%8c%96%e6%96%bd%e8%a8%ad%e3%80%8d%e3%81%ab%e8%aa%8d%e5%ae%9a%e3%81%b8%e3%80%82%e2%94%80/#respond Tue, 02 Jun 2026 12:58:45 +0000 https://1ikkai.com/?p=23680

ベルリンといえば、テクノ。

週末ごとにどこかのフロアで夜が明ける街。4つ打ちのキック、909のハイハット、
そのイメージは、間違っていない。

でも、少しずつ変わってきている。

2024年の大晦日、有名クラブWatergateが閉まった。
シュプレー川沿いの、ガラス張りのあのフロア。22年つづいた場所だ。
Wilde Renateは2025年末に閉店を発表し、SchwuZは2024年に経営破綻。
ベルリンに住んでいると、こういう知らせが、もう驚きとして響かなくなってきた。

ドイツ語で「クラブの死」を意味する Clubsterben という言葉が、ここ数年で聞こえるようになってきた。

いったい何が起きているのか。少し整理してみたい。

かつて週末ごとに行列が絶えなかったWatergate。このガラス張りのビルが懐かしい。今はシャッターが下りたまま、シュプレー川だけが変わらず流れている。
閉店が相次ぐ、構造的な要因

個々のクラブの問題ではない。業界全体を締め付けている、複合的な圧力がある。

  • 家賃・不動産の高騰Berlin Club Commissionの調査では、43%のクラブが家賃高騰による経営圧迫を受けている。Watergateでは、大家が2010年代後半に賃料を倍増させた。長期契約を結べないまま、退去を余儀なくされる。
  • エネルギー費の上昇深夜まで照明・音響・空調を稼働させるクラブにとって、コロナ後のエネルギー価格高騰は直撃だった。チケット代に転嫁すれば客足が遠のく。板挟みが続く。
  • 騒音をめぐる住民トラブルジェントリフィケーションが進み、クラブの周辺に新しい住宅が建つ。新住民から騒音苦情が入り、防音工事の費用や営業時間の短縮が発生する。クラブが先にあったのに、という矛盾が積み重なる。
  • ポストコロナの行動変容パンデミックで2年近く閉まっていた間に、通っていた人たちの生活習慣が変わった。深夜に出かける文化が、戻りきっていない。
Clubcommissionの推計では、ベルリンの約250クラブのうち半数以上が閉店を検討している。この割合は、2023年から2024年のわずか9ヶ月で倍になった。
法改正は、本当に救いになるのか

今年5月、ドイツのメルツ内閣が建築規制の改正案を承認した。
連邦議会・参議院の審議はこれからだが、超党派の支持があり成立の公算は高い。
ナイトクラブを「文化的・芸術的価値を提供する施設」として正式に認定し、
カジノや性風俗施設と同列に置く現行法を変えようというものだ。

ただ、この改正には長い前史がある。
2021年にすでに連邦議会が「クラブを文化施設として認定する」という決議を採択していた。
歓迎された。でも建築利用規制への法的な落とし込みはその後も遅れ続け、
改正案は何度も見直され、議論され、先送りにされた。
5年以上かかって、ようやく今回、内閣承認に至った。

なぜこんなに時間がかかったのか。
groove.deの報道によれば、建築計画法・文化政策・騒音規制がそれぞれ異なる省庁の管轄で、時に相反する論理で動いていたことが大きい。
連邦・州・自治体の間の調整も複雑で、改革は構造的に遅れやすい仕組みになっていた。

ただ、groove.deはこうも指摘している——
「既存のクラブにとって、この改正によってすぐに直接的な変化が生じるわけではない」と。
認定を受けても、大家が賃料を下げる義務はない。
家賃規制や直接的な資金援助がセットで必要なはずだが、今回の改正は、そこまで届いていない。

Tresor 1991年創業、壁崩壊後のベルリンを象徴するクラブ。今なお健在だ。
私が思うこと ── 建物ではなく、コミュニティ

DTMに関わって20年以上になる。
ベルリンで音楽と、それをとりまく人たちを、ずっと近くで見てきた。

あのころクラブで夜な夜な遊んでいた仲間たちが、今はレーベルを立ち上げたり、Ableton Liveで働いたり、シーンをつくる側になっている。そういう年頃だ。
フロアで踊っていた人間が、気づけばステージの裏側にいる。

コロナがその流れを、一度断ち切った。
2年間の空白で、世代が変わった。
あの空気を知っている人間と、知らない人間の間に、静かな断層が生まれた。

Berghain も Tresor も、まだある。
でも、この街の音楽の土壌を支えていたのは、有名な箱だけじゃなかった。
名もないフロアで、誰かがDJをして、誰かがそれを聴いていた。
その積み重ねが、ベルリンだった。

法律が変わっても、その断層は埋まらない。
フロアに人が戻ってくるかどうかは、最終的には、
音楽と、そこに集まる人たちが決めることだと思う。

とはいえ、私のような日本で育った身としては、クラブを文化施設として法律に刻もうとする動きがあること自体すごいと感じる。

 

via:The Guardian (2026.05.31) / Columbia Economic Review (2026.02) / The Berliner (2024.12) / DJ Mag (2026.01) / UNESCO Intangible Cultural Heritage 2024 /

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https://1ikkai.com/2026/06/%e3%83%89%e3%82%a4%e3%83%84%e6%94%bf%e5%ba%9c%e3%80%81%e3%82%af%e3%83%a9%e3%83%96%e3%82%92%e3%80%8c%e6%96%87%e5%8c%96%e6%96%bd%e8%a8%ad%e3%80%8d%e3%81%ab%e8%aa%8d%e5%ae%9a%e3%81%b8%e3%80%82%e2%94%80/feed/ 0 23680
Superbooth 2026レポート——今年を一言で表すなら、DAWレス https://1ikkai.com/2026/05/superbooth-2026%e3%83%ac%e3%83%9d%e3%83%bc%e3%83%88-%e4%bb%8a%e5%b9%b4%e3%82%92%e4%b8%80%e8%a8%80%e3%81%a7%e8%a1%a8%e3%81%99%e3%81%aa%e3%82%89%e3%80%81daw%e3%83%ac%e3%82%b9/ https://1ikkai.com/2026/05/superbooth-2026%e3%83%ac%e3%83%9d%e3%83%bc%e3%83%88-%e4%bb%8a%e5%b9%b4%e3%82%92%e4%b8%80%e8%a8%80%e3%81%a7%e8%a1%a8%e3%81%99%e3%81%aa%e3%82%89%e3%80%81daw%e3%83%ac%e3%82%b9/#respond Thu, 28 May 2026 12:35:54 +0000 https://1ikkai.com/?p=23649 ベルリンで毎年開催されるシンセサイザーとエレクトロニック楽器の祭典、Superbooth。今年2026年は独立したフェスティバルとして10周年を迎え、5月7日から9日の3日間、ベルリンのFEZで開催された。毎年足を運んでいる身として、今年を一言で表すなら——DAWレス。

ただ、会場を歩きながら感じていたのは、その言葉だけでは少し足りないという感覚でもあった。昔はもう少し「どう作るか」を競っていた場所だった気がする。でも今年は、そもそもその前提が少し変わってきているように見えた。

10年前のSuperboothといえば、モジュラーシンセの祭典という印象が強かった。パッチケーブルが飛び交い、ユーロラックモジュールを手にした人々が会場を埋めていた。あの頃の熱狂は確かに本物だったが、今は少し空気が違う。どこか「上手く作るための場所」というより、「触って気持ちいいものが集まる場所」に寄ってきている感じがある。

その変化の中心にあるのは、スタンドアローンで完結する機材の増加だと思う。PCもDAWも必要ない。電源を入れれば音が出る。そのシンプルさに、多くのメーカーが本気で向き合い始めている。

ただそれは単純に「DAWを使わない」という話ではない。もう少し曖昧で、もう少し感覚的な変化に見えた。

成長を続けるBastlとPolyend

毎年存在感を増しているブランドがある。チェコのBastlと、ポーランドのPolyendだ。Superboothとともに成長してきたと言っていい。今年も両ブースは大盛況で、その充実ぶりはベテランブランドに引けを取らない。

そのBastlが今年の台風の目だった。3年の開発期間を経て発表されたKalimbaは、伝統楽器カリンバをそのままシンセにしたような異色の一台だ。12本のタッチセンシティブな金属製ティーンを弾くと、内蔵マイクとタッチセンサーがその振動を拾い、FMシンセシスと物理モデリングのエンジンを駆動する。本体を傾けると加速度センサーがフィルターに反応するという、まさに「楽器として弾く」ことを前提に設計された機材だ。重さ310g、バッテリー内蔵でどこでも使える。価格はKickstarterで€389から。

Bastlブースにて、Kalimbaを取り囲む人々-こういう機材に触れていると、少しだけ考え方が変わる。上手く作るというより、触った瞬間に何かが始まるかどうかのほうが重要になってくる。

Polyendは今年、ハイブリッドドラムマシン「Drums」を発表した。アルミボディに8トラック、アナログとデジタルの両エンジンを搭載し、価格は$2,699。かっこいい。ただし高い。Roland TR-1000と競合する価格帯で、どちらを選ぶかは悩ましいところだ。

PolyendのDrum、黒とシルバーで展開

一方、同じドラムマシンでも499€という価格で「ほぼ全部入り」を実現したのがベルリン発のdadamachines、TBD-16だ。Korg Berlin出身の開発者が作ったこのグルーヴボックスは、16トラックそれぞれに独立したサウンドエンジンを持ち、Mutable InstrumentsベースのエンジンからFMキック、303スタイルのアシッドまで詰め込んである。価格とスペックのバランスが際立っていた。

こうした機材を見ていると、自由度が増えているはずなのに、逆に「どう使うか」を自分で選び続ける必要がある感じもしてくる。完全に任せきりにはならない。

Buchla、北欧の新顔

今年個人的に印象深かったのが、Buchla Ziggyだ。Buchlaといえば長年「高価で難解、一部のマニアのもの」というイメージがあった。西海岸式シンセサイズの独自の思想は魅力的でも、なかなか手が届かない存在だった。それがZiggyで、明らかに身近になった。DAWレスの流れと、このBuchlaの変化は無関係ではないと思う。

あのBuchlaがとてもフレンドリーになった!

北欧からは新顔が登場した。スウェーデンのマルメを拠点とする新会社、Apæron。初製品のAFOURは44ノブ・27鍵のデジタルポリシンセで、開発者3人はシンセ業界ではなくスマートフォン開発の出身だという。その背景がそのままデザインに出ていて、UIの洗練度が従来のシンセメーカーとは一線を画していた。デザイン良し。音も面白い。新しい血がシンセ業界に入ってきている予感がした。

フルデジタルだが、操作感は完全に「つまみ命」のアナログシンセそのものAfour

そしてWhimsical Raps、Atriumだ。ブラッシュドメタルのパネルにアーチ型のLEDが光る、鍵盤のないアナログ5ボイスのポリシンセ。Atriumとはラテン語で「中庭」を意味する。その名の通り、開放的で不思議な空間を持った楽器だ。タッチプレートとスライダーで操作する感触は、これまでのシンセとも、コントローラーとも違う。実験系、という言葉が一番近い。$1,600という価格は、実験にしては本気の値段だ。

まるで魔法の箱 このルックスでアナログ5ボイス

KORGの謎シンセと、Phase8という新機軸

KORGは今年も入場してすぐのブースを構えていた。毎年そうだ。Superboothに来た人間が最初に目にするブランドがKORGになる。その場所の使い方がうまい。

今年の目玉は、ビニールに覆われた謎のシンセだった。5オクターブのキーボード、大量のノブとLED、右側にスクリーン——ビニール越しにそれだけ読み取れた。ブースの壁には日本語で大きく「革新的でぶっ飛んだ製品で、みなさんにこれ超ヤバい!!と言わせたい」とあった。ベルリンのSuperboothでこの日本語コピーを見るのは、なかなかシュールな体験だった。

Prologue mk2では、という声も会場では聞こえてきたが、真相は不明のままだ。

Korg BerlinはPhase8を展示し、ライブも行われていた。磁気共鳴を使って物理的に弦や金属を振動させ、音を生み出すという新機軸のアプローチだ。数年前からSuperboothでベータ機の展示を重ねてきたが、今年はついに発売後。長い研究の成果がようやく形になったという感慨があった。

こういう“物理に戻る感じ”の機材を見ていると、デジタルかアナログかという単純な軸ではもう説明できない領域に来ている気もする。

次の10年へ

DAWから離れていく流れは、今年のSuperboothで確かに強くなっていた。スタンドアローン、ハンズオン、電源を入れればすぐ音が出る。

ただ、それを見ながらずっと思っていたのは、「DAWレス」という言葉自体も、少し後から付けた説明に近いのかもしれないということだった。

むしろ現場で起きていたのは、もっと曖昧で、もう少し感覚的な変化だった。どこまで自分で決めて、どこから先を機材に任せるのか。その境目が少しずつ揺れているような感じ。

昔も今も、ここに集まる人たちの根っこは変わらない。音楽と素直に向き合いたい、ただそれだけだ。

ただ、その向き合い方の手触りは確実に変わってきている。そして次の10年がどうなるのかは、やっぱりまだよくわからない。

 

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