敷地は化学工場や製鉄所など製造業の盛んな港湾地域であり、満潮時には海面より低くなる低地で、防潮堤が整備されています。

周囲は工場や倉庫が並び、大きな空間を効率よく確保するため、シンプルな構成と合理的な構造計画でつくられた建物群は、この地域ならではの力強い風景をつくっています。
その一方で、敷地の先には海と空が広がっています。
新しい事務所では、この場所の風景を取り込みながら、海と空を感じて過ごせる、人のための居場所をつくることを考えました。

1階は主に駐車場とし、2階に約9m×23mの大きなワンルームの執務スペースを設けています。
この大きな空間を、木造の柱や梁を一定の間隔で繰り返す架構によって構成しました。

エントランスホールの様子。

大きな空間をそのまま見せるのではなく、木の架構によって細かいリズムをつくることで、人の身体に近いスケールを生み出しています。
柱や梁などの構造は、単に建物を支えるだけではありません。家具や座席の配置とも重なり、働く人それぞれの居場所をつくる要素になっています。
埋立地に新築するにあたっては、杭工事の上に鉄骨造で建築することが一般的に考えられます。
しかし、コストを抑えるために、杭を必要としない軽量な木造を採用しました。1階を大きく開放しながら必要な強度を確保し、木の架構そのものが空間の特徴となるよう計画しています。

屋根は海側へ向かって上がる片流れ屋根とし、それを支える木の梁を910mm間隔で繰り返しています。
梁の連続によって空間に海へ向かう方向性が生まれ、窓の向こうへ自然と視線が抜けていきます。
水平に連続する窓からは、海や空を大きく感じることができます。
9mを超える屋根には一部鉄骨梁を組み合わせ、木材の寸法を抑えながら大きな空間を実現しました。

時間や天候によって変化する海の表情を、仕事をしながら自然に感じられることも、この場所ならではの魅力です。

この建物では、周囲の工場や倉庫と同じように、シンプルな構成と繰り返しという考え方を取り入れています。
ただし、それを鉄骨による大きなスケールのままではなく、木造によって人に近いスケールへと置き換えました。

事務室へとつづくフリースペース。
また、1階を開放的な駐車スペースとすることで、建物全体にも港湾地域らしい開放感を持たせています。
周囲の建物と同じように合理的につくられながらも、木の架構によって働く人たちが自然体でいられる場を目指しました。
そして、その先に広がる海と空へ視線をつなげる。
港の風景になじみながら、この場所の環境を繊細に受け取る建築。
それが、この事務所で考えた「海とつながる架構」です。

夕景。事務室の天井が外部からも見え、建物のつくりがよく見える。
投稿 [NEW]海とつながる架構|港湾地域の木造オフィス は akka /一級建築士事務所 |大阪・建築家 に最初に表示されました。]]>この地域で長く親しまれる医院となるよう、時間とともに風合いを増す素材を選び建物全体を造りました。


外壁は耐久性が高く、時間が経つにつれてよい雰囲気が増す赤レンガを採用しました。
外壁に沿って、植栽のあるアプローチを進みます。
そこには小さな植栽スペースがあり、季節の花や草がそよいでいます。

木製の扉を開くと、木や布などの柔らかな素材でまとめた受付空間が訪れる人を迎えます。
外観の重厚さから温かみのある内部へと自然につながるよう計画しました。
待合は勾配のある高天井の空間です。
また木製の受付カウンターと、いろんなデザインの待合用の椅子があります。
大きなガラス面には、レースのドレープカーテンを固定で設け、内外の境界を緩やかにつないでいます。


室内には赤レンガも取り入れながら、足元にはクッション性のあるカーペットを採用しました。
見た目には素材の豊かな表情を感じられ、また、体に触れる部分は柔らかい素材とすることで、治療前の緊張感を自然とリラックスした気持ちになるような空間を目指しています。



固定したドレープカーテンは、昔の診療所のパーティションをイメージしました。
そこから上下に視線が抜けることで、空間をゆるやかにつないでいます
高天井の一部からは、室内窓越しに診察室の天井が見えます

診察室は、白を基調に明るい木を組み合わせた空間です。
3つの診療ブースと、1つの個室で構成しています。
診療ブースは、雁行した外壁に沿って配置しています。
ブースごとに向きを少しずつ変えることで、通行する人との視線が重なりにくい計画としました。



通路の上部にはトップライトを設け、北向きの自然光を取り込んでいます。
外観の重厚さとは対照的に、軽やかで明るい内部空間となっています。
診療に影響のない範囲で、患者さんやスタッフたちが気持ちよく、そして特別感を少し感じられる場にしたいと考えました。
床材には、天然素材で抗菌性や耐久性に優れたリノリウムを採用しました。
木柄のパーティションは、清掃性を重視してメラミン化粧板としています。

一部を2階建てとし、バックヤードとスタッフスペースを配置しました。
清掃性や使い勝手を大切にしながら、ゆっくり休憩できる場所も確保しています。

夜のエントランスの様子。
住宅街に近いため、周りに影響を与える大きな看板や照明は設けていません。

建物そのものが医院の目印となり、地域の風景に自然と溶け込むことで、長く愛される場となることを目指しました。


生活動線と視線のつながりを重視しながらリビングと連続する個室や、囲われたテラスが多様な遊びの場を生み出します。
キッチンからは各空間を見通すことができ、家族の気配を感じながら日常を過ごすことができます。
欄間付きの可動間仕切りを備えた続き間は、用途に応じて開閉できる柔軟な空間となっています。

吹き抜けを介して1階と2階の空間がゆるやかにつながり、光と風が家全体に広がります。
高さ制限に合わせて架けた昇り梁が屋根を支え、伸びやかなプロポーションを形づくっています。

階段を上がると本棚を備えた小さなセカンドリビングスペースがあります。
吹き抜けを渡るように、半階高い小さな個室へも動線がつながっていきます。
視線は外の人工芝エリアへもつながり、内と外でそれぞれ過ごしていても家族の存在を感じることができる暮らしをめざしました。


「アーキテクツオブザイヤー2025」に片岡構造と共同設計した「海とつなげる架構」を出展します
開催期間 / 2025年10月25日(土)〜11月9日(日)
時間 / 12時〜18時(最終日のみ16時)
会場 / 日本橋の家
観覧料 / 500円
生きた建築フェスティバルの開催期間10月25日(土)、26日(日)は観覧無料

「海とつなげる架構」
1970年に設立された廃食用油をリサイクルを中心とする企業の事務所建て替え計画
敷地は中島川から大阪湾への河口にある埋立地で、化学工場や製鉄所など製造業の盛んな港地域にあり防潮堤が整備された海抜ゼロメートル地帯である
幹線から伸びる交差道路によって作られた街区に、それぞれの合理性で作られた鉄骨造による建築群が作り出されている
それは「構成の単純化とモジュールの反復の建築」であり、用途がかたちを決定する大雑把で即物的な風景となっている
竣工写真の完成は先になるので、まずは動画にてご覧ください。
この地域で長く親しまれる医院となるよう、レンガや木材など、時間の経過とともに深みが感じられる素材で空間を造りました。
いちか歯科医院ホームページ 2024年11月5日開院
投稿 [動画]いちか歯科医院 素材感を大切にした新築医院 は akka /一級建築士事務所 |大阪・建築家 に最初に表示されました。]]>敷地正面、北側には桜の並木道があります。
2階のリビングから外の景色を最大限に楽しめるよう、建物の幅いっぱいの開口部を設けました。
南側は高い位置から室内に太陽光を取り込むよう、床レベルと屋根形状に変化をつけています。


深い庇を持つ、駐車場兼用のアプローチです。
壁はレンガタイルとモルタル質スレート、軒天には木毛セメント板を使用しています。
それぞれざらっとした素材感を持ち、アプローチから玄関へ点在する植栽が彩りを加えてくれます。


建物中央部にアプローチからつながる中庭があります。
中庭と玄関はガラスで仕切り、内外に広がりを感じられるようにしました。
床、壁ともに外装材が内部まで入り込んでいます。


中庭に面する壁は杉羽目板を貼っています。

玄関から個室へ行く廊下。
扉と壁は同じ素材を使い、また前後に段差を作らずにフラットな印象の通路をつくりました。
リビングには建物幅いっぱい、上段は引き違い、下段ははめ殺しの窓をとっています。
窓面から控えた位置に構造壁を配置することで、居場所に落ち着きを持たせています。

リビングより少し段数を上がったとろにダイニングがあり、床レベルに沿って天井高さも上がっていっています。
中庭に面した通風窓の前には、階段の延長にベンチを造作しています。
窓を挟んで外壁材が室内に入り込み、中庭との連続を感じさせています。


建物の中央に位置するダイニング。
モミジを植えた中庭、スリット状のトップライトから光が入ります。
壁は薄いグレーベージュの塗装、天井はシナベニヤ、針葉樹の合板。
中庭を囲むようにキッチンを配置し、LDKがゆるやかにつながっています。


オーク突板とステンレスで造作したコの字型キッチン。
料理をしているとき、外へ視線が抜けるよう窓をとっています。

日光の差し込む洗面スペース。
キッチンとサービスバルコニーの間にあり、浴室・ランドリー、パントリーなどもつながります。

明かりが溢れ出る夜景。
