
光害地の自宅から撮影した、ケフェウス座の散光星雲IC1396の中心部。
IC1396の位置は下図の通り。

ケフェウス座の南端に位置する大きな散光星雲で、視直径は3°ほどもあるため、今回の撮影機座の写野からははみ出し、上の画像に写っているのは中心付近の一部になる。全体像については、以前BORG71FLで撮影した下の記事が参考になる(これも周辺部がはみ出している)。

かなり淡い星雲なので、光害地で写すにはナローバンドフィルターと長時間露光、そして画像処理でのあぶり出しが必要になる。今回もQuad BPフィルターを用いて3時間半ほど露光している。
IC1396で最も特徴的なのが「象の鼻」とよばれる暗黒星雲vdB142である。

ウネウネと曲がった暗黒星雲が、背後から赤い散光星雲に照らされて不気味に浮かび上がっている。面白い撮影対象で、秋になるととりあえず撮りたくなる。
また、写野上部には大きな逆三角形の暗黒星雲もあって目立っている。

このように、IC1396は散光星雲と暗黒星雲が複雑に混じりあっていて、部分的に拡大して撮影してもおもしろい。
]]>
TASC-onリコリモによる、エリダヌス座の分子雲LBN917。
宇宙空間に漂う雲がまるでオバケの様で、ちょっと不気味な感じがする。
分子雲はよくみると白ではなく若干の色がついているようで、もうすこし彩度を上げて色を強調しても良かったかなと思う。
今回の撮影はリコリモ主力のRA501(50cm)ではなく、RA101(高橋13cm屈折)を使用しており、写野が広い。TASC-onリコリモでは基本的にRA501を用いるが、悪天候でキャンセルになった時間分をRA101での撮影に振り替えることができるようで、今回はその成果になる。
場所は下の星図の通り。

この領域は分子雲が多く、有名な「魔女の横顔星雲」も今回撮影したところとリゲルの間あたりにある。
もちろん日本からも余裕で撮影できるところだが、分子雲は淡い対象なので、光害が圧倒的に少ないオーストラリアから撮影するのは意義があると思う。
下は、全体画像の下部を切り取り拡大したもの。

小さな系外銀河の集団の手前に分子雲がカブって面白い眺めになっている。
次は全体画像左側の拡大。

モクモクとした雲の上に、小さな系外銀河がある。
この辺りは冬の天の川から少し外れたところにあり、意外と系外銀河が多い所のようだ。
]]>
光害地の自宅から撮影した、はくちょう座の散光星雲NGC6888「三日月星雲」。この名前はその形から付けられたと思われるが、画像からは三日月というよりはマッシュルームかクラゲのように見える。
位置は下の星図に示す通り。

はくちょう座のど真ん中、天の川の中に位置している。そのため、三日月星雲の周囲には淡い散光星雲が広く分布しており、それは画像からも分かる。
三日月星雲のみを切り出した画像が↓。

三日月星雲の中心にある星はウォルフ・ライエ星のWR136で、この星からの非常に強い恒星風が周囲のガスに作用した結果、このような構造になった。ウォルフ・ライエ星とは、非常に質量の大きな星で、進化の途中で猛烈な恒星風によって自分自身の外層を大量に吹き飛ばしてしまい、星の内部にあった物質が表面近くまで露出した結果、非常に高温で強烈な恒星風を吹き出し、普通の星とはまったく違うスペクトルを示す星となったもの。
WR星は大きく、
WN型 → 窒素の輝線が強い
WC型 → 炭素の輝線が強い
WO型 → 酸素の輝線が強い
などに分類されるが、WR 136はWN型なので、特に窒素とヘリウムの輝線が目立つ。
WR 136を取り巻くNGC 6888では窒素が豊富で酸素が少ないなど、恒星内部で処理された物質の特徴が観測されている。つまりNGC6888はWR 136が自分自身の物質を宇宙空間に放出した、その痕跡である。
今回の撮影はSQM値18.3の光害地で行ったが、Quad BPフィルターの効果で三日月星雲の内部の詳細まで写すことができた。2021年に同じ場所・同じR200SSで撮影したときには、Comet BPとエクステンダーを用いたので、三日月の内部があまり写らなかった(下の記事参照)。

輝星星雲を写すときには、Comet BPよりもQuad BPの方が有利で、明るい光学系で露光量を多く稼ぐのが良さそうだ。
]]>
TASC-onリコリモによる、とも座の彗星状グロビュールCG30。CGというのはCometary Globulesの略で、彗星状グロビュールをまとめたカタログ。
位置は下図の通り。カノープスより北にあるので日本からも見えるはずだが、高度が低いので、撮影は難しそう。

↓は中心部を拡大したもの。

頭の部分は暗黒星雲で、それを赤い散光星雲が縁取っており、立体感を出している。また尾に相当する部分は淡いガスが広がっているが、今回の画像処理ではその淡いガスをうまく出すことができなかった。
]]>
光害地の自宅から撮影した、ぎょしゃ座の散光星雲IC410「おたまじゃくし星雲」。位置は下図の通り。

有名なIC405勾玉星雲のすぐ横にあり、広写野では二つ合わせて撮影されることが多い。例えば下の記事は私が2018年に加東市でミニボーグ60EDにて撮影したものになる。

おたまじゃくしの名前は、内部におたまじゃくしのような細長い構造があるため。下の画像は中心部を拡大したものだが、左上にそのオタマジャクシ状の構造が2つ見える。

中心部には散開星団NGC1893が重なっている。この星団の星の光が周囲のガスを照らしている。また散光星雲の手前には暗黒星雲が雲のように横たわっており、立体感を出している。
暗黒星雲の構造が細部まで分かるほどよく写っていると思うが、光害地の自宅でここまで写るというのは改めて驚いている。現在使っているCMOSカメラはもう9年前に発売されたもので決して最新型ではないが、まだまだ現役で使っていけそうだ。
]]>
TASC-onリコリモによる、りゅうこつ座の輝線星雲Gum37。SHOによる撮影・処理。Gumカタログは南天の輝線星雲のカタログであり、オーストラリアのストロムロ山天文台のカメラで天文学者のコリン・スタンリー・ガムが作成し、1955年に出版した。その中のGum37はりゅうこつ座のηカリーナ星雲の少し東にある、南天の天の川の中にある輝線星雲である。位置は下図のとおり。

↓はこの星雲の下側(南側)を拡大した画像。

この領域にはグロビュールが点在しているが、その中にオタマジャクシ状のものが確認できる。それがぎょしゃ座のIC410「オタマジャクシ星雲」と似ていることから、「南のオタマジャクシ星雲」と呼ばれているようだ。
また輝線星雲をバックにして暗黒星雲の柱が伸びている様子がわかる。雲のような立体感があり、M16星雲の「創造の柱」に似た雰囲気がある。
今回のGum37などは日本で暮らしているとまったくなじみのない星雲なので、例えばリコリモを自分で使う場合には、まず撮影対象の候補に入ってこない。しかしTASCでは見どころのある対象をリストアップして撮影してくれるので、自分ではたどり着けない魅力的な画像を苦労せずに得ることができるのが利点。
]]>
光害地の自宅から撮影した、ケフェウス座の散光星雲Sh2-142。位置は下図の通り。

秋の天の川の中にあり、この辺りは散光星雲が数多くあるところ。そのうちの一つがこの星雲になる。
この星雲は「魔法使い星雲(Wizard Nebula)」。または「ほうおう星雲」とも呼ばれている。いずれもその形に由来した名前だが、ぱっとみて、どこが魔法使いで鳳凰なのかいまひとつ分からない。
中央部を拡大してみたのが下の画像。

よく見ると、とんがり帽子をかぶった鼻の高い魔法使いが横を向いている姿が浮かび上がってくる。顔の部分では恒星が眼になっている。また両手を前に出して広げている様子にも見える。
では「ほうおう」はどこにいるのか。
元の画像を時計回りに90°回転し、東を上にしてみた。

すると、魔法使いの帽子だったところが鳥の頭になり、斜め右を向いて大きな翼を下向きに垂らした姿が見えてくる。
ただこれも、言われてみなければ分からない。このように散光星雲に愛称をつける人は、かなり想像力が豊かなのだと思う。
]]>
TASC-onリコリモ(1期)による、かじき座の系外銀河NGC1566。2本の大きな腕が特徴的で、スペインのフラメンコダンサーを連想させることから「スパニッシュダンサー」と呼ばれている。位置は下図の通り。

カノープスよりもさらに南にあるため、日本から見るのは無理だと思う。
実はこの天体については、2025年春ごろに、同じリコー天体撮影サービスを個人で使って撮影していた。そのときの記事は↓。

前回の撮影はLRGBで合計81分だったが、2本の腕の先が写らなかった。一方、今回の撮影はRGB63分で、2本の腕が先までしっかりと写っている。前回のほうが長い露出なのに写りが悪いのはカメラが古いものだったためか、LRGBの露出バランスや処理が悪かったのか、よくわからない。いずれにせよ、リザルトシェアサービスでは同等以上のクオリティーの画像をより安価に入手できるのがありがたい。
今回の画像は全写野に対して銀河が小さいためにかなりトリミングしている。トリミングなしの画像は↓の通り(25%に縮小)。

四隅がやや明るいのはフラットの不適合だと思う。このRA501は前のカメラ(FLI PL-09000)では四隅のフラットが大幅に合わなかった。現在のカメラ(Player One ZEUS 455M PRO)ではかなり改善したが、それでも強い強調処理をすると、まだ残っているのがわかる。もっと精密なフラット処理を望みたいところ。
]]>
光害地の自宅で撮影した、はくちょう座の超新星残骸NGC6960・網状星雲(西)。Caldwell 34、LBN 191の番号も付けられている。またその形から「魔女のほうき星雲」とも呼ばれているようだ。中央付近にある明るい星が良いアクセントになっているが、これは、はくちょう座52番星で4.2等。位置は下図の通り。

超新星残骸とは、星が一生の終わりに大爆発を起こす「超新星爆発」を起こした結果、星を構成していた物質がガスとなって吹き飛ばされたもので、その衝撃波によって輝いている。その形態によってシェル型と実体型の2通りに分けられている。シェル型は中心から球状に広がった外殻が輝くタイプで、今回の網状星雲はこちらになる。実体型は中心に残された高密度星からのエネルギーで全体が輝くタイプで、代表例はおうし座のかに星雲。またその2種の複合型もあって、外側にはシェル構造が見えつつ中心部にはパルサーやそのエネルギーによって輝く領域が存在する。代表例は、ほ帆座超新星残骸 (Vela SNR)。
青緑の光は電離した酸素原子(OIII)であり、495.9 nm と 500.7 nm の2つの波長(輝線)をもつ。また赤色の光は水素(H)や硫黄(S)、窒素(N)だが、主には水素(Hα線)であり、656.3 nmの波長をもつ。今回撮影に用いたQuad BPフィルターは光害の中からこれらの波長を効率的に通過させるもので、光害によるカブリを抑えつつ、星雲の光を目立たせている。
下は中心部分の拡大。

青緑と赤の星雲が文字通り網の目のように絡まっている。だがよく見ると、青緑の方は比較的はっきりした繊維状になっているが、赤色の方は少しモヤモヤした広がりになっている。赤色でも繊維状になっている部分があるが、それは青緑の繊維とつながっている。青緑(OIII)の方が赤(Hα)よりもエネルギーが高い部分であると考えられるが、このあたり、どうやってこのような分布が形成されたのか興味深い。
]]>
TASC-onリコリモによる、ほ座の散光星雲(輝線星雲)Gum15。オーストラリアの天文学者であるコリン・スタンリー・ガム(1924-1960)が南天の輝線星雲のカタログであるガムカタログを作成しており、Gum15もその中の一つである。
ほ座~とも座には40度もの広がりをもつ巨大な超新星残骸であるガム星雲Gum12があるが、Gum15はその領域内に位置する、明るい散光星雲(HII領域)である。位置は下図参照。

Gum12やGum15は日本からでも地平線上にギリギリ見えるため、国内からの撮影にチャレンジしている人も多い。
画面の中央、星雲の中の暗黒星雲が横切っている上に明るい青い輝星があるが、これがHD74804という7.34等の星で、主にこの星のエネルギーで周囲の水素ガスが電離して輝いている(輝線星雲)。
下の画像は中心部の拡大。

赤く輝く水素ガスの輝星星雲と青白い星の組み合わせが美しい。また、手前を暗黒星雲が雲のように横切っており、立体感を出している。
この領域は、オリオン大星雲のように星生成の場(星のゆりかご)と考えられている。
今回の撮影は、RGB各30分ずつの計90分、L45分、Hα27分で行われたが、画像処理はRGBのみで行った。L45分はRGBに対してやや短めで、LRGB合成を行うことによる画質向上は微妙であるし、Hα27 分は短すぎる。結果としてはRGBだけでも十分きれいな画像に仕上げんることができた。そのため、中途半端に短いLやHαを撮るくらいなら、その分をRGBの上乗せに費やしたほうが良いと思う。
]]>