その理由は様々ですが、代表的なものは「質問の回答を得るまでに時間がかかり過ぎる」「就労ビザ申請の準備が遅い」「費用が不透明」「日本語で社内の状況を相談できる専門家が必要」「長年担当していた専門家が引退する」などでした。
更に詳しく話を伺うと、これまで受けていた法的アドバイスが現在の日系企業のニーズに必ずしも合っていなかったことが判明する事例もありました。カナダ国外出張の予定や、カナダに帯同されるご家族のビザ、Work Permit延長申請などについて、別の方法も検討できたのではないか、という事例もありました。
もちろん、長年お付き合いのある専門家との信頼関係は大切ですが、このようなご相談がここ数年で続いたことから、今回は日系企業が駐在員のビザを任せる専門家を選ぶ際に、確認しておきたい点について考えてみたいと思います。
駐在員の就労ビザ申請というと、必要書類を集め、申請書を作成してカナダ政府(IRCC)へ提出することが専門家の仕事だと思われるかもしれません。しかし実は、申請準備を始める前の段階である「どのカテゴリー、申請方法で申請するのか」という判断が大変重要となります。
同じ企業からカナダへ出向する場合でも、その方の職歴、役職や職務内容、カナダで担当する業務、出向目的や期間などによって、検討できる就労ビザのカテゴリーは異なります。また、カナダで行われるプロジェクト、日本本社とカナダ法人との関係、給与の支払方法など、本人の履歴書だけでは判断できない情報が必要になることもあります。
そのため、駐在員ご本人やカナダ法人の人事担当者だけではなく、必要に応じて日本本社の人事担当者や上司などからもお話をお伺いして情報を集め、会社側の事情を理解した上で申請方法を検討することが大切です。「前任者も同じ方法だったから」と過去の申請をそのまま踏襲するのではなく、今回出向される方と過去・現在・カナダでの業務内容を改めて確認する必要があります。
IRCCのビザ申請条件や申請方法は頻繁に変更されており、またビザ取得後のコンプライアンスまでもが変化しています。そのため、企業案件を扱う専門家には、常に最新情報を把握していることが求められます。
IRCCの法律や最新情報を知っていることと、それを企業のために使いこなせることは同じではありません。 大切なのは、その知識と経験を個々の企業や駐在員の状況に照らし合わせ、適切な方法を提案することと考えます。例えば、就労ビザの有効期限が近づいている駐在員の場合、カナダ国内から延長申請をする方法があります。しかし、頻繁に日本や他国へ出張する方であれば、申請中の海外渡航がその後の就労に与える影響まで考えた上で、申請時期や方法を検討する必要があります。またご家族が帯同されておられる場合、「子供の学校生活への影響も踏まえて、タイミング等のアドバイスをして欲しい」とリクエストを頂くこともあります。
つまり、日系企業や駐在員の状況に応じて、柔軟に選択肢を検討できることが双方の信頼関係を構築するためにとても重要です。
最後に、専門家選びを行う際の重要ポイントについてお話します。ベストはその専門家とミーティングを行い、その方が
などについて確認されることをお勧めします。
一番大切なことは、「双方が気持ちよく案件を一緒に進めていくことができるか」ということかもしれません。長年依頼されている専門家を変更する必要がある、ということではありませんが、企業を取り巻く状況も、カナダの法律も日々変化しています。就労ビザを申請してくれる人」という視点だけではなく、自社の状況を理解し、最新の知識と経験をもとに、最適な方法を一緒に検討することができる専門家であるか、を確認することも大切なのではないかと感じています。
]]>そこで気になったのが、「永住権(PR)を取得した人は、その後もカナダに住み続けているのだろうか」という点でした。カナダはこれまで移民を受け入れることで人口や労働力を維持してきた国ですので、実際にPRを取得した後の定着状況についてはあまり語られていないイメージがありました。今回このニュースやドキュメンタリーを見て「カナダでPRを取得した人達のその後」の状況を知りたいと思い、Statistics Canadaが公表している調査を確認してみました。
今回確認したのは、PRステータスを取得して入国した人が、その後もカナダに住み続けたのか、それとも出国したのかを長期間調査した結果でした。これらの調査は単発のアンケートや意識調査ではなく、長期間にわたりPRの定着状況を分析したものであり、移民政策を考える上でも参考となる資料の一つと言えます。
結論からお伝えすると、PR保持者の大半はカナダに定住しています。その一方で、一定数の人はその後の人生の中でカナダを離れ、他国へ移住していました。
Statistics Canadaの調査によると、移民としてカナダへ入国した人のうち、約5%が5年以内、10%超が10年以内、17.5%が20年以内、そして25年以内には20%を超える人が国外へ転出したと推計されています。言い換えると、25年以内に約5人に1人がカナダを離れていることになります。また、カナダを離れるタイミングはPR取得直後ではなく、数年が経過した頃に比較的多く見られたことも報告されています。
Statistics Canadaの調査では、興味深い傾向も紹介されています。例えば、高い学歴を持つ人ほど国外へ転出する割合が高いこと、また投資家・起業家カテゴリーで移住した人や、留学生としてカナダに滞在した後にPRを取得した人についても、比較的高い確率でカナダを離れる旨報告されています。
高度な教育や専門的な知識と経験を持つ人ほど、海外で働く機会や選択肢が広がりやすいことは一般的に考えられます。そのような事情が影響している可能性はありますが、それを今回の調査結果だけで断定することはできません。
現在報じられている人口減少は、主として一時滞在者数の減少による影響が大きいとされています。特に、留学生や外国人労働者については、近年の移民政策の見直しが大きく影響していると考えられています。従って「人口が減少している」という事実だけをもって、「PR保持者が次々とカナダを離れている」と結論付けることはできません。
近年、カナダで生活する一時滞在者を取り巻く環境は大きく変化していると言えます。住宅価格や家賃は依然として高く、住宅費の負担はトロントやバンクーバーだけでなく、オタワ、モントリオール、ハリファックスなどにも広がっています。また、カナダでの就労経験が少ない留学生や外国人労働者が希望する仕事を見つけることは容易ではありません。生活費が上昇する一方で、安定した収入を得られなければ、カナダでの生活を続けること自体が難しくなります。
近年は留学生の受入れ上限、卒業後就労許可の対象要件、配偶者に対する就労許可など、一時滞在者に関係する制度が相次いで見直されており、カナダ政府も新規受入れを減らす方針を明確にしています。これまでカナダで学び、働き、その後に永住権を目指すことを想定していた人にとっては、将来の見通しを立てにくい状況になったことも事実です。従ってカナダで生活基盤を築き、長期的に暮らし続けることは、以前より難しくなっていると言えます。
PRステータスは、カナダで永続的に居住する権利を与えるものです。しかし、その権利を取得したからといって、その後の人生を必ずカナダで過ごさなければならないわけではありません。仕事、家族、教育、生活費、将来設計などを考えた結果、他国へ移る人もいれば、一度カナダを離れた後、PRステータスを維持するために再びカナダで生活する人もいるでしょう。
今回確認した資料から見えてきたのは、PR取得は必ずしも人生の「ゴール」ではなく、その後の人生における「選択肢」の一つであるということです。多くの人がカナダに定着する一方で、自らの価値観やライフステージに合わせて他国での生活を選ぶ人もいます。PR取得後の「その後」は、一人ひとり異なっていて当然なのかもしれません。
]]>
内容が気になってしまい、実際にカナダ連邦裁判所の判決文を読むことにしました。結論からお伝えすると、移民申請却下という結果は、単純に「移民局に提出した結婚写真が原因」ではありませんでした。それよりも「見出しの内容」と「判決文から読み取れる内容」にはかなりの差がありました。
ケースの背景としては、カナダ国内から配偶者の移民申請をされた方が、移民局(IRCC)から申請を却下され、その理由としてIRCCの審査官が「申請者とスポンサーの婚姻関係が真実に基づいており、且つ移民上の利益を得ることを主たる目的としていないことについて、十分な証明がされていない」と判断し、結果的に却下したということでした。
この結果に対し申請者側は、「提出した証拠が適切にIRCCから評価されていない」「写真に関する指摘の一部は事実と異なっている」と主張しました。IRCCの審査官は「夫婦が手を繋いでいる写真やキスをしている写真がない」と理由に述べていましたが、実際申請者がIRCCに提出した移民申請のパッケージには、まさにそのような写真が含まれていた、と裁判官が判決文にて認定しています。
裁判官が今回の件で問題であると述べたことは、IRCCの審査官が拒否理由を十分に説明しなかったことや、その判断をするに至るまでのプロセスでした。
例えばIRCCの審査官は、家族や友人から提出されたサポートレターについて、「申請者に好意的な立場の人だから」という理由であまり重視しませんでした。しかし裁判所は、配偶者スポンサーシップの案件では、家族や友人こそ夫婦関係をよく知っている場合も多く、単に提出者との関係だけを理由に証拠価値を低く評価するのは適切ではないと指摘しました。
更にIRCCの審査官が指摘した、結婚式の出席者の人種や服装について、どのように結論に繋がるのか十分に説明されていないと裁判官は判断しました。
ここまで読むとIRCCの審査官が判断ミスをしたように思えてしまうかもしれません。更に判決文を読み進めてみると、申請パッケージには共同名義の賃貸契約書が含まれておらず、大家が発行したレターのみであったこと、共同口座の利用履歴が限定的であったこと、政府が発行した同じ住所のIDが含まれていなかったこと、二人の間のテキストメッセージが少なかったことなど、夫婦としての日常生活や経済的な結びつきを示す客観的な資料を十分整えて申請したとは言い難い内容だったようです。
この結果、裁判官は「この判断は合理的とは言えない」として、別のIRCCの審査官による再審査を命じました。ただこれは、「この夫婦の愛は真実である」と認定し、永住権申請を承認するよう命じたわけでもありませんでした。
この判決を読み、とても考えさせられたことが二つありました。
一つ目は、「記事の見出しだけでは全容は分からない」ということです。読者の目を引く「アジア系の出席者」や「結婚写真」の話題を大きく取り上げることの方が重要になってしまい、夫婦が同居している実態や経済的な結びつきを示す証拠が十分とは言えなかったなど、IRCCの審査官が婚姻関係の真正性に疑問を持った他の理由もあった、という事実が欠落していました。
カナダ連邦裁判所の判決文を英語で読む機会は(法律に興味がある・法律の仕事や勉強をしている方でない限り)少ないと思いますが、記事やニュースで見ただけの情報が全てではないと再確認しました。
二つ目は、「強いケースは申請準備に時間をかけている」ということです。
たとえ夫婦関係が真実の愛に基づくものであっても、それをIRCCに書面で証明できなければ、移民申請は承認されません。移民法では「申請者に証明の義務が課されている」としています。「この程度で大丈夫だろう」と考えて申請を進めた結果、後になって追加資料の提出や申請却下につながるケースは少なくありません。特に配偶者スポンサーシップでは、どのような証拠を提出するか、そしてそれらをどのように整理して説明するかが非常に重要です。
申請が却下された後に裁判で争うことは、時間的にも精神的にも、そして経済的にも大きな負担になります。だからこそ、最初の申請段階で十分な証拠を準備し、必要に応じて経験のある弁護士や政府公認移民コンサルタントにアドバイスを求めることが重要であると私は考えています。
]]>しかし残念ながら、PRが承認された後に問題が発覚し、場合によってはPRステータスに影響が及ぶケースも存在します。今月号はこのことについて解説します。
Misrepresentationという言葉を聞いたことがございますか?これは「虚偽申告」という意味です。これは「事実とは異なる内容を申告した」と判断される場合に使用される言葉とお考え下さい。
「虚偽」という言葉を聞くと、偽造書類や意図的な嘘をイメージされる方も多いと思います。しかし実際には、本人には悪意が無かったり、「そこまで政府に申告が必要だとは思わなかった」という内容もMisrepresentationに含まれるのです。例えば、
などが考えられます。
最近は、個人移民申請や就労ビザ申請においても、職務内容や雇用実態について細かく確認されるケースが増えている印象があります。例えば、以前にPGWP申請した際に申請書で述べた内容と、個人移民申請の際に提出した情報に整合性があるか等。また、職位名はManagerとなっているものの、(NOCコードに合致させるために)実際に遂行している職務内容が異なるケース等。
もちろん、全ての過ちがMisrepresentationとみなされる訳ではありません。単純な記載ミスや説明可能な誤解であれば、適切に対応出来るケースもあります。ただ、移民局(IRCC)が問題視するのは、「その誤った情報が審査結果にどのような影響を与えたか」という点です。つまり、「意図的な虚偽申告であったかどうか」だけではなく、「重要な情報が正確且つ矛盾なく申告されていたか」が重視されるのです。
整合性について調べられる例は、PRカード更新申請、市民権申請、家族のスポンサー申請等が挙げられます。これらは全てPRステータス承認後に行われる申請ですので、その際に過去の申請内容について改めて確認される事もあるということです。
「数年前の申請なのに?」と思われるかもしれませんが、実際に過去の申請内容が後から問題視されたケースは存在するため、十分な注意が必要です。特に、「会社が作成した書類だから大丈夫だと思った」、「代理人に任せっぱなしだった」、「英語が難しくて理解できていなかった」等の理由は、Misrepresentationとみなされた場合の反論理由とすることが難しいため、注意しなければなりません。
PR申請では、ご存知の通り最終的に申請書に署名をするのは申請者本人です。つまり、「提出内容を理解した上で、正しい情報を提出する」という責任も、原則として本人にあるとお考え下さい。弁護士や政府公認移民コンサルタントを通して申請していた場合でも、代理人任せにするのではなく、申請者本人も内容を十分に理解し、双方で誤りが無いか慎重に確認する必要があります。また申請毎に代理人が変わることで、過去の申請内容との整合性確認が不十分になるケースもあるため、注意が必要です。
また、「小さい事だから大丈夫だろう」と自己判断してしまう事も危険です。
例えば、「昔の短期ビザ拒否だから関係ないと思った」「数週間だけのアルバイトだから書かなかった」というケースでも、後から別資料との矛盾が生じる事があります。一番大切なのは、IRCCに指摘されてから矛盾や漏れについて説明するのではなく、指摘される前(つまり申請の際)にしっかりと補足資料や説明を添えて、小さいことでも事前に説明することです。
「見つからなければ大丈夫」「今通れば問題ない」という考え方の方はおられませんか。これは将来的なカナダの生活がリスクにつながる可能性となる場合があります。PR申請は、「承認されればおしまい」ということではなく、「将来的にIRCCに見直されても、きちんと説明出来る内容であるか」という視点がとても重要です。
PR申請はゴールではなく、カナダでの新しい生活のスタートです。カナダで安心して長く生活していく為にも、「正確な申請」を心がけることが大切とお考え下さい。
]]>*注意事項* IRCCのEE担当者によると、この内容はあくまでも ”early consultation” の段階とのことです。つまり、現時点では政府がカナダ市民にEEに関する変更内容についての意見を受け付けている初期段階であり、今後Consultationが幾度か繰り返され、政府内でのデータに基づいた精査の後、最終的なEEの形が決定し、法律改訂のプロセスに入るとしています。実際に改訂されるには最低でも18ヶ月を要すると言及していました。今月号の内容はEEの改訂内容を保証するものではございませんこと、何卒ご理解頂ければ幸いです。
現在、EEは以下3つのプログラムで構成されています。
今後、これらを単一のプログラムに統合する方向性が示されています。これにより、これまでプログラムごとに異なっていた申請条件が一本化され、よりシンプルな制度になることが期待されています。
以下、現時点で考慮されている申請条件となります。
最低でも高校卒業以上(要ECA)
CLB 6以上(英語またはフランス語)
直近3年以内に、TEER 0、1、2、3の職種で合計1年以上の就労経験(海外経験も可) →注目すべき点は、職歴が継続(continuous)ではなく、合計(cumulative)に変更される点です。つまり短期の職歴を合算して職歴の条件を満たすことが可能となります。
これは新要素となります。高賃金の職種をPrevailing Wage(カナダ国内の平均賃金)リスト化し、申請者の給与額がどの程度(1.3倍、1.5倍、2倍など)超えているかでEEにおける追加のCRSポイントを付与する仕組みを検討中とIRCCのEE担当者は説明していました。
高い賃金であるということは、申請者のスキルの高さ、労働市場における需要の強さ、雇用主がその人材に対して対価を支払う意思、そしてカナダ経済への貢献度といった、複数の要素が反映されています。言い換えれば、高い賃金は「その人材が市場からどれだけ高く評価されているか」を示す一つの指標とも言えます。こうした背景から、IRCCはこれまでのように学歴などの要素を見るのではなく、「労働市場がその人をどのように評価しているのか」により重点を置く方向へとシフトしようとしていると考えられます。
IRCCは、以下の要素について、将来の経済的な活躍を必ずしも正確に反映するものではないとして、追加点の付与を見直す方向で検討しています。
今回の改正の背景には、EEの公正性(Integrity)をより高めたいという政府の意図もあります。これまでの制度では、職務内容の書き方や肩書きの設定、あるいはジョブオファーの扱い方によって評価に差が出る余地がありました。しかし、職種ごとの平均賃金といった客観的な指標を用いることで、審査のバラつきを抑え、より一貫性のある評価が可能になります。IRCCは、今後EEを通して「カナダ経済にどれだけ迅速に貢献できる人材を選別できるか」という点をより重視するよう、連邦政府からも制度の見直しを求められています。
EEは従来の「プログラム別」や「Profile内容重視」の選考から、「労働市場をベースにした選考」へと変化しつつあります。今後は、単に条件を満たすだけでなく、どのような職種で、どの程度の責任や影響力を持って働いているかということが、これまで以上に重要になります。特に、付加価値の高いポジションや責任の大きい役割にある方ほど評価されやすくなる可能性があり、キャリアの方向性そのものがPR取得に直結する時代に入っていくといえるでしょう。
これまで多くの(EEを通した)移民申請をサポートしてきた中で感じるのは、今回の改革は少しハードルが上がるように見える一方で、新しいチャンスも生まれているという点です。
例えば、「通算1年」の職歴が認められるようになることで、これまで条件を満たせなかった方にも道が開ける可能性があります。一方で、職種や収入の水準がより重視される流れもあり、今後は「どのような職業でどの程度の収入を得ているか」がこれまで以上に大切になると考えています。
大切なのは一つひとつの変更に振り回されすぎず、ご自身のキャリアや生活に合った形で、無理のないステップを考えていくことです。目標を持って計画的に準備をしていくことで、EEを通して個人移民を申請する可能性を高めることはできるかと思います。
]]>
このお二人はCommon-lawカップルとして、Aさん(日本人)の移民申請をしたいとご相談がありました。当初二人でBritish Columbia州に住んでいましたが、Bさん(カナダ人)の出身地である、Quebec州に一緒に引っ越し、Bさんの持ち家で同居生活を続けるということになっていました。西から東へのお引越しは大変ですね、と言うとAさんは「そうですね、フランス語を話せないので心配です。でも彼のために頑張って英語と同時に勉強します。」と笑顔で仰っていました。
その後二人はQuebec州に引っ越し、移民申請も無事提出が完了しました。ただQuebec州における移民申請は特殊であり、通常の審査に追加として、CSQ(Quebec Selection Certificate)をQuebec州の移民局(MIFI)に申請し、承認されるというステップがあるため、審査期間も通常の家族移民の倍程度の時間を要するケースである旨、予めお二人に伝えていました。事前のコンサルテーションにて、Bさんがこの申請のスポンサーとして遂行しなければならない義務(Aさんの移民申請が承認され、晴れてPRとなった日から3年間は経済的援助が必須となる旨)も伝えていました。
Aさんはとても活発な方で、フランス語の語学学校に通いながらパートタイムの仕事を3つも掛け持ちしてQuebecで暮らしているということを聞き、非常に驚きました。ついこの間までフランス語を話せなかった方が、接客業を3つも掛け持ちしているということが信じ難く、凄いと弊社内でも話題になっていた程でした。
移民申請から2年半程度が経過し、その間無事CSQ取得、健康診断パス、犯罪経歴もパス、申請条件の審査もAさん、Bさん共にパスし、後はLanding(移民局の審査官と共にConfirmation of PRに署名をし、晴れてカナダのPRになること)のみという状況でした。
突然、Bさんから3通のメールが来ました。1通目は「僕はもう彼女のスポンサーになりたくない。」という一行のメールでした。2番目は「スポンサーとしての経済援助の義務期間はもう始まっているのか」という内容、そして最後は長文で「僕のパートナーは僕の持ち家に住めて、宝くじに当たったのと同じだ。タダで住めるのだから。PRを取得するために僕を利用しているのだ」等、文句を綴るメールでした。
大変驚きましたが、この仕事を長年していると往々にしてこのようなことが何年かに数回は起こるため、このようなことは決して珍しいものではありません。そして2通目のメールの質問に対して「AさんがPRになった日から3年間の期間です」ということを伝えると、「そんなまさか!彼女にも経済的な責任を負わせるべきだ。やっぱりこの申請は取り下げたい。」という返信が即時に来ました。Bさんが感情的になっていることは明らかだったため、「Bさんお一人のリクエストで、この大きな決断を前に進めることはできません。本当に申請を取り下げたいのであれば、お二人で落ち着いて話し合った後、双方より申請を取り下げる意思を示すメールを下さい。」と伝えました。その直後、「Bさんが申請を取り下げたいと仰っているので、お二人でしっかりとお話し合いをして下さい」とAさんに連絡をしました。
Aさんからは「分かりました。連絡ありがとうございます。」という返信があり、数時間してまずはBさんから「やっぱり取り消しは辞める。スポンサーとしてサインするから最後まで進めて欲しい」と連絡がありました。Aさんからも「最近色々とあって揉めていたのですが、もう大丈夫です。すみませんがこのまま進めて下さい。」と連絡がありました。お二人は現在も、IRCCからのConfirmation of PR発行待ちです。
結局のところ、「なんだ、痴話喧嘩か」と思われた方もいると思います。この出来事を今月号で書くことにしたのは、これまで17年間様々なカップルの移民申請のお手伝いをしてきた中で、スポンサー(カナダ人)が申請者(日本人)をコントロールしたり、威圧したり、日本ではモラハラではないかと言われるような発言をされるのを目の当たりにして、この二人は果たしてPR取得後もカップルとして大丈夫なのだろうかと感じたことが多々あった、ということをお伝えしたかったからです。特にCommon-lawのカップルに多い出来事と感じています。自分の心と身体を守るためにも、同居時点から相手が真摯な方か見極めることは移民手続きよりも何よりも重要と心に留めて頂ければと思います。
]]>2025年の連邦予算で打ち出された、新しい政府の方針として「International Talent Attraction Strategy」はこれまで注目を浴びてきました。この戦略は、世界中の高度な人材(研究者、学者、イノベーターなど)をカナダに移住させ、カナダの経済成長や長期的な社会の安定を支えることを主な目的としています。政府が2026年度にどのような人材を優先的に受け入れていくかということを具体化するための、「政策の方向性」を示すツールとなります。
Express Entryにおいて、2026年度カナダ政府が優先して受け入れる具体的な職種リスト(NOC番号)が2月18日に発表されました。ここでは、NOC番号ではなく、主な分野(カテゴリー)のみ紹介致します。
1. フランス語能力
2. 医療および社会福祉関連職種
3. 科学・技術・工学・数学(STEM)分野の職種
4. 技能職
5. 教育関連職種
6. 運輸・輸送関連職種
7. カナダでの就労経験を有する医師
8. カナダでの就労経験を有する上級管理職
9. カナダでの就労経験を有する研究者
10. 熟練した軍人志願者
上記1番から5番は昨年からの引き継ぎ、6番から10番は、2026年より追加されたカテゴリーです。特筆すべきは、この優先カテゴリーでITAを受領するためには(1番のフランス語能力以外)、直近3年間において、合計1年間はフルタイムでこの職種のいずれかで就労していることが必須となることです。昨年までは合計1年間ではなく、合計半年間でしたので、十分ご注意下さい。
ITA発行数は、昨年11月に発表された、2026-2028 Immigration Levels Planに則って調整されます。
ディアブ大臣は次のように述べています。 「カナダの未来を支えるのは、変化し続ける経済の課題に対応できる人材です。Express Entry を、我々の社会が本当に必要としているスキルに重点を置く形へとシフトすることで、カナダの労働市場を強化
し、各州の優先事項を支援し、新しくカナダに移住する人々がこの国に到着したその日から活躍できることになります。」
2026年2月19日、IRCCはExpress Entryの選考を新たに行いました。以下が概要です。
· 選考日: 2026年2月19日
· カテゴリー: カナダでの就労経験を有する医師
· CRSスコア(最低点): 169点
· ITA発行数: 391件
今回の選考から、幾つか注目すべき点が見えてきます。
まず、この選考が行われたのはディアブ大臣が新しいカテゴリーについて発表をした翌日に実施された点です。そして、最初に選考対象となったのが「医師」という職種であったことも大きな特徴と言えます。
更に、今回この選考で大変驚いたのは、CRSスコアです。今回は169点以上の候補者、391名にITA(PR申請のための招待状)が発行されました。この169点というスコアは、2015年1月1日にExpress Entry制度が発足して以来、過去2番目に低い点数となります。現在、Canadian Experience Classにおける選考では500点以上が続いていることを考えると、この点がいかに低いか、そしてこの結果から、カナダがどれほど医師を必要としているかが見えてきます。
昨年12月8日、IRCCはカナダで経験を有する医師を対象に、新たなExpress Entryカテゴリーを創設する予定であると発表しました。また、選考対象となる医師は、すでに就労ビザでカナダに滞在し、患者の治療にあたりながら医療システムを支えている方々である、とも述べていました。この職種は、連邦レベルで5,000人の受け入れ枠を新たに確保しているとのことです。これらの枠は、既存の州推薦プログラム(PNP)の年間割り当て数とは別に設けられています。
カナダでは、多くの日本人医師が就労しています。この国で活躍する医師の方々のために、新たな道筋を示したIRCCの戦略について、高く評価したいと感じています。
今回の発表により、カナダがどのような人材を求めているのか、その方向性がよりはっきりと見えてきたのではないでしょうか。制度の変更や新しいカテゴリーの導入に、不安や戸惑いを感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、移民政策は社会のニーズに合わせて変化していくものとして捉えて頂ければと思います。すでにカナダで生活し、努力を重ねている方々にとって、新しい道が開かれていく可能性も十分にあり得ます。今後も最新情報を確認しながら、状況に合った選択を考えていくことが大切です。カナダという国が、本来の豊かさを少しずつ取り戻していくことを、心から願っています。
]]>実際、弊社でも昨年より「アメリカからカナダに移住したい」、「長期間アメリカで暮らしていたが、カナダに本帰国して暮らしたい」、「アメリカで暮らす両親をカナダに呼び寄せたい」といったご相談を相次いで頂くようになりました。カナダ人はアメリカに旅行することを控えだし、アメリカの国境でカナダ人が拘束されたというような話も聞くようになりました。アメリカが世界各国より危険な国という印象を与えるようになったのは、近年におけるICEの過激な活動も原因であると言われています。
そこで今月号は、アメリカにおけるICEの役割と、カナダにおけるCBSA(Canada Border Services Agency)の役割の違いについて説明します。
ICEは、アメリカ国内で移民法を執行する政府機関です。空港や国境で入国審査を行う機関ではなく、すでにアメリカに入国している人を対象に、在留資格に関する調査や対応を行います。たとえば、在留資格に問題があると判断された場合の拘束や送還(国外退去)の手続きなどがICEの主な役割です。
また、ICEは移民に関わる犯罪捜査も担当しており、人身売買や書類の不正、密輸などの調査を行うこともあります。そのため、ICEの職員は地域の中で活動することがあり、職場や街中で姿を見かけることもあります。アメリカでは、入国後の移民法の執行を主にICEが担っているため、移民者コミュニティにとって影響の大きい機関として知られています。
CBSAは、カナダの空港や陸路の国境で入国審査や税関業務を行う政府機関です。カナダに入国する際、パスポートやビザ、滞在目的などを確認したり、持ち込み荷物の検査を行ったりするのがCBSAの主な役割です。観光、留学、就労、永住など、どのような立場であっても、カナダに入国する際に最初に対応されるのがCBSAの職員です。また、関税の徴収や、持ち込みが禁止されている物品の取り締まりなど、税関としての役割も担っています。
CBSAは国境での業務だけでなく、カナダ国内での移民法の執行も遂行しています。たとえば、在留資格の条件が守られていない場合や、正式な判断に基づき国外退去が必要とされた場合には、調査や手続きを行います。ただし、こうした対応は原則として書面による通知や正式なプロセスに沿って進められ、通知を受けた者が状況を理解した後、必要に応じて弁護士や政府公認移民コンサルタントなどに相談する機会が与えられます。アメリカのように地域社会の中で突然取り締まりが行われるケースは稀であり、CBSAの対応は比較的予測可能な範囲で、ルールに基づいて行われるのが特徴です。
カナダの日常生活の中で、CBSAと直接関わる場面はそれほど多くありません。普段の生活や職場、学校の中で突然CBSA職員と接することはほぼ無いため、CBSAは「違法行為を取り締まる機関」というよりも、カナダの国境と移民のルールを支える、大切な役割を担う存在として認識されています。つまり、法律に従って安全で公平なカナダの入国と滞在を守ることが、CBSAの大きな役割です。
CBSAと ICEはどちらも移民や国境に関わる政府の機関ですが、一般の人たちとの関わり方や権限の範囲が大分違います。つい最近アメリカのミネアポリスで ICE の職員が一般の女性を射殺した事件が大きなニュースになり、住民や専門家、裁判所まで巻き込んで大きな論争になっています。ICE の行動は「正当防衛だったのか」「過剰な対応だったのではないか」といった強い批判が出ています。
ICE はアメリカの地域社会の中でも積極的に作戦を行うことがあるため、現場で 武装した捜査活動や強制的な対応が目立つことがあり、住民が怖さを感じたり、信頼されていないとニュースでも度々報道されています。
一方、が関わる場面の多くは国境関連手続きであるため、日常生活の中で、突然地域で発砲されるような危険な状況に直面することは非常に稀です。CBSA の対応は、手続きや通知を重視し、法的なプロセスに沿って行われるのが基本です。つまり違反が判明次第、書面で通知を受領し、対応の機会が与えられます。これはカナダの制度全体が 手続きの透明性と慎重さ、公平性を重視する仕組みになっているためです。
如何でしょうか。カナダでは日常生活の中で突然強制的な対応に遭うことは殆ど無いため、アメリカの移民法の遂行方法と比較すると、カナダは移民や外国人にとってより安全で安心できる環境が整っていると言えます。
]]>明けましておめでとうございます。2026年もTORJAの皆様に有意義な情報を提供させて頂けるよう、尽力致しますのでどうぞ宜しくお願い致します。
さて、この記事を書いている2025年12月15日にカナダ政府は通称Bill C-3、「An Act to Amend the Citizenship Act 2025」を正式に制定しました。これは長年議論されてきた 「first-generation limit(第一世代制限)」 を見直す歴史的な改革と言えます。
カナダで生まれて海外へ居住し、そこで子供が生まれた場合には、その子供はカナダ国籍であるものとされてきました。但しその子供(つまり孫であり第二世代)が海外で生まれた場合には、自動的にカナダ国籍を得ることはできないというルールでした。この制限によって、海外で生まれた子供達がカナダ国籍を認められない事例が相次ぎ、長年「Lost Canadians」として問題視されてきました。
弊社のお客様でも、過去に「私は日本で生まれたが、親がカナダ生まれのカナダ国籍なので、自分はカナダ国籍保持者でもある。今回、子供が日本で生まれたので、子供のカナダのProof of Citizenshipを申請したい」というお問い合わせを頂き、最終的にお子さんは残念ながらカナダ国籍ではないということが判明した案件もありました。
Bill C-3 の施行により、カナダ国籍の認定に関する 対象者の範囲が明確化・拡大されました。主なポイントは以下のとおりです。
Bill C-3 は、突然成立した法律ではなく、約2年間にわたる司法と政府の対応の積み重ねの末にようやく実現した制定です。
発端は 2023年12月にオンタリオ州上級裁判所(Ontario Superior Court)の判事が、当時のカナダ市民権法に含まれていた 「第二世代制限(second-generation limit)」 について、憲法違反であるとの判断を下したことです。裁判所は、この規定が「カナダ市民を二つの階級に分け、一方には市民権を子供に継承する権利を十分に与えず、不平等を生じさせている」と指摘しました。
この判決に対し、当時の連邦政府は上訴(争うこと)を選ばず、市民権法そのものを改正する方針を取ることを決定しました。政府には当初、2024 年までに法改正を行う期限が与えられていましたが、期限内に改正案を成立させることができず、その後も複数回にわたり裁判所に期限延長を求めることになり、最終的に2025年11月20日にBill C-3は法案が両院ともに通過し、「国王裁可(Royal Assent)」に付されて成立が決定しました。
このように、Bill C-3は裁判所による違憲判断をきっかけに、長期間の法的・政治的調整を経て成立した法律であり、カナダの市民権制度における重要な転換点と位置づけられています。
カナダの移民弁護士や政府公認移民コンサルタントの多くは、Bill C-3 について「長年問題視されてきた不公平を是正する、重要で前向きな法改正」であると評価しています。特に、海外で生まれたという理由だけでカナダ国籍を継承できなかった人々、いわゆる「Lost Canadians」の救済につながる点は、憲法上の平等原則に沿った素晴らしい制定であると評価されています。
一方で、新たに導入された「カナダとの実質的な関係(substantial connection)を証明する」という申請条件については、再び不公平を生む可能性があるとして、慎重な見方を示す者もいるのが現実です。特に、海外養子縁組のケースなどでは、条件の適用方法が今後の課題になると指摘されています。総じて、Bill C-3 はカナダ市民権制度を現代のグローバルな現実に近づける大きな一歩である一方、実務面での明確なガイドラインと公平な運用が強く求められている、というのが法律専門家の共通した見解です。
]]>今年も例年と同じく11月初旬にカナダ移民局(IRCC)より2026年から2028年度のImmigration Levels Planが発表されました。これは「今後の1〜3年間に受け入れる移民や短期ビザ保持者の人数と内訳」を示した公式なプランです。この数字を公に発表することで、地域や経済に合わせた移民の受け入れを、カナダ連邦政府が政略的に進めていることを示しています。ただ、このプランはほぼ数字のみの発表であるため、それらの数字の裏に隠された【今後の政府の移民政略】について読み取るのは大変困難です。従って今月号は、今回の発表の中で興味深いと感じたトピックについて解説致します。
2026年の一時外国人労働者プログラム(TFWP)の労働者受け入れ人数は、82,000人から60,000人に削減されると発表されました。この減少が意味するのは、LMIAの申請基準が更に厳しくなるということです。しています。マーク・カーニー首相は、TFWPをより戦略的に変更する必要があると強調しています。単に幅広く労働者を受け入れるのではなく、特定の産業や地域に重点を置くべきだと述べています。また、2027年までに一時労働者を含む非永住者の割合をカナダの人口の5%未満に抑えることを目指しているとも公言しています。これらの政策は、飲食業、介護、製造業、農業など、一時外国人労働者に依存している職種では、大打撃を受けるであろうと言われています。
今回の発表において、一つの光が見えたという方もいるかもしれません。それはIRCCが「2026年から2027年にかけて、最大33,000人の一時外国人労働者を、特別なプロセスを通じてPR申請の道へと導く計画(2026年度と2027年度、合計2回を予定)を発表したことにあります。
このプログラムの申請条件に関する詳細は(2025年11月21日時点では)公表されていませんが、IRCCは次の条件を満たす人々がこのプログラムにてPR申請することが可能になるであろうと示唆しています。
この発表を見て、2021年のTR-to-PR(留学生・一時外国人労働者向けの一時救済PRプログラム)を思い出した方もいらっしゃるかと思います。これは受付開始数時間で応募数に達したプログラムでした。恐らくカナダで現在就労されている方は、この発表について1番興味を持ってチェックすべきと考えています。
移民弁護士・政府公認移民コンサルタント業界でもこのプログラムについて議論が交わされており、沢山の意見が飛び交っています。例えば「このプログラムはExpress Entryに紐付くだろう」「Express EntryのProfileに入力するPostal Codeを元に申請受け入れ地域を特定するのではないか」等です。Rural areaと発表内容に記述があることからも、カナダで就労されている全ての一時外国人労働者が申請できるのではないことが汲み取れます。
このImmigration Levels Planを理解することで、今後3年間の移民・ビザの動向が垣間見えるかと思います。個人移民申請は難しい状況が続くと考えられますが、日本人でも引き続き個人移民申請をされている方々はいらっしゃいます。諦めず、カナダにおいてどの職種の需要が安定してあるか、ということに注目してプランを練ってみて下さい。
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