・・・
ノートはここで終わっている。ゆり子はノートを閉じた。閉じてみて改めて眺めていると、この、一番古ぼけたノートは、なつをさんの大切な思い出が詰まっているように感じて、とても愛おしくなった。他のノートにもなつをは独特の存在感で登場しているが、このノートはなつをがまだ助手ではなく、クライアントとしてドクターに相談に行ったときのもので、それ故に、他のノートとは違った、特別な雰囲気、特別な空気感を感じるのだ。
「そっか。何か、1回では難しいテーマに取り組むときは、『やる』という決意ではなく『やってみようとする』という決意が大事なんだ・・・そうすれば何度も試みて・・・試みた時点で『成功』なのだから気持ちが重くならない。だから心が折れない。だから継続できて、結果的には実際に行動を起こせる。そんな考え方、誰も教えてくれなかったなぁ・・・やっぱりおじいちゃんすごい・・・」ゆり子はこのノートから学んだ一番大事なことを、自分の心に染みこませるようにつぶやきながら振り返った。そして、ゆり子はこの大切なノートを、かつて赤ん坊だった娘のさくらを抱いたときと同じくらい愛おしい気持ちを感じながら、両手で胸に抱いたのだった。
(つづく)
この物語はまぐまぐから配信の無料メールマガジン「女と男の心のヘルスー癒しの心理学」で(少し)先行して配信しています。また独自配信(無料)の「ココヘル+」では物語の裏側、心理学的側面を解説しています。合わせて御覧頂くと、より理解が深まります。登録はいずれもこちらのページから行えます。(無料メルマガですので、すでにお支払いになっている、インターネット接続料金・通信料以外の料金は一切かかりません。)
女と男の心のヘルス(ココヘル)
心のコンサルタント|恋愛セラピスト あづまやすしの
個人セッション: http://bit.ly/2b8aThM
セミナー: http://bit.ly/nvKmNj
メールマガジン: http://bit.ly/mtvxYW
自習型教材: http://bit.ly/lZp3b0
]]>
・・・
「先生、実際にやってみて、できました!」なつをが嬉しそうに報告した。
今日はカウンセリングではないが、なつをは先生に、特別に会う機会をもらって、報告している。場所もドクターのいつものオフィスではなくて、落ち着いたカフェだ。湯水ちゃんもいる。ただ、仕事ではないのでとてもリラックスした表情だ。
「そう、それは良かった。1回目からできたのですか?」ドクターは、仕事ではないときも、論理的だ。
「いえ・・・1回目はダメでした。なんか、恥ずかしくなってしまって。」なつをはそう言いながら恥ずかしそうにしている。
「そう・・・じゃあ、何回目までチャレンジしてみたんですか?」ドクターは、ニコニコしながら聞いている。そもそも、できた、という報告なのだから、何回目であってもいいのだ。最終的には「できた」という報告になることが、もう分かっているのだから。
「3回目です。」なつをが、まだ少し恥ずかしそうに答えている。
「そう、じゃあ、3回目まで頑張ったんですね。」
「・・・そうですね。」
実はドクターとなつをは、前回のセッションの最後に出された行動課題をやってみた結果について話しているのだ。その時に設定した行動課題は、「彼の手を握ろうとする」というものだった。既にお互いに、人間的にはある程度信頼し合っているところまで関係ができていて、ただ、二人とも遠慮がちで、そこから「恋愛」という意味での進展がない。そういう状況であったので、ドクターが提案したのが「機を見て彼の手を握る」というものだったのだ。
但し、「手を握る」という課題だと、不成功に終わる可能性がそれなりにある。タイミングが悪い、踏ん切りがつかない、などなど、様々な要因によって。そうすると、何度か試みる際に「ああダメだった」という失敗体験を繰り返してしまうことになる。人は失敗体験を繰り返し、ネガティブな感情が積もった出来事を無意識に避けるようになる。手を握ろうとする→できなかった→少し重い気持ちで手を握ろうとする→できなかった→もう少し重い気持ちで、頑張って手を握ろうとする→できなかった→そろそろ、挑戦するのが嫌になったり怖くなったりする→やめてしまう、まあこんな風にマイナス感情は徐々に人の行動力を奪っていくものだ。そこで、ドクターが提案していたのは「手を握る」ではなく「手を握ろうとする」という行動課題だ。心理学をよく知らない人にとっては、どっちでも同じように感じるかも知れない。しかし、ドクターによればこの両社は「大きく違う」のだ。
頭の中で起きている事まで含めて、先ほどの感情の降り積もりを表現すると、こんな感じだ。手を握ろうと考える→この時点で課題成功→ただ、やっぱり実際に握って恋愛を進展させたいので行動を起こそうとする→(たとえば)恥ずかしくてできなかった→前回課題は成功しているので、次も軽い気持ちで手を握ろうと考える→この時点で課題成功→実際に握ってみようとする→タイミングが合わなくてできなかった・・・以下繰り返しになるが、ネガティブな感情の蓄積が少ないので、心が折れにくく、継続して取り組みやすいのだ。
「本当に、たったの3回で手を握れたんですか?」今度は、ドクターは、オフィスにいるときと口調が違った。なんだか、興味本位に訊いているような雰囲気だ。「ひょっとして、デートの3回目、とかそういう感じ?」
「えと・・・あ、はい。そうですね。」なつをは修正した。
「ああなるほどね・・・でも、1回のデートの中で、何回かタイミングを図ったりしたでしょ?」
なつをは「はっ」とした表情になり、しばらく目線を上の方に泳がせていたが、やがて答えた。「えと、あの、あ、はい。そうですね。あのあと、初めてのデートの時には、そういえば4、5回、手を握ろうと頑張ってみました。1回もできなかったんですけど。」
「まあ、課題は『握ってみようとする』でしたから、あのあと最初のデートから4、5回も課題に成功した、てことになるわけですね。」ドクターはニコニコしながらコメントした。
「はい。そうなんです!」なつをはここで一段と声が大きくなった。「これが『手を握る』という課題だったら、初回で4、5回失敗して、次の回に、彼とデートに出かけること自体が、怖くなっていたかも知れません。でも、課題は成功したんだ、と思うと、彼に会いたかったこともあって、次回会う約束を自然にしていました。」
「いいですね。大事なポイントをよく理解されています。4、5回の小さな成功体験を積み重ねたか、4、5回の小さな失敗体験を積み重ねたかは、そのあと、自発的に行動できるかどうか、ということに対して、バカにできないほどの差を生み出します。なつをさんは、このことを実体験から学んだわけですね。」ドクターは、今日は仕事ではないのだが、説明となると、オンの時も、オフの時も調子が変わらない。
(つづく)
この物語はまぐまぐから配信の無料メールマガジン「女と男の心のヘルスー癒しの心理学」で(少し)先行して配信しています。また独自配信(無料)の「ココヘル+」では物語の裏側、心理学的側面を解説しています。合わせて御覧頂くと、より理解が深まります。登録はいずれもこちらのページから行えます。(無料メルマガですので、すでにお支払いになっている、インターネット接続料金・通信料以外の料金は一切かかりません。)
女と男の心のヘルス(ココヘル)
心のコンサルタント|恋愛セラピスト あづまやすしの
個人セッション: http://bit.ly/2b8aThM
セミナー: http://bit.ly/nvKmNj
メールマガジン: http://bit.ly/mtvxYW
自習型教材: http://bit.ly/lZp3b0
]]>
「質問する、って、自分の『あり方』がすべからく反映されてしまうものなのだなぁ・・・」ゆり子はつぶやいた。
この日はもう夜も遅くなっていたので、ノートの続きを読むことも、ノートから学んだことについて考えることもおしまいにして、ゆり子は眠りに就いた。
・・・
翌日、ゆり子はまた、ひとりの時間に、「恋愛ドクターの遺産」ノートの昨日開いた部分を読み返していた。
そして、ひとり考えていた。「やっぱり、恋愛ドクターに質問されたいなぁ。おじいちゃん、まだ生きていてくれていたらよかったのに。あと、なつをさんにも会えたらいいのに・・・」
そして、父親に電話をした。「お父さん。あのね、あのノート、とても役に立ってるよ。でも、ノートを読むだけではなくて、実際におじいちゃんのカウンセリングを受けてみたくなったの。でももう亡くなってるし・・・あの・・・もし、なつをさんがまだお仕事をなさっているなら、一度お会いしたいなぁ。」
「ああ、なつをさんね。数年前まで現役でカウンセラーをされていたと聞いていますよ。でも最近引退されたようです。ただ、なつをさんの専門分野は恋愛や夫婦関係ではなかったように記憶していたけどなぁ・・・」父親は答えた。結構よく知っているようで、続いてこう言った。「なつをさんが主催しているカウンセリングオフィスは今も継続していて、あとを継いだカウンセラーたちが、今も相談を受けているはずだから・・・ちょっと連絡を取ってみるよ。」
「お父さん、ありがとう。」
その後、ゆり子は父親に、ドクター(つまり祖父)の質問がとても素晴らしいと思ったこと、それを理解したら、夫である幸雄の質問が途端に「詰問」に感じられて、とても狭い範囲でしか答えられない息苦しさを、ようやく自覚したことなどを話した。
ゆり子が「残念だけれど、離婚の方向で進むことになるのかなぁ。」と、ぼそっとつぶやいたら、
父が言った。「ゆり子はここまで一生懸命考えたのだから、どんな結論を出したとしても、お父さんはゆり子の決めたことを応援するよ。」
「ありがとう。お父さん。」
ノートにはまだ続きがあって、まだ丁寧な字でびっしりと何かが書かれている。ここまで心に響く内容だったので、ゆり子はこのノートを最後まで読むことにした。
(つづく)
この物語はまぐまぐから配信の無料メールマガジン「女と男の心のヘルスー癒しの心理学」で(少し)先行して配信しています。また独自配信(無料)の「ココヘル+」では物語の裏側、心理学的側面を解説しています。合わせて御覧頂くと、より理解が深まります。登録はいずれもこちらのページから行えます。(無料メルマガですので、すでにお支払いになっている、インターネット接続料金・通信料以外の料金は一切かかりません。)
女と男の心のヘルス(ココヘル)
心のコンサルタント|恋愛セラピスト あづまやすしの
個人セッション: http://bit.ly/2b8aThM
セミナー: http://bit.ly/nvKmNj
メールマガジン: http://bit.ly/mtvxYW
自習型教材: http://bit.ly/lZp3b0
]]>
ゆり子はノートを閉じた。実はまだこのノートには続きがあるのだが、今日は夜も遅いので、一旦閉じて寝ることにしたのだった。ノートを閉じてから、ゆり子は考えていた。おじいちゃんが生きていてくれたらよかったのに、と。自分も、恋愛ドクターに相談してみたかったな、と。
「全幅の信頼を置いて、質問をしてくれる。そんな体験、してみたいなぁ。」ゆり子はつぶやいた。そもそも、こうしてノートを読むようになったきっかけは、夫婦の信頼関係に疑問を持ったからだった。そして、いよいよ今回のノートを読んで自分の持っていた夫婦関係への疑問の、核心部分を理解した。それは、夫の幸雄がゆり子に投げてくる質問にあった。
ドクターはなつをに対して、全幅の信頼を置いて質問を投げていた。あのような質問を投げられたなら、私は・・・ゆり子は考えていた。気持ちは開き、自由になり、素直に、いま自分が感じていることを、恥ずかしい気持ちも含めて表現できる、そう思った。
でも、夫の幸雄はいつも違っていた。幸雄は、仕事はかなりできるタイプで、職場では、親友と呼べる相手はいないのかもしれないが、成果を挙げていて、一定の信頼を勝ち得ていたようだし、成果に応じた出世もしていた。仕事術の一環として学んだのか、「指示命令ばかりではなく質問をすることが大事」と時折得意げに主張していた。つまり幸雄も、質問は大事と考えていて、質問のスキルに長けていると、自分では考えていたようだった。
しかし、恋愛ドクターA(ゆり子の祖父だ)の質問を目の当たりにして(といってもノートの中だが)、改めて思い出してみると、相手に全幅の信頼を置いて、相手にどんな答えをしても良いという完全なる自由を与える、そんな質問からはほど遠かったように思う。
以前、幸雄とゆり子はこんな会話をしている。
こんな風に。
この日の話し合いは、それぞれが離婚に向けて動きたいのか、それとも、修復に向けて動きたいのか、そんな、これからの「基本方針」について話す、ということになっていた。この「基本方針」という言葉は幸雄が言った言葉だ。
「で、おまえは、どうしたいの?」早速「基本方針」の確認をしてくる幸雄。しかし、会社の事業計画じゃあるまいし、こんな突き放した言い方をされて、まともな答えが言えるわけがない。
(あぁ、やっぱり今まで通り。そもそも「話し合い」のやり方自体が、関係を悪くしている気がする)ゆり子はそう思ったが、それを言ったらさらにこじれそうで言えなかった。
「私は、もっと、通じ合って、安心できる関係ができたらな、って思うんだけど。」
「オレに、何をしろ、と言っているのか、ハッキリ言ってくれ。」
(はぁ・・・またこの展開・・・)ゆり子はさらに暗い気分になってきた。
「あのね、私の気持ちを分かってもらえない、といつも感じていて、それをあなたは、自分は悪くないみたいに言うから、ますます言えなくなって・・・」
「あのさあ、オレの質問に対して、ちゃんと答えてないよね? 『何をしてほしいか』の質問の答えは、『何々をしてほしい』でしょうが。おまえこそ、オレの話をちゃんと分かっていないんじゃないか? こっちのセリフだよ。『分かってもらえない』てのは。」
「あのね、そういうことじゃなくて・・・」
幸雄がイライラしているように、ゆり子には見えた。そして、それ以上何も言えなくなってしまった。
結局その日の「話し合い」は、幸雄の「お前は結局離婚したいのか?」という質問責めに対して、ゆり子がかろうじて「結論を保留する」ことで終わった。
帰りの電車の中で、精神的な疲労なのか、ゆり子は、全身が震えて止まらなかった。
あのときゆり子が感じた息苦しさは、いま、ドクターの、上質な質問を体験したあとだからよく分かる。幸雄の質問はなぜ苦しかったのか。それは、答えてよい答えの幅が狭いのだ。「幸雄が気に入る答え」という、きわめて狭い選択肢の中から、ゆり子が自分の答えを見つけなければならないのだ。当然、ゆり子にとって適切な選択肢がない場合も多い。だから、とても答えにくく、答える場合にもひどく神経を使う。
(つづく)
この物語はまぐまぐから配信の無料メールマガジン「女と男の心のヘルスー癒しの心理学」で(少し)先行して配信しています。また独自配信(無料)の「ココヘル+」では物語の裏側、心理学的側面を解説しています。合わせて御覧頂くと、より理解が深まります。登録はいずれもこちらのページから行えます。(無料メルマガですので、すでにお支払いになっている、インターネット接続料金・通信料以外の料金は一切かかりません。)
女と男の心のヘルス(ココヘル)
心のコンサルタント|恋愛セラピスト あづまやすしの
個人セッション: http://bit.ly/2b8aThM
セミナー: http://bit.ly/nvKmNj
メールマガジン: http://bit.ly/mtvxYW
自習型教材: http://bit.ly/lZp3b0
]]>
(つづく)
この物語はまぐまぐから配信の無料メールマガジン「女と男の心のヘルスー癒しの心理学」で(少し)先行して配信しています。また独自配信(無料)の「ココヘル+」では物語の裏側、心理学的側面を解説しています。合わせて御覧頂くと、より理解が深まります。登録はいずれもこちらのページから行えます。(無料メルマガですので、すでにお支払いになっている、インターネット接続料金・通信料以外の料金は一切かかりません。)
女と男の心のヘルス(ココヘル)
心のコンサルタント|恋愛セラピスト あづまやすしの
個人セッション: http://bit.ly/2b8aThM
セミナー: http://bit.ly/nvKmNj
メールマガジン: http://bit.ly/mtvxYW
自習型教材: http://bit.ly/lZp3b0
]]>
(つづく)
この物語はまぐまぐから配信の無料メールマガジン「女と男の心のヘルスー癒しの心理学」で(少し)先行して配信しています。また独自配信(無料)の「ココヘル+」では物語の裏側、心理学的側面を解説しています。合わせて御覧頂くと、より理解が深まります。登録はいずれもこちらのページから行えます。(無料メルマガですので、すでにお支払いになっている、インターネット接続料金・通信料以外の料金は一切かかりません。)
女と男の心のヘルス(ココヘル)
心のコンサルタント|恋愛セラピスト あづまやすしの
個人セッション: http://bit.ly/2b8aThM
セミナー: http://bit.ly/nvKmNj
メールマガジン: http://bit.ly/mtvxYW
自習型教材: http://bit.ly/lZp3b0
]]>
(つづく)
この物語はまぐまぐから配信の無料メールマガジン「女と男の心のヘルスー癒しの心理学」で(少し)先行して配信しています。また独自配信(無料)の「ココヘル+」では物語の裏側、心理学的側面を解説しています。合わせて御覧頂くと、より理解が深まります。登録はいずれもこちらのページから行えます。(無料メルマガですので、すでにお支払いになっている、インターネット接続料金・通信料以外の料金は一切かかりません。)
女と男の心のヘルス(ココヘル)
心のコンサルタント|恋愛セラピスト あづまやすしの
個人セッション: http://bit.ly/2b8aThM
セミナー: http://bit.ly/nvKmNj
メールマガジン: http://bit.ly/mtvxYW
自習型教材: http://bit.ly/lZp3b0
]]>
ドクターとなつをのセッションは続いている。(2年前のセッションの話は終わり、現在のセッション。といってももちろんノートの中の「現在」だ)
「そういえば、彼のお名前を伺っていませんでした。差し支えなければ。」ドクターが改まった調子で聞いた。
「はい。彼はユウジ、と言います。悠々の悠に、仁という字を書いて、悠仁。」
「なるほど。悠仁さんね。お名前の印象は、穏やかそうな感じですね。」
「あ、はい。実際穏やかな人だと思います。」
「いかにも、進展しなそうな感じですね。」少し苦笑しながら、ドクターが言った。
「あの・・・そうなんですか?」なつをは心配そうだ。
「先生!そんな直球! ごめんなさいねなつをさん。」慌てて湯水ちゃんがフォローした。
「いえ・・・いいんです。実際そう感じていましたから。」なつをは淡々と受け止めた。
一般的に、周りが勝手に心配することは多いものだが、当事者は覚悟が決まっていて落ち着いている、ということはよくあるものだ。なつをは、以前もドクターの元におとずれ、相談をした経験があることもあってか、多少のことでは動じない落ち着きを持っている。
「それで、なつをさん。彼とは例えば、中華料理屋さんに行っても、お互いに出方をうかがい合ってしまって注文を決めるのにも時間がかかる、そんな関係、そんな状態なのでしたね?」
「はい。本当に、気を遣い合ったり、出方をうかがい合ってしまって、なかなか決められないんですよね。」
「頑張りましょう。」
「へっ?」
ドクターの言葉に、なつをは変な声を上げてしまった。大体、何を意図して言った言葉なのか分からない。
「先生、ちゃんと説明してあげましょうよ。私も分からないですから。」湯水ちゃんが割って入った。
「あ、すみません。つい先走って結論だけ言ってしまうことがあるもので・・・今から説明しますね。」ドクターは苦笑しながらそう言った。
「お願いします。」
「あの、以前に来て下さったときは、トラウマを扱ったり、色々深い部分のテーマを解決する部分をメインにしましたよね?」
「はい。そうでした。」
「それで、今のなつをさんの印象を言うと、そういう深い部分の癒しは、大体終わっているのではないか、ということなんです。」
「そうなんですか?」
「ええ。それでも、恥ずかしいとか、色々な感情があって、彼に対して積極的になりきれていない。」
「・・・はい。そうです。」
「まあそれは、ようやく、そういう段階まで来た、ということだと考えています。」
「ようやくそういう段階・・・ですか?」
「ええ。」ここでドクターはホワイトボードの前に移動して、板書しながら説明を始めた。「トラウマがあると、そこに関係した心の部分というのは、成長が止まってしまいます。しかし、成長が止まったかどうかは、あまり意識されません。なぜなら、成長云々よりも、トラウマ反応・・・たとえば男性が怖いとか、緊張感を感じるとか、そういう強い反応・・・の方をより強く自覚することになるからです。以前のなつをさんはそういう状態でした。」
「そうだったと思います。」
「トラウマが解消すると、では、問題は全て解決するか、というと、実はトラウマを受けた時点からの成長が遅れていたりするので、成長を追いつかせる、という別のテーマが残るわけです。」
「・・・なるほど。怪我が治ったあと、体の動きを取り戻すためのリハビリが必要、みたいなことですか?」
「まあそんな風に考えても、大体良いと思います。そして、恋愛の場合、結構大事なポイントがあって、幼少期の安全の欲求や、所属の欲求が十分に満たされて、子供としての愛を十分受け取ったと感じて初めて、大人の恋愛・・・つまり性的な関係も含めた男女関係を受け入れられるようになるのです。」
「あ、なるほど、そうなんですね。とても納得です。」
(つづく)
この物語はまぐまぐから配信の無料メールマガジン「女と男の心のヘルスー癒しの心理学」で(少し)先行して配信しています。また独自配信(無料)の「ココヘル+」では物語の裏側、心理学的側面を解説しています。合わせて御覧頂くと、より理解が深まります。登録はいずれもこちらのページから行えます。(無料メルマガですので、すでにお支払いになっている、インターネット接続料金・通信料以外の料金は一切かかりません。)
女と男の心のヘルス(ココヘル)
心のコンサルタント|恋愛セラピスト あづまやすしの
個人セッション: http://bit.ly/2b8aThM
セミナー: http://bit.ly/nvKmNj
メールマガジン: http://bit.ly/mtvxYW
自習型教材: http://bit.ly/lZp3b0
]]>
こうして、2年前のセッションは終わった。
その後、なつをは、自分の気持ちを表現することを大事にして過ごすようになり、以前よりも「好き」「嫌い」を表明するように行動を変えた。
そのことで、長らく付き合いのあった友達の何人かは「あんた最近ワガママになったね」と去って行きそうになり、焦って引き留めそうになった。そのときにドクターから「人間関係のデトックス」が起こるということを思い出したのだった。そうかこれが、話に聞いていた人間関係のデトックスか。なつをは他人事のようにそう捉えていた。ドクターからの助言・・・というより予言・・・を予め受けていたので、なつをはパニックになることもなく、自分の元から友達・・・いや、友達と思い込んでいた他人・・・が去って行くのを、落ち着いて見送ることができたのだった。
人間関係のデトックスが済んだあとは、空いたスペースに、また新しい人間関係が入ってくる、とドクターからは聞いていたのだが、そうなるまでは少し時間がかかった。半年ぐらいして徐々に新しい友達もでき、新たな人間関係を築いていった。
そんなある日、古くからの男友達から飲み会のお誘いがあり、行ってみることにしたのだった。その飲み会の席で話が合う男性と出会い、連絡先交換から現在の比較的親しい関係にまで至ったのは、既にドクターに語ったとおりだ。但し、どことなく彼との距離があって縮まらず、そこがこれからの課題なのだが。
なお、その飲み会を企画してくれた男性に、なつをがあとから聞いた話だが、以前のなつをはどことなく警戒心が強くて自分を開かないように見えていたとのこと。それは、頑なに見えるとか、人を寄せ付けない感じというのとは違っていて、相手に従うし、上手く合わせるけれど、本心からそうしたいと思ってしているのか、そこが分からない。つまり本心が見えない、というような感じだったそうだ。それで、あまり飲み会のメンバーには誘わなかったのだが、久しぶりに会ったときにずいぶん自分を開くようになったと感じて、今ならいい出会いが作れるかも知れないし、カップル成立となったら相手の男性もきっと幸せだろうと思って、初めて飲み会に誘ったのだそうだ。そんなことまで考えて飲み会のメンバーを集めている彼もなかなかのやり手(?)だと思うが、彼の思惑通り、その飲み会でいい相手を引き寄せたなつをも、「分かりやすい」キャラだ。
そして、そんな経緯でいわゆる「友達以上恋人未満」ぐらいの距離まで接近したなつをだったが、どうにもそこから進まず、戸惑っている。そして、取り返しが付かないことになる前に(というのは少し心配性が過ぎるのだが)相談に来たのであった。
(つづく)
この物語はまぐまぐから配信の無料メールマガジン「女と男の心のヘルスー癒しの心理学」で(少し)先行して配信しています。また独自配信(無料)の「ココヘル+」では物語の裏側、心理学的側面を解説しています。合わせて御覧頂くと、より理解が深まります。登録はいずれもこちらのページから行えます。(無料メルマガですので、すでにお支払いになっている、インターネット接続料金・通信料以外の料金は一切かかりません。)
女と男の心のヘルス(ココヘル)
心のコンサルタント|恋愛セラピスト あづまやすしの
個人セッション: http://bit.ly/2b8aThM
セミナー: http://bit.ly/nvKmNj
メールマガジン: http://bit.ly/mtvxYW
自習型教材: http://bit.ly/lZp3b0
]]>
(つづく)
この物語はまぐまぐから配信の無料メールマガジン「女と男の心のヘルスー癒しの心理学」で(少し)先行して配信しています。また独自配信(無料)の「ココヘル+」では物語の裏側、心理学的側面を解説しています。合わせて御覧頂くと、より理解が深まります。登録はいずれもこちらのページから行えます。(無料メルマガですので、すでにお支払いになっている、インターネット接続料金・通信料以外の料金は一切かかりません。)
女と男の心のヘルス(ココヘル)
心のコンサルタント|恋愛セラピスト あづまやすしの
個人セッション: http://bit.ly/2b8aThM
セミナー: http://bit.ly/nvKmNj
メールマガジン: http://bit.ly/mtvxYW
自習型教材: http://bit.ly/lZp3b0
]]>