私のバイオリンの絃についてですが、最近はもっぱらナイロン弦を使っていました。
ガット弦に迫る価格帯のエヴァ・ピラッツィやペーターインフェルドなども使いましたが、なんとなく味付けが濃いような気がして、結局はドミナントやインフェルドの赤に戻る、ということを繰り返していました。
ドミナントとインフェルドの赤は割と傾向が近いため、両者を繰り返し使っていると、なんともマンネリを感じてしまい、昔使ったことのある、オリーブに張り替えることにしました。
よく知られているとおり、オリーブは天然素材をベースに作られたガット弦です。
そして、現代のバイオリン弦の中で、トップクラスの・・・お値段です。
非常に高価ですが、その音量や音色は非常に豊かで、天然素材の扱いにくさに対処できれば最高の音が出るのです。
オリーブは、弦の太さ(ゲージ)にいろいろな種類がありますが、使用したのはこの標準的なゲージのものです。
バイオリン弦 オリーブ E,A,D,G線セット E線:ボール
バイオリンの弦を語る上では、よくドミナントが標準とされます。
音量や音色という言葉では、絶対的な指標で各製品を具体的に示すのは難しいので、「ドミナントと比べて○○だ」というような言い方がよくされるわけです。
演奏者が弦を選ぶときの考え方としては確かにわかりやすいです。
しかし、ナイロン弦の開発する上で目標とされている頂点はやはりオリーブです。
実際、オリーブの製作メーカーであるピラストロ社はもちろん、トマスティック社など他のメーカーもオリーブの音色を目指してバイオリン弦の開発を行っているそうです。
現代でもバイオリン製作の模範がストラディバリウスであるように、ハイテク弦が目指す姿はオリーブの音量や音色、ということなのでしょうね。
オリーブという弦ならではの音量や音色は、もちろん聴き手にも届きます。
そして、演奏者にとっても弾き心地という点で他のナイロン弦との違いがはっきりとわかります。
弓で弦を擦り、弦が生み出した振動がすべて音に変わることを感じます。
バイオリンから、散らかっていない、頼りになる響きがします。
ノイズがなく、太い音がします。そしてその音は乾いた、温かい響きです。
「乾いた、温かい響き」という言葉はうまく説明しにくいですが、無駄な着色がされていないドライな音色で、柔らかいけれども散らからずまとまった音、というイメージです。
いろいろな弦を試される方が、私の周りにもたくさんいらっしゃいます。
まずはオリーブを試されて、その響きを基準に楽器に合う弦を探すよう、勧めることが多いです。
オリーブが合わない、という楽器は今のところ経験したことがないからです。
天然素材のガット弦で注意すべき点については、別の記事で投稿したいと思います。
]]>今回の内容は、前回の「うなりと差音の共通点と違い:差音で学ぶバイオリンの重音シリーズ(1)」と、若干重複します。
前回の記事では、うなりと差音の共通点、違いを考え、そして差音が聞き取りやすい協和する重音として、短3度の重音にたどり着きました。
具体的には、以下の2つの音による短3度の重音です。
・440Hzの「ラ」・・・バイオリンのA線の開放弦の音
・528Hzの「ド」・・・バイオリンのA線のファーストポジション2の指の音
もちろん、この2つの音を重音で弾く場合には、両方A線、というわけにはいきません。
バイオリンでの演奏の際は、D線とA線を使って、4-2などの運指で演奏します。
今回の記事でも、実際に2つの音を同時に鳴らしてみましょう。
前回の記事の時と同じように、低い「ファ」の音が聞こえたことと思います。
この低い「ファ」の具体的な周波数は、528Hz-440Hz=88Hzとなります。
この88Hzの「ファ」の音は、重音の下の音である「ラ」の長3度+2オクターブ下の音になります。
つまり、短3度の重音を弾くときに聞くべき差音は、「重音の下の音を基準に、長3度と2オクターブ下がった音」ということになります。
バイオリンの演奏の時には、この「2オクターブ」というのは意識しなくてOKです。
つまり、「ラ」と「ド」の重音を弾くときは、次のように考えれば良いのです。
・今弾こうとしている「ラ」と「ド」の重音は、短3度の重音だ。
・だから、ラの長3度下の「ファ」の『低いオクターブ違い』の音が鳴るはずだ。
何オクターブ下かということが重要なのではなく、安定した差音が鳴っているということが重要なのです。
これは、「ラ」と「ド」の組み合わせに限った話ではありません。
例えば、「ミ」と「ソ」の組み合わせ(もちろんこれも短3度)においても同じ現象が起き、「ミ」の長3度下の音が鳴ります。
念のため、音のサンプルでも確認しておきましょう。
このように、演奏する重音が短3度であれば、聞き取るべき差音は「重音の下の音を基準に、長3度と2オクターブ下がった音」というのは変わらないのです。
その都度周波数の引き算をすればこのことは数学的に確認できますが、バイオリンの演奏においてはこの1行を公式だと思って覚えてしまえばよいでしょう。
最終的には響きを耳で聞くことに慣れ、頭で考えることなく正しい響きを得られるようになることが目標です。
さて、次は長3度の重音について考えていきましょう。
使うサンプルの音は、次の2つの音です。
・440Hzの「ラ」・・・バイオリンのA線の開放弦の音
・550Hzの「ド♯」・・・バイオリンのA線のファーストポジション2の指の音
これも、先ほどの短3度の重音の時と同じように、実際バイオリンで演奏する際にはD線とA線を4-2の指使いで押さえることになります。
同時に鳴らした音を、聞いてみましょう。
前回の記事から続けて読んでくださっている皆さんの中には、すでに差音を聞き取ることに十分慣れた方がいらっしゃるかもしれません。
今回のケースでは、低い「ラ」の音が差音として鳴っていることに気付きましたでしょうか。
重音として出している音とオクターブ違いの音なので、直接鳴らした「ラ」の音と、2オクターブ下の差音の「ラ」を聞き分けるには、これまでの例よりも慎重に聞く必要があると思います。
これまでと同様に差音の周波数を計算すると、
550Hz-440Hz=110Hzとなります。
この110Hzの音は、チェロの開放弦Gの1音分上がった、「ラ」の音です。
つまり、長3度の重音を演奏すると、下の音から2オクターブ下がった音が差音として鳴るわけです。
「2オクターブ」ということが重要でないのは、短3度の重音の場合と同じです。
下のほうの音、ここでは「ラ」の音と同じだが、オクターブ違いの低い音、と捉えれば良いのです。
他の長3度の組み合わせ、例えば「ド」と「ミ」などでも、同じような結果が得られます。
試しに、「ド」と「ミ」を同時に鳴らしてみましょう。
差音として低い「ド」の音が鳴っていることが確認できたことかと思います。
ここまでの内容から、長3度および短3度の重音を演奏する際に聞くべき差音をまとめておきましょう。
・長3度の重音 → 差音は下の音の2オクターブ下の音
・短3度の重音 → 差音は下の音の長3度下、さらにその2オクターブ下の音
ここからは、少々応用的な内容になりますので、難しいと感じる方は後回しにしても構いません。
唐突ですが、楽典では和声の基礎として3つの音による「三和音」が登場します。
この内、明るい響きを持つものを「長三和音」悲しげな響きを持つものが「短三和音」です。
それぞれ、以下の譜例のような音程になっています。
まず、これらのうち長三和音に着目します。
後々にバイオリンの練習方法の話に移る都合上、ここではニ長調の主和音である。
「レ」−「ファ♯」−「ラ」
を例に考えていきましょう。
この三和音は、2つの重音の組み合わせと捉える事ができます。
「レ」−「ファ♯」
※長3度の和音、バイオリンではA線とE線で、ファーストポジション3-1で演奏
と
「ファ♯」−「ラ」
※短3度の和音、バイオリンではA線とE線で、サードポジション3-1で演奏
です。
この記事の前半の内容を元に、それぞれの差音を求めてみましょう。
「レ」−「ファ♯」の差音は、下の音の2オクターブ下の音ですから、バイオリンのG開放弦から少し下がった、「レ」になります。
「ファ♯」−「ラ」の差音はいかがでしょうか。
こちらは少し難しいかもしれませんが、下の音の長3度下、そして更に2オクターブ下の音ですから、こちらも同じくバイオリンのG線開放から少し下がった「レ」になります。
つまり、長三和音をイメージした場合、その下2つの音による差音と上の2つの音による差音は、一致するのです。
今は計算によりこれを求めましたが、上の2つの音源ファイルを交互に聞けば、差音として鳴っている「レ」が同じ音程であることがわかるでしょう。
さらに付け加えれば、「レ」−「ファ♯」−「ラ」の3つの音を同時に鳴らせば、生まれた差音がお互いに響きを増し、かなり強烈に聞こえます。
次のようになります。
そして、この「共通の差音」は、ファーストポジションとサードポジションの間のポジション移動の練習に、非常に有用です。
このように、ずっと同じ差音が鳴り続けるイメージを持って、重音のポジション移動の練習をします。
当然単音のポジション移動よりも難しいですが、この練習をすることで左手の形を保ったままポジション移動をする技術を身につけることが出来ます。
テンポを早くし過ぎると、差音の鳴り方に意識を向けるのが難しくなりますので、ゆっくりのテンポで行ったり来たりのポジション移動を行いましょう。
2秒ごとにファーストポジションとサードポジションを切り替えるぐらいでちょうど良いのです。
長三和音に関する紹介を行ったので、短三和音についても同じように考えておきましょう。
こちらは、比較すると少々複雑になります。
先ほどの「ファ#」を「ファのナチュラル」に変えた、
「レ」−「ファ」−「ラ」
の例で考えていきます。
「レ」−「ファ」は短3度の重音ですから、差音はバイオリンのGの開放弦からソファミレドシ。。。と降りていった、「シ♭」になります。
一方、「ファ」−「ラ」は長三度の和音ですから、差音はバイオリンのG線開放の1音下の、「ファ」になります。
これら2つの差音、「シ♭」と「ファ」は完全五度の関係です。
なので、「レ」−「ファ」と「ファ」−「ラ」の組み合わせでポジション移動の練習をする場合、次のように差音を聞き取りながら練習することになります。
この練習は、変化する差音を聞き取りながら行う必要があるので、先ほどの長三和音の例よりも難しくなります。
長三和音でのポジション移動を、差音を聞き取りながらできるようになったあとに、こちらを取り組むべきです。
だいぶ発展的な内容も書いてしまいましたが、基本としておさえていただきたい内容を再度掲載します。
・長3度の重音 → 差音は下の音の2オクターブ下の音
・短3度の重音 → 差音は下の音の長3度下、さらにその2オクターブ下の音
これを押さえた上で、次回は6度の重音についても考えていきましょう。
次の記事へ、続きます。
第1回目は、3度、6度といった具体的な重音奏法に入る前に、まず、耳で差音を聞き取れるようになりましょう。
差音を聞き取れるようになること、これが今回のシリーズの出発点、かつ最重要なポイントです。
なぜなら、今後述べていく3度や6度の重音と発生する差音の関係を理論的に理解したり暗記することができたとしても、自身がバイオリンを演奏する中で差音を聞き取れなければ意味がないからです。
このシリーズでは、差音を理解するための音源として、バイオリンの音ではなく、正弦波と呼ばれる純粋な音でサンプルを作っています。
是非、イヤホンもしくはヘッドホンを接続して聞いてみてください。
これは、純粋な正弦波による差音が、最も耳に聞き取りやすいためです。
倍音を多く含むバイオリンの音では、サンプルの正弦波による音よりも差音の聞き取りは難しくなります。
しかし、まずは正弦波によるサンプルでどのような音が差音として発生するのかを知っておくことで、バイオリンの演奏の際に鳴るはずの差音をイメージすることができるのです。
ズルをしているように感じるかもしれませんが、バイオリンの演奏時に差音を聞き取れるようになるには、これが近道です。
正弦波のケースで差音を聞き取る練習をした後に、バイオリンの音色で重音を演奏した場合は、どんな差音の鳴り方になるのか。
このように考えていきましょう。
最近では、チューニングなどの際にA=442Hzなど高めのピッチの選択をすることも多いようですが、ここでは古くから標準とされている440HzのAを基準に進めていきます。
もちろん、ここでいうA音は、バイオリンのチューニングの際に初めに合わせるA線の音程と同じです。
正弦波の440Hzの響きは、次のようなものです。
(サイト「回路シミュレーションで分かる エレキギター電気回路と音の関係」で公開されている正弦波の音声ファイルを使用させていただきました。この場を借りて御礼申し上げます。)
正弦波の音が、より飾り気のない、素朴で純粋な音であることがわかっていただけると思います。
周波数の近い音、つまりほとんど音程の変わらない音を同時に鳴らすと、ワンワンワン・・・とうなりが発生することは、ご存じの方も多いと思います。
これは、中学校の理科でも登場する内容です。
計算式や理論も大切ですが、ここでは440Hzの音と441Hzの音を同時に鳴らし、どのような聞こえ方になるか、試してみましょう。
いかがでしょうか。
およそ1秒周期で音が大きくなったり小さくなったりすることが聞き取れたことと思います。
イメージで書くと「ワーン、ワーン、・・・」というところでしょうか。
このように、音が大きくなったり小さくなったりを繰り返すこと、もしくはその音のことを「うなり」と言います。
うなりが1秒周期で発生することは、音の周波数の差が1であることに起因しています。
441(Hz)-400(Hz)=1(Hz)
というわけです。
それでは続いて、440Hzと444Hzの音を同時に鳴らしてみましょう。
カンの鋭い方は、どのようなうなりが発生するか、想像できているかもしれません。
今度は、先ほどの例よりも細かい、1秒に4回ほどの周期の「ワンワンワンワン・・・」とうなりが聞かれたことと思います。
これは、先ほどの計算式と同じように考えると、
444(Hz)-400(Hz)=4(Hz)
であるので、1秒間に4回(これが「4Hz」です)のうなりが聴こえる、ということです。
この2つの例から、「近い周波数の音を同時に鳴らすとうなりが発生する、周波数が離れていくにつれ、うなりは細かくなっていく(うなりの周波数(Hz)は上がっていく)」ということがわかるのです。
さて、ここからが本番です。この先も音源を用意していますので、注意深く聞きながら読み進めてください。
先程は、まず440Hzと441Hzの音によるうなりを、そしてさらに、その4倍の細かさに当たる440Hzと444Hzの音によるうなりを聞いていただきました。
次は、更に4倍の細かさのうなり、つまり440Hzと456Hzの音によるうなりを聞いていただきましょう。
これは、少し不快な響きに感じられるかもしれませんので、再生する音量に注意してください。
これまでの計算と同様に考えれば、このうなりが1秒間に16回であることがわかります。
ただし、そろそろ細かすぎて、うなりの回数を数えることは難しいはずです。
さらに、2つの音の間隔を広げていきましょう。440Hzと466Hzの音を同時に鳴らしました。
これまでの計算に従えば、一秒間に26回のうなりが聞こえるはずです。
いかがでしょうか。耳の働きには個人差があるものの、おそらく1秒間に何回のうなり、という形でこれらの音を捉えることは多くの方にとって難しいのではないでしょうか。
代わりに、エアコンの室外機が揺れるような、「ブーーーー」もしくは「ボーーーー」と言った低い音が聞こえてくるのではないでしょうか。
先ほどの例との違いは次のようになります。
「456Hz-440Hz=16Hz」と「466Hz-440Hz=26Hz」
この間の20Hz程度が人間の可聴限界と言われています。
つまり、ただの音の大小の振動として捉える『うなり』と、「ブーーー」だの「ボーーー」だのといった『低い音』として捉えるかの違いは、この辺りが境目だということです。
実は、先ほど提示した466Hzの音は、A=440Hzの半音上、ラの♯(もしくはシの♭)に当たります。
もちろん、音楽的にはぶつかる音です。
混じりけの無い純粋な正弦波でぶつけたからこそ、かなり不快な響きだったのではないかと思います。
もう少しマシな組み合わせ、440Hz(ラ)と495Hz(シのナチュラル)を同時に鳴らしてみましょう。
どうでしょうか。
ラとシですから、これも音楽的にはぶつかる音ですが、半音でぶつかる先ほどの例よりも、全音でぶつかるこの例のほうがいくらかマシでしょう。
また、先ほどの例より、「ブーーー」という低音がはっきり聞こえたことと思います。
もはや、うなりとして捉えることは不可能でしょう。
この「低い音」の周波数は、
495Hz-440Hz=55Hz
となるわけです。
高い方の音をさらに半音上げてみましょう。
具体的には、440Hz(ラ)と528Hz(ドのナチュラル)です。
これは、短3度という、協和する(ハモる)音です。
なので、きっと先の2つの例よりも、ずっとすっきりとしたハーモニーになるはずです。
実際のバイオリンの楽譜でも、この音の組み合わせはよく出てきます。
予想通り、これまでの例よりもすっきりとした響きになっていると実感されたはずです。
また、耳を鍛えられた方、もしくは低音楽器の経験のある方などは「ボーーー」となっている低い音が「ファ」であることに気づいたのではないでしょうか。
「低い音」の周波数を計算してみましょう。
528Hz-440Hz=88Hzとなります。
そして、88Hzがどのような音かというと、チェロの最低音開放弦「ド」から、ド、レ、ミ、ファ、と上がってきた「ファの音です」
ここまで来ると、うなりの要素はまったく無く、2つの音の干渉から生まれる「低い」音が、十分に聞こえやすい音域となるわけです。
(チェロの音の音域は、誰だって聞き取れますよね)
この「低い音」というのが、まさに「差音」なのです。
この差音は、2つの音が綺麗にハモった時に、はっきり聞こえます。
この「綺麗にハモった時にはっきり聞こえる」というのは、以下の2つの意味があります。
(1)音程が誤っている(どちらかの音が上ずったり下がったり)と、安定した差音は響かない
(2)そもそも協和しない重音では、差音は聞き取りにくく、協和する重音では差音が聞き取りやすい
これら2点については、「そういうものだ」と覚えてしまって構いません。
ここでは理論的な分析ではなく、実際のバイオリンの練習に活用することが第一だからです。
ただ、それでは納得出来ないという方のために、簡単に理由を説明しておきます。
イメージしづらい方は、読み飛ばしてしまって構いません。
(1)について:
2つの音の音程が正しくなかったとしても、正しくないなりにその周波数の音が差音として発生します。
しかし、この場合、その差音と指で押さえている音(演奏したい重音)が協和せず、打ち消し合ってしまうのです。
逆に、2つの音による重音の音程を正しく取れば、重音と差音、3つの音が協和し、安定して響くのです。
(2)について:
これも、基本的には(1)と同じ考え方です。
重音は、その2つの音の協和度によって、重音の溶け合い具合が違います。
そして、この重音の溶け具合と、差音の聞き取りやすさは合致します。
※この理由を理解していただくのがベストなのですが、倍音列の考え方の掘り下げなど、更に難しい説明になってしまうので、やむなく割愛します。
最も溶ける重音は完全一度(同音、差がないため差音(うなり)は発生しない)
次に、完全8度(オクターブ、差音は下の音と一致)
さらには、完全4度、5度。
これらは、非常に溶け合いやすい重音です。
この次には、長短の3度、6度が続きます。
このあたりまでは、十分に協和している重音の音程だと言えます。
一方で、記事の前半の実験でも出てきた長2度や、さらに酷いものでは増1度(短2度)などは、「ぶつかる音」であり、協和度は非常に低いのです。
そのため、正弦波での実験ならともかく、バイオリンの演奏の中で差音を聞き取るのは困難です。
協和する音程、3度や6度の重音を演奏するときにこそ、この差音の考え方が役に立つのです。
また、完全5度、完全4度については2つの音が非常によく協和するので、差音の考え方を持ち出すでもなく正しい音程を判断できる方が多いです。
だいぶ長くなってしまいしたが、この章の内容を箇条書きでまとめると、以下の通りです。
(1)2つの音を鳴らした時のうなりと差音は、本質的に同じものである。2つの音が極端に近い音程であればうなりとして認識され、その周波数差が人間の可聴音域になるほど2つの音の音程が離れれば、「低い音」が発生し、これが差音の正体である。
(2)協和する音程の重音(長短の3度、6度など)では、差音が聞き取りやすく、差音はバイオリンで重音を演奏する時の有効なガイドになる。
一方でもともと協和しにくい(ぶつかる)音程の重音については、バイオリンを演奏する上では差音は聞き取りにくく、重音を演奏する上でのガイドとすることは難しい。
(やや乱暴な言い方だが、前述の3度や6度などに比べた場合、協和しない重音の音程は、多少の誤差は気にならない。)
(3)差音は、重音の音程が正確に合った時、安定して聞こえてくる。重音の音程が正確でない場合は、重音と差音が打ち消し合い、安定した響きにならない。
これら3つの内容をもとに、この先も正弦波で差音を聞き取る練習をしながら、3度や6度といったバイオリンを演奏する上で頻出する重音の練習方法を考えていきましょう。
※補足1
このシリーズでは、理解しやすくするため、また実際のバイオリンの演奏で聞き取るべき音を把握しやすくするため、2つの重音と差音という3つの音の組み合わせについて論じています。
実際には、バイオリンの音は豊かな倍音を含んでいるため、その倍音同士の差音などを考慮していくと、バイオリンにより奏でられる重音は、非常に複雑な響きであると言えます。
ただし、バイオリンが豊かな倍音を含むと言っても、倍音列のなかで最も強くなっているのは基音やそのオクターブ上の倍音であるため、重音奏法のために差音を論じるのであれば、正弦波での検討と同じく「2つの重音と差音という3つの音の組み合わせ」で考えれば良いのです。
※補足2
「差音が安定して聞こえていることが、重音の音程の正しさの判断基準」という主旨を述べてきましたが、ここでいう「正しさ」とは、2つの音程が協和するかという観点での話です。
2つの音程が正しい間隔だったとしても、実際の演奏をする際にはそれだけでなく、旋律線のなかでも適切な音程で演奏される必要が有ります。
このたび、「差音で学ぶバイオリンの重音シリーズ」というカテゴリを作成しました。
これは、バイオリンで重音を演奏できるようになるための練習方法に他なりません。
そのため、練習方法に関するカテゴリに入れてしまうべきか、迷ったところではあります。
しかしこのシリーズについては(おそらく数回で完結すると思いますが)、通して記事を読んでいただきたく、記事の並びをわかりやすくするために専用カテゴリを作ることとしました。
バイオリンの演奏技術には、基礎技術から技巧的なものまで様々なものがありますが、中でも重音奏法は基礎技術の一つでありながらも非常に難しいものとされています。
なぜなら、左手の形を正しく保たなければいけないことや、2本の弦を適切なバランスで鳴らすために右手から弓に伝える力を精密にコントロールしなければならないからです。
それに加えて、初学者においては「正しい音程を聞き取り、指の間隔を調節する必要がある」ということも、その難しさの要因になります。
このシリーズでは、この音程の聞き取り方という観点で、論を進めます。
単音による旋律の場合は、基本的には連続する音同士の音程のつながりに注意して演奏します。
もちろん、他の楽器とのアンサンブルや、バイオリンの本体の響きを感じながらという考え方もありますが、まずは、メロディラインを一本の線として捉えれば、その線に沿って音程を作っていく、ということになります。
一方、重音奏法の場合は違います。
一つの重音がずっと続く伴奏だったり、3度や6度で動く技巧的なメロディだったり、その形は様々です。
しかし、何れにしてもこれまでの「連続する音同士の音程のつながり」だけではなく、「同じタイミングで鳴っている音同士の音程」に注意を払う必要が出てきます。
これが、重音奏法の際に正しい音程を聞き取ることの難しさです。
自分が弾いている重音の音程が合っているのか?
その一つのガイドラインとして私が提唱するのが、「差音」に着目した練習方法です。
慣れるまでは、理論の理解が難しかったり、重音と差音の関係、対応を把握するのに時間がかかるかもしれません。
しかし、一度差音を聞き取ることに成功し、バイオリンで重音を練習する際に耳を傾けることを習慣づければ、無意識のうちに3度や6度など、協和的音程の重音をバシバシと当てていくことができるようになるのです。
このシリーズでは、2つの音と差音がどのように関わっているのか(差音の定義)ということから出発し、3度、6度といった代表的な重音を例に挙げ、具体的な音源を提示しながら重音の練習方法を紹介します。
最終的には有名な協奏曲である、ブラームスやシベリウスの協奏曲を譜例に重音と差音の関係を確認します。
譜例から聞き取るべき差音をパッと把握して、重音の音程の判断に活用するレベルに到達することが、このシリーズの目標です。
このたび、「譜例によるフィンガリング検討シリーズ」というカテゴリをこのブログの中に作りました。
ここでは、実際の譜例、主にオーケストラのバイオリンパートの一部分を抜粋し、その譜例を元に、フィンガリングの例と、練習時に意識すべきポイントを整理して記載していきます。
どのようなアマチュアオーケストラであっても、コンサートマスターやパートトップから、ボーイングが指示され、全員で同じボーイングによる演奏をすることになります。
ある程度のレベル以上のアマオケであれば、弓のどの位置で弾くか、跳ねるのか跳ねないのか、弓の方向け具合など、そういったことにも注意が向けられることかと思います。
ボーイングを合わせるということは、メンバーの演奏のニュアンスを揃えること、また客席から見た時のビジュアルの両面から、重要なことです。
さて、このように、右手については指示を受けることが出来ます。
しかし一方で、左手、つまりバイオリンを弾く上でのフィンガリングについては言及されないことがほとんどです。
結果として、無駄の多いフィンガリングを多用してしまう方もいらっしゃいます。
例えば、必要以上にファーストポジションに留まり続けるフィンガリングや、ハイポジションにいきなり飛びつくフィンガリングなどです。
このようなフィンガリングは、その場しのぎのフィンガリングであることが多く、バイオリンの基礎技術を身に着けていくに当たってはよくありません。
また、初級者の場合、一旦身体で覚えたフィンガリングを異なるフィンガリングに変更することはなかなか難しいのです。
反復練習で身体に覚え込ませることを否定しているわけではありません。しかし、だからこそしっかりとフィンガリングを検討してから練習にあたることが必要なのです。
楽譜の中で与えられているフレーズにもよりますが、しっかりとフィンガリングを検討した上で、繰り返しゆっくりと丁寧に練習することは、音階教本や練習曲などの基礎練と同様にバイオリンの演奏技術の底上げにつながります。
つまり、ある曲で身につけた内容が、より効果的に他の曲の演奏に活かせるというわけです。
このシリーズでは、フィンガリングを決めるのが難しい譜例、音程の取りにくい箇所の譜例を取り上げながら、フィンガリングの例を紹介していきます。
もちろんフィンガリングは個人の好みや得意不得意(ポジション移動より移弦が得意、など)もあるかとは思いますが、
「音階教本や練習曲などの基礎練と同様にバイオリンの演奏技術の底上げにつながる」
ということを意識して書いていきますので是非練習の参考にしてください。
このシリーズの記事を積み重ね、最終的には左手のためのオーケストラスタディのようなものが出来ればと考えています。
]]>3度、6度、オクターブなど、バイオリンの重音奏法にはいろいろな種類があるのですが、極度に手を拡げる10度を除けば、3度の重音が最も難しいと言えるでしょう。
この理由は
過去の記事:重音に取り組む順番(3度、6度、オクターブ・・・など)
に「指、もしくは手全体に力が入ってしまい、強ばってしまう」と書きました。
3度の重音を演奏する際に、左手に必要以上に力が入ってしまうのは、なぜでしょうか。
それは、日常生活において、「人差し指や中指を折りたたみ、薬指や小指をのばす」という指の形を作ることがほとんどないということが関係していると、私は考えています。
日常生活での経験がないにもかかわらず、3度の重音ではこのような動作を要求されるわけです。
これが、バイオリンの演奏の中でも3度の重音が難しいと言われる理由です。
そして実際の曲の演奏では、ただ押さえるだけではなく1−3と2−4の組み合わせで細かく動き回るのですから、取り組みにくいのは当然ですね。
話を日常生活の例に戻し、例えば丸いペットボトルを横から持つ時などを想像してみましょう。
五本の指の均等な力でペットボトルを持っているように思えるかもしれませんが、比較的、人差し指や中指よりも薬指や小指に軽く力を入れ、保持している場合が多いと思います。
利き手でない手のケースをイメージしたいという場合は、スマートフォンを操作するときのことを考えてみてください。
おそらく、スマートフォンを持っている手の指のうち、親指の対向で指を曲げて支えているのは薬指と小指のはずです。
これらはほんの少しの例ですが、いずれにしろバイオリンで3度の重音を弾くときの指の形は、利き手、利き手と反対の手のどちらにしても、あまり日常生活で出てこないのです。
そのため、3度の重音を弾く時に不慣れな指の形を作ることになり、手が強ばってしまうのです。
練習を重ねて手が正しい形を覚えれば、これは解決はされるのですが、ガチガチに力が入った状態を覚えては無意味、もしくは逆効果です。
そのため、重音の練習の際に左手が力み過ぎていないか、ビブラートを使って確認していきましょう。
(注意)これは、左手とその指が力んでいるとビブラートはかけられない、ということを利用した練習方法です。適切なビブラートのかけ方を習得している中級者向けの方法になります。
特に、痙攣するようなビブラートに慣れてしまっている方の場合は、まずビブラートのかけ方について検討する必要があります。
練習の仕方は、次の2つのステップの繰り返しです。
・ビブラートをかけずに3度の重音を弾いて正確にハモっていることを確認
・続いて同じ音をビブラートをかけて演奏し、指や手が力んでいないことを確認
最も単純な譜例は、このようになります。
テンポの指示はありませんが、Andanteのテンポ、四分音符=66程度でゆっくり練習してください。
もしくは、
これは、D線、A線のファーストポジションで、1−3、2−4の組み合わせで3度を取る例です。
どちらの譜例で練習した場合も、
・ハーモニーを確認
その後、
・力んでいないかの確認
という流れです。
単音で演奏する時と同じようにビブラートがかかれば、不必要な力が入っていない、という証拠です。
逆に、手が固まってビブラートがかけられないようであれば、それは力が入りすぎだということです。
ハモりを確認した音程はそのままで、「弦に指が触れる程度」を意識して弦を押さえてみましょう。
もちろん、実際には触れるだけではいけませんが、ガチガチに押さえた状態から力を抜く練習をするより、触れるぐらいの力加減からどのぐらいの力を込めればいいのかと考えた方がうまくいきます。
3度の重音によるスケールや具体的な曲の練習も重要ですが、まずはこのファーストポジションの2つのパターン(1−3と2−4)について形を整えることが基本です。
この考え方は、以前の記事と変わりません。
初めから力加減をコントロールし、適切な力で弦を押さえるというのは、3度の重音においてはとても難しいです。
このビブラートによるチェックや練習を重ね、自然かつ適切な指の形を覚えていきましょう。
私が初めてバイオリン用の、いわゆる「ハイテクケース」を目にしたのは、今から10年少し前、2004年ごろだったと記憶しています。
メーカーはBAM、色はシルバーとグレーの中間のような色で、角型のものをオーケストラのメンバーが持ってきたのです。
私も含め、みな一様に驚いていたのを記憶しています。ライフルでも入っているのか、と。
それまでは、バイオリンケースを選ぶときは「角型か、スリムな三角型かひょうたん型か」という選択肢しかなく、素材は木や発泡素材の枠を布地で覆ったものが主流だったのです。
今では「のだめカンタービレ」で有名になったイーストマンのグラスファイバーケースなど、安価なものも登場し、現在では街中で見かけるバイオリンケースのうち、半数はカーボンやグラスファイバーのケースのように思います。
カーボンケースには鮮やかな色も多いので、より目につくというのもあるかもしれませんが・・・
中でも、BAM、GEWAなどのケースは、スタイリッシュなデザインと剛健な作りを両立しています。
カーボンのケースは、しっかりした作りのものを選べば大変頑丈であり、また汚れてもキッチン用アルコールなどで簡単に拭き取ることができるというメリットもあります。
特に、私は後者のメリットが大きいと感じています。
外から帰ってきた時に、軽く拭いて部屋に置けるので、清潔感があります。
安価なイーストマンのグラスファイバーケースも手軽に購入出来るという点では良いですが、長年にわたって使用することを考えていると、中国製のイーストマンのケースより、フランスやドイツのメーカーであるBAMやGEWAのケースを選ぶべきだと考えています。
楽器にとっての家であること、またバイオリンケースの購入は一時の出費ということから、より耐久性の優れたものを選ぶのは合理的な考え方だと言えます。
BAMとGEWAを価格の観点から比べると、スリムなシェイプタイプ、オブロング(角型)に大きな違いは無いようです。(本記事執筆時点)
耐久性という点ではどちらも申し分無いですが、底面とふたの噛み合わせの精度などから、GEWAの方が作りが良く、より長く愛用できるように思います。
私自身も、GEWAの角型バイオリンケースを複数愛用しています。
角型タイプは価格が若干高いですが、いろいろな小物を入れられるので、便利です。
取り回しのしやすさや、より軽さを重視しされる方には、シェイプ型の方が良いかもしれませんね。
軽さ、耐久性を高いレベルで両立しているGEWAのカーボンケースですが、唯一の弱点があります。
それは、縦置きした時の底面にゴム足がついていない、ということです。
(ちなみに、BAMのバイオリンケースには、ゴム足が付いているモデルとそうでないモデルがあるようです。購入時には、注意が必要です!)
車移動がメインであれば、後部座席などにバイオリンケースを寝かせておくでしょうから、ゴム足がないことはあまり問題になりません。
しかし、電車で移動する時などは、肩からバイオリンケースを下ろして、床に置きたい時があります。
しっかりとストラップを握っていることが大前提ですが、こんな時にゴム足が付いていれば安心してケースを床に接地させることができます。
「ゴム足がついていない」というなんとも勿体無いGEWAのカーボンケースの弱点ですが、これは非常に簡単に、そして安価に解決することができます。
ゴム足を自分で付けてしまえばいいのです。
東急ハンズや、AMAZONの通販などで、次のようなものが売られています。
これはもともと、ドアを勢い良く開いたときに壁に傷がつかないように、壁側に貼り付けておくゴム製のクッションです。
壁につけることを想定しているため、強い粘着になっています。サイズも何種類か用意されています。
一方で、カーボンケースはツルツルとした素材ですので、この粘着テープによる取り付けは非常に相性が良いです。
(注意)GEWAのケースは一部、マットな質感の表面加工になっているものもありますので念のため注意してください。おそらくある程度の力でちゃんと粘着がつくと思いますが、私自身は試していません。前述の、汚れのふき取りや清潔感の観点からも、ツルツル素材のものをお勧めします。
自分で取り付けるだけで、GEWAのバイオリンケースがゴム足付ケースになります。
ゴム足が滑り止めや、置いたときの衝撃を少しでも和らげる効果が期待出来るので、これからケースを買う方も、すでに持っている方も是非チャレンジしてみてください。
お勧めの組み合わせ:
特に、軽いケースが必要な方には、オススメの組み合わせです。
]]>まずは本題に入る前に、どうしてバイオリンの楽譜に重音が出てくるのかということについて考えましょう。
いろいろな理由、重音の使い道がありますが、主なものとして理解しておきたいのは、次の2点です。
単音と重音では、響きの強さに大きく差が出ます。
例えば、次の譜例はブラームスのバイオリン協奏曲より第3楽章の冒頭です。
旋律のほぼ全てが3度の重音で描かれています。
確かに演奏は簡単ではありませんが、単音で上の音を弾くだけよりも、ずっと重厚で堂々とした響きになります。
オーケストラをバックに演奏するような協奏曲では、このような形は非常によく出てきます。
次の例は、シベリウスのバイオリン協奏曲より第1楽章の一部です。
ここでは6度での重音、そしてオクターブの重音が出てきます。
こちらは、伴奏パートで重音を用いる例として、ドヴォルザークの弦楽四重奏曲「アメリカ」より、第4楽章の一部です。
この譜例から先、セカンドバイオリンとヴィオラで三和音の伴奏が続きます。
ファーストバイオリンの旋律とチェロによるベースラインの間を和音で埋めるような形です。
この時、和音をつくるのはセカンドバイオリンとヴィオラの2人だけですが、セカンドバイオリンが重音を使うことで三和音が成立するのです。
これは、1パート1人で弾く室内楽に限らず、オーケストラのパート譜においても考え方は同じです。
さて、ここまでで3度、6度、オクターブの重音の例が出てきました。
演奏の中でよく出てくるのも、この3種類の重音です。
他にも、4度、5度、10度というものもありますが、
4度→出現頻度が低いので後回し
5度→基本的に一つの指で押さえるだけなので、あまり難しくない
参考:減5度のフィンガリング
10度→極端に指を拡げる難しい奏法なので、上級者以外は練習する必要がない
このような理由で、まずは3度、6度、オクターブの重音に取り組むのが良いのです。
さて、3種類の重音のうち、どれから取り組むのが良いのでしょうか。
音階教本などでは、3度の重音によるスケールが先に出てくることもありますが、まずは6度の重音から取り組むべきだと私は考えています。
なぜかというと、3種類の重音のうち、最も自然な指の形で弦を押さえることができるからです。
(ただし、これには個人差があります。人差し指や中指に比べて薬指や小指が十分に長い方の場合は、3度の重音の方が押さえやすいと感じることがあるのです。このようなケースは日本人には珍しいようですが。。。)
具体的には次のような指番号になります。
6度は、速いテンポでスケールを弾くのは非常に難しいため、初めは2つの音のハモりをよく聴きながらゆっくり練習しましょう。
初めのうちは、押さえ方のしっかりしている人差し指〜薬指までを使って練習すると良いのです。
慣れてきたら、薬指と小指による次のような重音も含めて練習しましょう。
6度の次は、オクターブの重音に取り組みましょう。
オクターブは、隣り合う2本の弦をまたがって1と4で押さえ、オクターブ違いの同音を鳴らす重音です。
オクターブの重音は、音程が合っているかどうか、とても確認しやすいです。
練習方法としては、一旦4の指で正確な音を取って、その響きに溶け込ませるように1の指を取ります。
連続したスケールの練習も良いですが、まずはファーストポジションとサードポジションでそれぞれオクターブを取る練習をし、ポジションによって人差し指と小指の感覚が変わるということを体感するのが出発点です。
教本などでは下の音から拾って練習する例もありますが、上の音を基準にして音程を取る練習をしていたほうが、実践の際に演奏しやすいです。
オクターブに限らず、他の音程の重音も同じです。
ここまでの6度の練習、オクターブの練習を通じて、2つの音が溶け合っている状態を聴くことができるようになっているかと思います。
この「重音の聴き取り方」を生かして、3度の重音に取り組みます。
3度の重音は「1−3」もしくは「2−4」の指の組み合わせで演奏します。
1の指と2の指は2本の弦のうち高い方の弦を押さえるために曲げ、指を立てて指板に下ろす必要があります。
この時、どうしても指、もしくは手全体に力が入ってしまい、強ばってしまう場合が多いのです。
これが、何種類かの重音の中でも3度の重音が難しい理由です。
調性や臨時記号によって4本の指の位置関係は変わりますが、まずは次の譜例で練習するのが良いでしょう。
これが、比較的4本の指を必要な位置に下ろしやすい形です。
この譜例を練習した後に、ファの♯を取ったり、さらにミに♭をつけるなどして、様々な指の配置を試してみるのが良いでしょう。
3度のスケールに取り組むのは、このようにファーストポジションでの3度の練習が出来てからで遅くありません。
むしろ、3度を押さえる指の形をしっかり身につけ理解した後に、スケールに取り組むべきでしょう。
今回は、6度の重音、オクターブの重音、3度の重音について練習の仕方を整理しました。
重音をバシバシ決めていくのはなかなか難しいですが、指を慣らせることを含めて、少しずつ練習していきましょう。
指の形を覚えたら、音階教本を使ってスケールの練習をしていきましょう。
お勧めは、音階練習の基本が効率よくピックアップされている、小野アンナの音階教本です。
まず、バイオリンのフィンガリングの話に入る前に、減5度とは何か、確認しておきましょう。
減五度とは、完全五度の重音の上の音を半音下げて、音同士の間隔を半音分狭くした重音のことです。
具体的には、「ド−ソ」の完全五度を基準に考えれば、ソの音を半音下げた、「ド−ソ♭」が減五度の音程です。
もちろん、「ド−ソ♭」だけでなく、「ド♯−ソ」、「レ−ラ♭」などの音程も、すべて減五度です。
ある程度バイオリンの演奏に慣れていれば、初見で演奏する場合でも減五度のフィンガリングを即座に決め、左手の置き方を決めることが出来ます。
しかし、減五度は「隣り合った弦で同じ指で押さえられそうで、実はそうではない」という理由で、慣れるまではとっさに演奏することが難しいのです。
例えば、次の譜例を見てください。
この2音は完全五度ですから、五度調弦を行っているバイオリンにおいては同じ指で簡単に押さえることになります。
A線とE線を、ファーストポジションの2の指で同時に押さえればいいわけです。
この「ド−ソ」については、次のような3重音の形で実際の楽曲にも出てきます。
ここまでの完全五度であれば、たやすく左手を指板に下ろすことができるでしょう。
しかし、次のような譜例ではどうでしょうか。
「ド」と「ソ」なので一見2の指で同時に楽に押さえられそうですが、ドに♯が付いているため、同じ指では押さえられません。
そのため、フィンガリングは次のようになります。
このように、一つ違いの指を使って演奏することになります。
この場合、「ソ」を基準に3と2の指を使う方法と、「ド♯」を基準に2の指と1の指を使う方法の2つの場合が考えられます。
前後のフレーズによってこれを使い分けます。
以下のように、どちらの音が先に登場するか、ということが判断のポイントです。
ブラームスのバイオリンソナタ第1番「雨の歌」の第一楽章に、減五度のフィンガリングの検討をする上での良い題材があります。
提示部、再現部にそれぞれ似たフレーズが出てくる、以下の部分です。
まずは提示部の方から。
この例では、先に記事に書いた「一つ違いの指」で解決します。
もともとD線のソの音はサードポジションの1の指でとって演奏しています。
そして、次にG線のド♯の音が出てくるわけで、ここは2の指で取ります。この時、1の指は次の演奏(繰り返し)に備えて押さえたままとするわけです。
一方、こちらが再現部での形です。
この例はこれまでのフィンガリングの考え方からすると、やや特殊な例になります。
ドのオクターブとなっている箇所は、大抵の場合、1の指と4の指で押さえていることと思います。
そして、オクターブのフレーズに続いて「ファ♯−ド」の形が出てきますが、バイオリンには「5の指」がないため、G線のファ♯を押さえることができません。
どう対処するかというと、1の指を一旦G線から離し、D線のファ♯を1の指で取るわけです。
通常1の指と4の指はある弦の上で4度を作りますが、1の指を下方に伸ばす(ドロップする)ことで、サードポジションの位置に手を保ちながらもファ♯の音を取る、という考え方です。
これで、一つの弦の中で減五度を取ることが出来ます。
なお、この場面においてはオクターブを1-3で取り、ファ♯をG線のサードポジションの4で取る方法もありますが、バイオリンの演奏方法としては特殊であり、指の配置としてもやりにくくなります。
さて、ここまでで減五度の2つの指使いを紹介しました。
この重音の形や連続した音符が楽譜に突然出てくると、指の置き方に迷ってしまうかもしれませんが、ぜひしっかりフィンガリングのパターンを理解して演奏時に使えるようにしておきましょう。
読者の中には、アインザッツという言葉を初めて聞くという方もいらっしゃることかと思います。
この言葉は、単に「ザッツ」と呼ばれることもあります。
このアインザッツについて簡単に説明するには、
「音の出だしを揃えるために、音をだす前に拍感を示す動作をすること」
という表現がわかりやすいでしょう。
アインザッツを声に出すならば、「いっせーのーせ!」ポン(音が出る)といったところで、この「いっせーのーせ!」が1、2、3、4のリズムにあたるはずです。
この1、2、3、4は、音を出す前の1小節前の拍にあたります。(4拍子)
音を出す前にテンポ感・拍感を共有することで、音の出だしがずれないようにしようというのが、アインザッツの考え方であり、その目的です。
広い意味では、メロディを弾きながら、あるいは長い音符を伸ばしながらのアインザッツを行う場合もあります。
これは、ゆったりした曲において停滞しがちなテンポを整えたり、長い音符の後に出てくるフレーズのリズムをはっきりと合わせるために行われるものです。
この記事では、前者の方、すなわち曲の冒頭などで音の出だしを揃える目的で行われるアインザッツについて、記述します。
室内楽、つまりカルテットなど小編成のアンサンブルにおいて、ファーストバイオリンが指揮者のように大きく弓を動かしアインザッツを出しているケースが、たまに見受けられます。
これは、ファーストバイオリンが大きく弓や身体を動かして、それに他のメンバーが合わせるという考え方によるものなのでしょう。
アマオケの合奏でも同じような状況があり、各トップの奏者がアインザッツを出し、トップ以外の奏者がそれを見てタイミングを推し量り、音を出すという形になります。
さて、一度アンサンブルの形、ファーストバイオリン、セカンドバイオリン、ビオラ、チェロによるカルテットに話を戻して考えましょう。
例えばこの、有名なアイネ・クライネ・ナハトムジークのように全員が一緒に演奏を始めるようなケースの場合、本来は全員がお互いにアインザッツを出し合い、入りのタイミングを合わせるべきなのです。
アインザッツの動きを揃えることで、当然に次の音のタイミング、ニュアンスが揃うという考え方です。
メンバーでアンザッツを出し合うとなると、大き過ぎる動きはかえって揃えにくくなります。
曲の出だしがフォルテッシモであればある程度勢いのあるアインザッツになりますが、弓を振り回す程の動きをする必要はないのです。
アインザッツは全員で出しあい、コンパクトに。 これが基本的な考え方です。
オーケストラで演奏する場合も、考え方は同じです。
トップ奏者は後ろのメンバーを見ることができないのでカルテットのケースとは事情がことなりますが、後ろのメンバーが自分より前の人(1列前、2列前ぐらいはかなりはっきりと見えるはずです)の動きをなぞることで、全体でアインザッツを共有することができるのです。
伝言ゲームのように遅れが発生してしまうのでは、と思われるかもしれません。
しかし、トップ以外の奏者も自分がアインザッツを共有するのだという意識を持っていれば、ほとんど遅延の問題は発生しないのです。
少なくとも、トップだけが大きく弓を動かし、それにを合図に他のメンバーが音を出すというやり方よりは、ずっとタイミングの揃った演奏ができるのです。
ここまでで、「アインザッツ=予備拍の共有」であること、また、アインザッツがトップ奏者だけの動作ではなく、奏者全員で行うものと書きました。
具体的には、予備拍2つ分程度をアインザッツに当てるとして、特に予備拍1拍分の動作を皆で揃えるのが良いでしょう。
バイオリン、ビオラの場合はネックの軽い上げ下げと自然な弓の動きで、チェロやコントラバスの場合は右手と弓の動きで拍感を出すように意識します。
それ以外に身体全体の動きも伴いますが、それはネックや弓の動きに追従して自然に出てくるものです。