著作権法違反の疑いのあるサイトについて、DNSブロッキングを行うことを表明した企業に対し、2018年4月25日、主婦連合会・全国地域婦人団体連絡協議会が連名で出した声明文が話題になっています。
NTTグループ「インターネット上の海賊版サイトに対するブロッキングの実施について」に対する意見書
本稿では、この声明文の末尾にある次の部分(以下、本稿では「冒頭引用部」とします)について、解説を加えたいと思います。
今後,四社が実際にブロッキングを行うこととし,さらに行った場合には,他の消費者団
体等と協力して,消費者契約法上の消費者団体訴訟を提起し,行政手続法第36条の3に基
づいて総務大臣に対し電気通信事業法上の改善命令等(電気通信事業法第29条第 1 項)
を求め,電気通信事業法違反(第179条各項)の罰則に関して刑事告発を行うことも辞し
ません。
なお、執筆者の横田明美は主婦連合会・全地婦連の関係者ではありませんし、この記事を執筆するにあたり両団体への取材等は行っておりません。あくまで、この声明文が前提としている法的仕組みについての理解をご紹介する目的で執筆しております。また、本件の前提となっているDNSブロッキングの違法性についても本稿では触れません。ここでは、横田自身がある程度専門的知見を有する話題である「違法行為が行われている(あるいは行われようとしている)ときに、消費者団体はいかなる法的手段をとることができるのか」という観点で執筆します。
それでは、冒頭引用部にある法的手段について、整理してみましょう。前提として、主婦連・全地婦連は、実際にサイトブロッキングが行われれば、それは電気通信事業法によって禁止されている行為にあたる、と理解しています。
「ブロッキング」とは,電気通信サービスの利用者に対して行われる閲覧防止措置のことであって,電気通信サービスの利用者の「通信の秘密」(憲法第21条第2項、電気通信事業法第4条第1項)を侵害するもの
なお、電気通信事業法第4条は、次の通りです。
電気通信事業法
第4条第1項 電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない。
第2項 電気通信事業に従事する者は、在職中電気通信事業者の取扱中に係る通信に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない。その職を退いた後においても、同様とする。
そのような理解を前提に、主婦連・全地婦連が冒頭引用部で示した法的手段は次の通りです。
1.消費者団体訴訟(消費者契約法12条以下)
2.処分等の求め(行政手続法36条の3)
3.刑事告発(刑事訴訟法239条)
以下では、このうち1と2について解説したいと思います。
消費者団体訴訟とは、内閣総理大臣の認定を受けた消費者団体が、消費者に代わって事業者等に訴訟を提起することができるという制度です。
消費者庁 消費者団体訴訟制度とは
何でもかんでも提訴できるというわけではなく、現在では「適格消費者団体による差止請求」と、「特定適格消費者団体による被害回復」があります。おそらく本件で検討されているのは前者の差止請求であると考えられます。
適格消費者団体による差止請求(消費者契約法12条)とは、事業者が消費者契約法等によって規定されている、「不当な勧誘」、「不当な契約条項」、「不当な表示」を行おうとしているときに、それを差し止めることを求める裁判を起こすことです。
今回は、行政法規である電気通信事業法違反の行為を消費者との契約において行おうとしているということですから、消費者契約法10条の不当条項規制を経由したかたちでの差止請求、ということになるでしょうか(ここは、本当に本件において差止請求の可能性があるかどうかについて議論がありえます。実際の約款がどうなっているのか等、具体的な事情がわからないので、ここまでにしておきます)。
なお、主婦連・全地婦連自身はこの「適格消費者団体」の認定を受けている団体ではないようです。ですので、冒頭引用部においても、「他の消費者団体等と協力して」という書き方になっていますね。
次に、行政手続法36条の3の「処分等の求め」についてみていきましょう。
行政手続法
第三十六条の三
第1項 何人も、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分又は行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)がされていないと思料するときは、当該処分をする権限を有する行政庁又は当該行政指導をする権限を有する行政機関に対し、その旨を申し出て、当該処分又は行政指導をすることを求めることができる。
第2項 前項の申出は、次に掲げる事項を記載した申出書を提出してしなければならない。
一 申出をする者の氏名又は名称及び住所又は居所
二 法令に違反する事実の内容
三 当該処分又は行政指導の内容
四 当該処分又は行政指導の根拠となる法令の条項
五 当該処分又は行政指導がされるべきであると思料する理由
六 その他参考となる事項
第3項 当該行政庁又は行政機関は、第一項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、その結果に基づき必要があると認めるときは、当該処分又は行政指導をしなければならない。
この規定は2014年に導入されたばかりの規定です。行政事件訴訟法2004年改正で導入された義務付け訴訟を、訴訟以前の行政過程にも導入するという機運が高まりました。そこで、(申請権を前提とせずに)行政権限の発動を求める非申請型義務付けにあたる部分については、行政手続法に規定を追加することで対応することにしたのです。
「処分等の求め」となっていると、「等」の内容が気になると思います。これは、法定行政指導を含むということです。第1項の「行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)」という部分ですね。つまり、行政指導は一般論としては組織規範だけでもできますが、ここでいう「求め」をするには、法律上その根拠が明示されていることまで必要である、ということです。ですので、行政処分(これはどのみち法的根拠が必要)にせよ、行政指導にせよ、法的根拠のある(ある程度「重たい」)ものだけが対象になっています。
それでは、誰が申出をすることができるのでしょうか。36条の3第1項にあるとおり、「何人も」とありますので、この申出をするにあたっては具体的に損害発生があったかどうかや、自分の権利が侵害されているかどうかは前提とされていません。その意味では、消費者団体はもちろんのこと、誰でも申出をすることができます。
ただ、「法令に違反する事実がある場合」という要件がありますから、単に法令違反のおそれがある、という段階では足りず、実際に法令違反の事実が確認出来ていることが必要になります。そのため、第2項では、その理由をきちんと添えて申し出ることが求められているというわけです。
また、第3項に基づき申出を受けた行政機関は必要な調査を行いますが、刑事告発等とは異なり、この申出を行った人にその結果を通知する義務(応答義務)はない、と整理されています。そのため、申出を受けた行政機関が何もしなかったとしても、そこまで・・・ということになります。「申出をしたのに断られたので申請型義務付け訴訟だ!」という訳にはいかない、ということです。もし、さらに訴訟提起をしたいのであれば非申請型義務付け訴訟(行政事件訴訟法3条6項1号、37条の2)となりますが、そちらは自己の法律上の利益が侵害されていることも訴訟要件となります(いわゆる原告適格論)し、他の要件も厳しいです。
今後、主婦連・全地婦連がどのような交渉を行うかは状況が不安定な現状ではよくわかりません。ただ、今回紹介した制度はいずれも比較的新しい制度です。消費者利益は薄く広く多くの人の利益です。その救済を求める場面が限られており、消費者団体の活躍に期待したいところです。
なお、横田自身は集団的利益・拡散的利益に関する研究を行っております。また、本稿の後半に関連する論文として、横田明美「個人情報の性質に応じた保護と本人による「関与」──自己情報コントロール権の議論を踏まえて──」現代消費者法35巻39-46頁があります(特に45頁は、実体法部分は個人情報保護法ですが、今回の内容に近い事を書いています)。あわせてご覧ください。
また、今回、領域を横断する事象を、なるべく丁寧に平易に書いたつもりですが、誤解があるかもしれません。誤りは全て横田に帰属します。ぜひ、そのような点を見つけた人はTwitterなどでお知らせください。(コメント欄は承認制なので、やや反応が遅くなります。ご容赦ください。)
法経学部・法政経学部の講義「環境法」では、2013年の着任以来、従来の法学教育ではできなかったことをやってみようとチャレンジをしてきました。
それは「大教室講義でもアウトプットを重視する」ということです。
毎回のコメントシートで自分の考えを外に出すための訓練をし、第14回(最終回の1個前)ではディスカッションと即興ディベートを行う・・・
これらは、横田自身がサークル(東大ESS)で身につけたディスカッションとディベート、即興スピーチの知見を元に作ったものです。
この度、この4年間の試行錯誤について、学内のFD(ファカルティ・ディベロップメント。教育方法を検討する研修)でお話しする機会がありましたので、公開可能な範囲でスライドを公開します。
大まかな目次は次の通りです。
• Ⅰ 講義設計の背景
– 法学系教育の現状と課題
– 「環境法」という科目の特殊性と立ち位置
• Ⅱ 講義の内容
– 学生への告知と段階的な受容へ
– コメントシートの狙いと実施方法
– ディベートの狙いと実施方法
• Ⅲ まとめ – 学生の反応と雑感
ぜひ感想を聞かせてください。
2016年11月12日と13日、情報ネットワーク法学会第16回研究大会が行われました。
そして、初日最後の分科会である第9分科会にて、報告を行いました。他の登壇者はつぎのとおりです(プログラムから引用)。
第9分科会 11月12日(土)17:35-19:05 会場D
【AI・ロボット法の消費者問題】
主査:和知雅樹(情報ネットワーク法学会 副理事長)
新保史生 (慶応義塾大学教授)
木村嘉子(東京都消費生活総合センター相談員、NACS東日本支部 ICT活用研究会代表)
横田明美(千葉大学准教授)
大変盛況でして、50部用意した配付資料(スライドを印刷したもの)はすぐになくなってしまいました。そこで、多数お問い合わせをいただいていることから、スライドに修正・追加をいれたものを公開します。
こちらへのお問い合わせは、本ウェブサイトのメールフォームほか、適宜の手段でお知らせください。まだ生煮えの箇所も多く、皆様のコメントを受けて、より良いモノにしていきたいと考えています。よくわからない、ということも含めて教えてくだされば幸いです。
スライド内にもありますとおり、今回の報告は、科研費のテーマである「集合的利益・拡散的利益を巡る法制度設計―消費者・環境・情報法制の架橋」の一部です。ちょうど、消費者法・環境法・情報法の間に、ロボット・AIという問題がぴったりとはまっているので、今後の研究の柱としていく予定です。
なお、もう一つ、ぴったりはまっているのがドイツにおけるデータ保護団体訴訟でして、こちらについても昨年の個別報告に引き続き検討を続けています。
情報ネットワーク法学会は、若手の報告も活発であり、あまりに報告が多すぎて学会誌を分冊にしなければならないほど盛況です。他方、分冊にしたこともあって出費も膨らんでおり、学会運営が大変だとも。もし、ご興味をもってくださった方がいらっしゃれば、是非、入会をご検討ください。こちらについてのお問い合わせやご相談も、遠慮無くどうぞ。
情報ネットワーク法学会
次の研究大会は名古屋大学だそうです(日程未定)。それ以外にも各種研究会もあります。ぜひご参加いただき、熱気を感じていただければ幸いです。
きたる11月16日(月)、環境法政策学会のイベント「理論と実務の架橋―産廃処理施設の取消訴訟の原告適格」に、研究者会員代表として登壇いたします。
このイベントは、「法科大学院修了生及び司法修習予定者等と、学会員が、環境法に関わる問題の実態や重要性をともに認識し、具体的な課題について検討する場」として一昨年から開催されているイベントで、第1回も第2回も参加いたしました。
第1回に参加したときの当ブログ記事はこちら
原子力損害賠償(第1回)、厚木基地差止訴訟(第2回)ときて、今度は産廃処理施設取消訴訟の原告適格です。昨年の重要最高裁判決である、最判平成26・7・29(民集68巻6号620頁、判タ 1409号114頁、判時 2246号10頁)が評釈の対象となっています。
詳しい内容は環境法政策学会のウェブサイトトップページからリンクの貼ってある本イベントチラシ用pdfをご覧いただきたいのですが、pdfが見にくい方もいらっしゃるでしょうし、せっかくなのでプログラムの部分だけ貼り付けます。
参加希望者は11月9日までに事務局宛にメールいただきたいということなので、ご関心のある方はぜひいらしてください。
本学会の会員だけでなく、法科大学院修了生・在学生は無料です。それ以外の方も資料代1000円をお支払いいただければご参加いただけます。
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◆プログラム◆
主催者代表挨拶(18:30~18:35) 高橋 滋(環境法政策学会理事長/一橋大学教授)
全体司会 大塚 直(環境法政策学会事務局長/早稲田大学教授)
第1部 報 告(18:35~19:45)
報告1-訴訟に関わった実務家による論点報告(18:35~19:05)黒原智宏(弁護士)
報告2-法科大学院生によるミニ報告(19:05~19:25)澤田雅之(一橋大学法科大学院)
報告3-研究者からの報告(19:25~19:45)横田明美(千葉大学准教授)
休憩、質問票回収(19:45~20:00)
第2部 パネルディスカッション・質疑応答、鼎談(20:00~21:30)
司会 柳 憲一郎(明治大学教授)
パネリスト
亘理 格(中央大学教授)/黒原智宏(弁護士)
横田明美(千葉大学准教授)/澤田雅之(一橋大学法科大学院)
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さて、この報告順と、メンバーが大変すごいことになっています。
訴訟の原告代理人がトップバッターで、その後に現役の法科大学院生である澤田さん、そしてその後に私!
しかも、そのあとのパネルでは栁先生と亘理先生の胸を借りるという。
黒原弁護士は行政判例研究会の会員でもあり、行政法の判例に大変強い方です。(というか、行判のメンバー同士で同じ判決コメントするのってなかなかないなあ。)
第1回、第2回と観客席に座っていたわけですが、実際に訴訟を担当した弁護士と研究者が公開の場で議論するというのは大変貴重な機会です。
その議論の場に、法科大学院生にも入っていただくわけです。
これは、学術的な意味ももちろん大きいのですけれども、ロースクール制度出身である私がちゃんと「研究者」としての報告ができるかという場面でもありまして、大変緊張しております。8~9年前にはロースクールにいたんですよね私・・・(あれ、もう終了してから7年も経っているのですねえ)。
学術的に意味のある報告であるだけでなく、環境法政策に関与することの面白みを参加者にもわかっていただけるような、そんな報告を目指して準備中です。
ぜひ、ご関心とお時間のある方は足をお運びください。
参加申込みは、こちらのpdf記載の事務局宛にお願いします。
本イベントチラシ用pdf
「学生が政策提言と法律案策定をするゼミを運営しているんだけど、何か良い入門書はありませんか」と、ある先輩からお問い合わせを受けた。少ない経験ながら、私の研究室にある本の中からご紹介することにしたい。結論から言えば、「(1)がお勧め、足りなければ(2)も。(3)はゼミ共通の参考書として手元にあると便利かもしれません。」という回答になる。
私が勤務している千葉大学法政経学部では、まさに「政策から法案をつくってみる」講義がある。その授業担当者による教科書である(つまり同僚の本)。
倉阪先生ご自身が11年間環境庁に勤務されていた経験(ご自身のウェブサイトによれば、「環境庁では、環境基本法と環境影響評価法の制定作業、温暖化、リサイクル、企業の環境対策、LCAなどの新規施策の立ち上げ時期の作業に携わりました」とある)を活かして、この本では単なる合意形成過程の議論だけでなく、政策立案と立法草案策定過程についても言及されている。とりわけ、環境法関連の法律をどう立ち上げていったのかという視点で書かれた部分は、これから政策提言をしようとする学生にとってはドキュメンタリーでもあり、見習うべき先例といえるだろう。
そのため、冒頭の質問に「1冊だけ、学生が買える値段」という縛りがついていて、かつ作るものが『法律』を想定しているのであれば、この本が一番マッチしている。
この講義の現在の位置づけは「政策学の入門科目」として1年生配当科目であり、(法政経学部が立ち上がったばかりということもあって)FDの観点から講義を聴講した。なんと「その場」である最近はやりのガジェットに関する法案をライブで作成するという講義であった。これは中間レポートの予告・実演であり、法学にも経済学にも政治・政策学にもあまりまだなじんでいない学生が、必死に中間レポート課題として法案を作成しているところを拝見して興味深かった。
なお、倉阪先生ご自身の研究領域は環境経済学・環境政策学であり、学術的な意味では法学との関連は薄い。そのため、本書も法令用語の取扱いや法学的な位置づけについては基本的なことは触れてあるもののあまり多くの頁を割いておらず、参考文献に委ねている。本学学生向けに、「続きは行政法と環境法でやるよー」と宣伝させていただきたいところ。
目次は勁草書房のウェブサイトに詳しく掲載されている。
もし、「法律案じゃなくて、条例案についてお願いします、できれば1冊で済むものを」ということであればこちら。
想定読者は地方公務員で、「法規担当」という例規審査を取り扱う部署に配属された新人をイメージしていると思われる。この本の良い点は、条文の構造や例規の構造というだけでなく、どのような目的の規定があるのかをわりと詳細に紹介したうえでそのポイントを示している点だろう。
また、審査しただけでは終わらず、議会対応や、法律相談・訴訟対応、さらには法規担当者の仕事術という章まである。具体的に条例をつくり、運用し、そしてそれらの相談窓口となる法規担当者の苦労ややりがいも感じさせる内容になっている。この本を知ったきっかけは、まさにそういう法規担当者のコミュニティからである。情報提供多謝。
章立てがわかる、出版社・学陽書房での紹介頁はこちら。
なお、この本の著者の一人は行政法入門としても興味深い本も上梓している。それが吉田利宏・塩浜克也 『法実務からみた行政法 エッセイで解説する国法・自治体法』日本評論社、2014である。こちらは非常に読みやすいので、条例に興味がある学生全般にお勧め。
この目次は必見だと思う。日本評論社のサイトはこちら。
第1章第2節 「ユニーク条例」の法的「適格性」~「朝ごはん条例」って何だ~とかね。
法令自体について詳しくない学生への参考書としては、こちらの本を薦めたい。法情報学の基本となる部分に加えて、規定の読み方や、規定作りの失敗談なども交えた教科書とエッセイの中間のような本である。学生単独でも読みこなせるだろう。サブタイトルのとおり、使い方や調べ方に重点が置かれているが、「法令の形式」、「法文の技術」、「規定の流儀」という節タイトルからもわかるように、かなりみっちりと説明がされている。しかも作る人目線の著者(吉田利宏氏は衆議院法制局出身者)と調べることを教えるプロ目線の著者(いしかわまりこ氏は法情報学の専門家)ということで、バランスのいい構成になっている。
この本の部構成について出版社・日本評論社のサイトを参照されたい。
こういう内容は私自身の経歴では「立法学」という講義がロースクールでは開講されており、そこでは衆議院・参議院法制局からの講師を招いて講義がされていた。なので、かっちりとした教科書を求めるのであれば、それをキーワードに探すことも検討していただきたい。内閣法制局や衆議院・参議院法制局経験者の著作もあれば、公法学による著作もある。
ただ、先輩の依頼としては政策系ゼミにおける立法立案パートの『入門書』ということだったので、今回は割愛。
それにしても、「今日はゼミの先輩の本を参考書にしてディベートやったぞーそろそろakmykt.netのネタも投下したいし、書くかなあ」と思ってたら、当該先輩からの依頼でネタになるという事態にちょっとびっくりしている。そもそもディベートの話できるのも、サークルでやってたからだしなあ・・・(なお、倉阪先生はこのサークルの先輩だときいて着任後大変おどろいた)。ということで、どこで何があるかわからないので、学生には講義も課外活動もゼミも楽しんで血肉にしていただきたい。
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なお、私自身は日本公法学会の会員ですが、理事等ではありません。掲載がもし問題があるようでしたら削除いたしますので、ご連絡くださりますようお願いいたします。
久々に訴訟がクローズアップされており、非常に楽しみです(第一部会と第二部会、ぜんぶ聞きたいけど体はひとつしかない・・・)
中央大学多摩キャンパス八号館、九号館クレセントホール
テーマ:「司法制度改革後の公法判例と公法学説」
市川正人(立命館大学)「憲法判例の展開―司法制度改革以降を中心に」
村上裕章(九州大学)「司法制度改革後における行政法判例の展開」
小山剛(慶應義塾大学)「憲法判例の現状と憲法学説の課題」
常岡孝好(学習院大学)「司法制度改革後の行政法学説の課題」
(ここについては法律時報に掲載がないので、web転載は控えさせていただきます。今年は3セッションで全部で9名の報告者がいるようです)
蟻川恒正(日本大学)「不起立訴訟と憲法十二条」
―コメント 市川須美子(獨協大学)
大石和彦(筑波大学)「婚外子法定相続分規定違憲決定(最大決平成25年9月4日・民集67巻6号1320頁)」
徳本広孝(首都大学東京)「地方公共団体の規律維持と債権放棄議決の意義」
豊島明子(南山大学)「老齢加算訴訟―生存権の具体的実現に係る裁量統制の課題」
―コメント 西村枝美(関西大学)
仲野武志(京都大学)「行政事件における訴訟要件の意義」
ーコメント 菅原真(名古屋市立大学)
深澤龍一郎(九州大学)「行政事件訴訟における判断過程の統制―その基礎的考察―」
宮地基(明治学院大学)「立法裁量統制と憲法適合的解釈の意義と限界」
巻美矢紀(千葉大学)「判決の効力」
―コメント 大貫裕之(中央大学)
当日頒布される『公法研究』76号に、拙稿が公募論文として掲載されます。これは、昨年の公法学会で、公募セッション報告として報告したものをもとに投稿したものです。
初めて査読を受けましてヒヤヒヤしておりましたが、無事掲載されることとなり、とても嬉しいです。
今日更新しましたとおり、これにて、博士論文の連載6回分と、スピンオフである基準時論について、一通りの公表を行ったことになります。
詳細は研究業績・遂行課題をご覧ください。
この後、北大や関西方面、そして東大で、報告をさせていただく予定です。ご批判・ご感想等ございましたら、ご指導いただければ幸いに存じます。
それでは学会会場にてお会いしましょう。

千葉大学付属図書館・アカデミックリンクセンターでは、毎週火曜日と金曜日の12時10分から、図書館一階の階段状のプレゼンテーションスペースを使って、「1210あかりんアワー」というイベントを行っています。去る5月13日に、「教員が研究の楽しさを語る 第65回 行政訴訟ってなんだろう-市民・行政・司法の関係を探る」という題目で、30分のプレゼンを行いました。ご来場いただいた皆様ありがとうございました。(立ち見まで出て、びっくりしました。)
実は、この30分プレゼンは、研究の楽しさを伝えるために、研究のきっかけから博士論文の内容までを概観するという内容になっております。詳しくはスライドを見てください。拙稿についての図解もありますし、行政法初心者にもとっつきやすい内容になるよう、工夫したつもりです。
途中で2面関係・3面関係についての板書をしたかったんですが、ホワイトボードだと見えないかもしれない…どうしたものかと思っていたところ、妙案を思いつきました。

書画カメラとnu board の組合わせです。これで、パソコンと書画カメラを切り替えつつ、お客様には画面だけ見てもらうということが可能となっております。
当日はブックガイドも配布しました。あかりんアワーのサイトからダウンロードすることができます。
ブックガイドにはコメントをそえてあります
せっかくなので、amazonのリンクも付けて転載しておきます。
行政法を初めて学ぶ前(prep)に見取り図を示す本。
「『中学校そばに喫茶店をつくりたい!』という経営者と『生徒に悪影響!』と反対するPTAの板挟みになったら、行政は食品衛生法の許可を出すべきか?」などと、身近な例から行政法の広がりを感じることができる。
30年間原発を止めるために戦ってきた弁護士による本。岩波新書という一般向けカテゴリーにありながら、福島第一原発事故後の状況も踏まえた問題点を指摘し、詳細なデータもついている。各判決がもたらした特徴的判示に触れつつ、「司法の失敗」を明らかにしようとする。
障害者の介護保障訴訟を手がける弁護士による本。障害者を巡る法制度の変化や、訴訟の経緯を詳しく解説している。「好きな時間に水を飲む」「おむつをはかずにトイレに行く」そんな当たり前の暮らしを支える支援がなされないとき、どうするのか。行政訴訟が具体的な人々にどのような苦難と変化をもたらすのかがよくわかる一冊。
自治体職員がどのような場面で行政訴訟に携わるのか?東京都の23区(特別区)で実際の訴訟担当者が、区が原告・被告になった訴訟(行政事件訴訟だけでなく、民事訴訟や住民訴訟も含む)について、事件の内容や裁判所の判断などをコンパクトに紹介した訴訟事例集。行政側の実際の悩みが透けて見える点が興味深い。
後期ももう始まっているようです。過去の動画は図書館貸し出しのiPadで見ることができますし、非常に面白い企画です。千葉大(及びお近く)の皆様、ぜひアクセスしてみてください。
1210あかりんアワー|学ぶ|千葉大学アカデミック・リンク・センター
ほかにもいろんな企画があります
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2013年度冬学期に担当した「総合政策入門」の成績評価は、「興味のある分野について中間レポートと期末レポートを提出せよ」という課題でした。私も、公法入門というタイトルで1回担当しました。総合政策学科の教員が代わる代わる講義をするオムニバス授業といわれるこのような形態で、しかも担当した教員の専門もばらばら(それだけ多様な専門知に触れていただくのが狙いです)。
教員一年目にして初めてのレポート採点。そして、おそらくは学生にとっても初めてのレポート。実にいろいろなタイプのレポートを拝読したので、ここで講評をさせていただきたいと思います。(関連する掲示を、後日法経学部の掲示板にも行います)
【追記:剽窃と不適切な引用についての区別等、不適切な箇所がありました(厳密に言えば剽窃は著作権法の問題というより倫理の問題です)ので、追記をしました。<【 】部分は2014年3月13日16:29挿入>としてあります。連続ツイート #著作権法と剽窃 にて ご指摘いただいた ronnor(@ahowota) さん、ありがとうございました。】
レポート課題とは何を目的にして出題されるのか。このことについては、実は私が「ぱうぜ」名義で連載している「ぱうぜセンセのコメントボックス」にて、一度書いたことがあります。
その「問い」は何のため?レポート課題の目的とは
レポート課題を出す目的についても触れました
この連載では、法学に限らず、大学教員としての気づきを親しみやすい口調でまとめたものですが、本質的なところを述べたつもりです。
つまり、レポートとは、「論文」の練習であるということ。そして、その内容は「問い」を作り出すためのステップであるということ、です。(前掲リンク先にて戸田山和久『新版 論文の教室 レポートから卒論まで』NHKブックス、2012年を引用しつつ説明しましたので、ご参照ください。なお、「レポート」という言い方で「調べ物」を課題として出す場合もありますが、ここではそうではないものを指します)
ぱうぜセンセの発言を引用するならば、こういうことです。
問いを立てて、一応の答えを立てて、それを論理的に証拠を使って説得していくという論文執筆の各部分を、少しずつ体得させるためのもの (ぱうぜ・前掲「その問いは何のため?レポート課題の目的とは」より)
しかし、このことは、普通に説明すると、なかなか学生には伝わらないようです。今回のレポートも、オムニバス講義の限界もあり、そのことが伝わっていないと思われるレポートがかなりありました。
問いを作る、そして丁寧に論評するということをしないとどうなるか。「がんばって調べました」レポートになります。
がんばって調べました。はいそうですか…。
もちろん、リサーチ能力を、きちんと身につけたのであれば立派です。後述する引用や参照の作法がきちんとできていれば、「段階的な学び」という観点からすれば、それはそれで良いことです。しかし、問いが不明確であるレポートは、しばしば、引用・参照の作法も出来ていないことが多かったのです。
これはなぜでしょうか。実は、「がんばって調べました」レポートは、いわば学習ノート。オリジナリティや創造性という要素が、欠けているために生じる現象なのです。このことは、「なぜ論文には脚注や参考文献欄が必要なのか」ということと合わせて教えるべき、表裏一体の関係にあります。
レポートにおいて、「コピーアンドペースト(いわゆるコピペ)はダメだ」と教わるでしょう。「そのような行為は剽窃(ひょうせつ)になる」と。
それでは、なぜ剽窃はダメなのでしょうか。ものすごく細かいことをいえば【剽窃と著作権法違反の「引用」は厳密に言えば異なるのですが、ここでは説明を省略します】、【適法な引用とは何なのか、については】著作権法32条・48条にさかのぼります(詳細な説明として、近江孝治・後掲59-63頁)。<【 】部分は2014年3月13日16:29挿入>
著作権法 (法令データ検索システムの該当ページ http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S45/S45HO048.html)(なお、下線・太字による強調は引用者による。)
32条1項 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
48条1項 次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。
一 第三十二条、第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第三十三条の二第一項、第三十七条第一項、第四十二条又は第四十七条の規定により著作物を複製する場合
二 第三十四条第一項、第三十七条第三項、第三十七条の二、第三十九条第一項、第四十条第一項若しくは第二項又は第四十七条の二の規定により著作物を利用する場合
三 第三十二条の規定により著作物を複製以外の方法により利用する場合又は第三十五条、第三十六条第一項、第三十八条第一項、第四十一条若しくは第四十六条の規定により著作物を利用する場合において、その出所を明示する慣行があるとき。2項 前項の出所の明示に当たつては、これに伴い著作者名が明らかになる場合及び当該著作物が無名のものである場合を除き、当該著作物につき表示されている著作者名を示さなければならない。
3項 第四十三条の規定により著作物を翻訳し、編曲し、変形し、又は翻案して利用する場合には、前二項の規定の例により、その著作物の出所を明示しなければならない。
著作物を利用するには、著作者の許可がいる。しかし、著作権法上認められた正当な範囲であれば、利用することができる。しかし、その場合はきちんと決められたルールを守らなければならない。それが、公正な慣行に合致し、引用の目的上正当な範囲内、という形になっています。
法律上はこうなっている。しかし、何が正当な範囲で、何が公正な慣行なのか。そしてそれらが守ろうとしているものは何なのか。【また、法律に違反する・しないの問題ではないとしても、倫理上守らなければいけない規範は何なのか。】<【 】部分は2014年3月13日16:29挿入>
あえて2つにまとめます。
「先行者に敬意を十分にはらっているか」。そして、「議論の論拠を後から確かめることができるか」。この二つを満たすような脚注と引用をしなければならないのです。その具体的ありかたは、実は学術分野によっても細かいところまで見るとかなり違いがあるのですが、この二点を守ろうとしているという大枠においては、どの分野にも共通していると考えます。
具体的なやり方については、後に紹介する「論文の書き方」に関連する書籍でも、必ず参考文献の書き方について項目があります。それらの記述を見ながら、前述の二つの点が守れるような形になっているのかを、今一度確認してください。
以下では、レポートを採点しながら気がついた点を述べたいと思います。
一番多かったのはこのタイプでした。A4で3枚のレポートを、三つ以上の文献を参照して書くということになっていたのですが、すべて文末の「参考文献一覧」に述べるだけ、というものです。そうすると、どうでしょうか。
先行者への敬意は?…うーん、確かに「この本を読みました!」というところは伝わってきますから、丸写しよりはマシかもしれません。しかし、このやり方では、どこまでが本に記載された記述で、どこからがあなたの考えたことなのかがわかりません。300頁以上もある本のどこを読んで考えたことなのか。
実は、このようなスタイルは、一般のコラム等では許容されていることがあります。また、紙面に限りがある解説等でも行われることがあります。しかし、それは「論文」の下準備である「レポート」には当てはまらない理屈なのです。
上の例でも、私は「著作権法に確か規定があったけど、どういう関係で説明したらいいのかな」と考えて近江先生の本を読んだので、該当ページ数を示しています。より詳しい説明が必要であれば、ぜひ原文にあたってください、と示しているのです。なお、この本は法学系の論文の書き方について、細かいところまで含めて非常によくまとまっている本です。
分野ごとに適切な「脚注」・「参考文献」の扱い方が違います。実は、私がバックボーンにしている法学は、他の分野と比べて脚注が多い傾向にあります。たとえば、拙稿(「義務付け訴訟の機能(一)―時間の観点からみた行政と司法の役割論―」『国家学会雑誌』126巻(2013年)9・10号1-65(5)頁)から引用すると、こんな具合です(引用にあたり、脚注番号を変更した)。
第二の問題は、従来別個のものとして議論されてきた取消訴訟と義務付け訴訟を結びつけたために、違法性判断の基準時について不整合な状況が生じていることである。これまで、取消訴訟において行政処分の違法性を判断するために基準となる法状態・事実状態は処分時のものであるとする処分時説が取られている[i]。これに対し、義務付け訴訟については、事実審の口頭弁論終結時、いわゆる判決時の法状態・事実状態にしたがって判断することが相当であるとされている。判決時になる理由としては、行訴法三七条の二第五項及び三七条の三第五項の要件が、義務付け判決の要件とされていることから、遅くとも事実審の口頭弁論終結の時点において、行訴法三七条の二第五項及び三七条の三第五項の要件を具備した状態であると認められる必要があると説明される[ii]。この点は義務付け訴訟を給付訴訟であるとする論者も「民事訴訟の原則に従い、口頭弁論終結時」[iii]であるとして、形成訴訟であると見る論者と結論において一致している[iv]。
一段落の中に脚注がたくさんありますが、これは学説の対立軸を示そうとする場合は仕方の無いことですね。それぞれの説を誰が言っているのか、そしてどういう議論状況にあるのかを整理したというわけです。なので、これらはむやみに付けたというわけではなく、必要な注ということになります。「調べました」レポートであっても、必要な注がきちんとついていればまだ良かったんですが、さすがにそのようなものは少なかったです。
最後に、これは法学系あるあるなのかもしれませんが、判例評釈の取扱い、初心者には非常に難しいです。判例評釈とは、裁判所が出した判例を、研究者や実務家が解説・評論・批評した文書一般のことをいいます。特に、著名かつ重要な判例を分野ごとに集め、原則見開き2頁に収めた有斐閣の「判例百選」シリーズが有名です。問題は、この判例百選シリーズを引用する場合です。判例百選シリーズは、『ジュリスト』という雑誌の別冊という扱いで発行されていますが、それぞれに編者がいます。そして、各判例について解説・批評する筆者が記事ごとにいます。また、判例評釈は独自のタイトルを付けず、あるいは付けていても「判批」というタイトルでまとめられる慣行もあります。…以上のような知識を基に、先ほどの引用文中にあった判例(最判昭和二七年一月二五日民集六巻一号二二頁)について解説された部分を、行政法の判例百選のうち一番新しいものから参照したい場合、こうなります。
最も細かいやり方:多賀谷一照「違法判断の基準時」宇賀克也・交告尚史・山本隆司(編)『行政判例百選Ⅱ(第6版)(別冊ジュリスト212号)』有斐閣、2012年、420-421頁
判例評釈限定の省略の仕方:多賀谷一照「判批」宇賀克也・交告尚史・山本隆司(編)『行政判例百選Ⅱ(第6版)(別冊ジュリスト212号)』有斐閣、2012年、420-421頁
判例百選シリーズ(あまりに有名)なので場合によっては許容されうる(凡例等で注記が必要)省略の仕方:多賀谷一照『行政判例百選Ⅱ(第6版)』2012年、420-421頁
この例だと、多賀谷一照先生(百選では執筆者名が各記事のタイトルそば(横書き)や、文末(旧版の縦書きのもの)に書いてあります)が執筆された2頁見開きの記事なのです。
判例百選シリーズの基本的なスタイルは、前半に「事実の概要」と「判旨」という判例の要約(要約は筆者が行います)があり、途中から解説が始まり(文中に( )で注がつきます)、最後に簡略形での参考文献一覧がつくというものです。ちょっと変わっていますが、法律を勉強する人間からすると、当たり前すぎて、説明しないままになってしまうことも多いのです。
そのため、一年生のレポートでは、編者を著者と取り違えたり(上記の例だと宇賀先生、交告先生、山本先生が書いたのだと勘違いする)、要約にすぎない部分を判例そのものだと勘違いしてしまうというものが多数ありました。正しい形で用いることができたレポートは一通もありませんでした。
また、版を落としてしまったものもあります。これだと途中で内容(場合によっては担当者も)が変わっていることがありますので、対応しないことになってしまいます。
これらは、文献についての読み方の問題なので、指導が行き届かなかったということでこちらの責任でもあるので、周知を図りたいと思います。
最後に、「調べましたレポート」の問題をもう一度だけコメントしたいと思います。
レポート課題は、知の世界に自ら立つための練習です。
「答えるに値する」問いをたて、それに応答する形でレポートを組み立てる。そのために、いろいろ調べて、先行者がどこまで明らかにしているのかを示して、そこに少しでも何かを継ぎ足そうとする練習です。
レポートにせよ、論文にせよ、オリジナリティのあるものは、「先行者に全く頼らない」ものでもなければ、「先行者をまとめただけ」のものでもないのです。その間のどこかにあることが多いです。
「調べましたレポート」しか書けないのでは、そのような知のフィールドには立てないのです。なぜか。まとめ方に対する観点が違ってくるからです。
「問い」を持って先行文献を探したものは、どうしてその文献のその箇所を選択したのか、取捨選択の基準自体にも創造性が含まれます。
これに対し、「問い」を意識しないでただまとめたものは、背骨がありません。どのような観点で取捨選択したのかも見えにくくなっているのです。
取捨選択自体にも、先行者の業績に対するあなたの視点が入るものなのです。
そして、そうであるからこそ、取捨選択の作業自体があとから検証可能でなければなりません。
辛口とか厳しいとか、学生諸君に言われることもありますが、訓練で死ぬのはリスクが限定されているわけで、本番で死なないようにするためですよ。確か、パイナップルアーミーで、「今のでは、三回死んでいるぞ」という教練に当たる軍事顧問の言葉があった。
— 瀧本哲史bot (@ttakimoto) 2014, 3月 11
…すべてを一足飛びに身につけることはできません。練習できるうちに、訓練できるうちに、とことんやってみましょう。
戸田山和久『新版 論文の教室 レポートから卒論まで』NHKブックス、2012年
近江幸治『学術論文の作法-[付]小論文・答案の書き方』成文堂、2011年
今回、ゼミ生を募集するにあたっては、以下の観点を重視しました。
そこで、募集要項の詳細をTwitterのまとめサービスであるTogetterで記述したり(かなり臨場感のあるまとめになりました)、途中でインタビューの申出を学生から受けたときにも、Twitter上でのインタビューに応じたりしました。
興味のある学生が事前面談にやってくると、こんな課題を出しました。
今からメモの大切さや多様さについて解説した本の要約を説明します。この説明を聞いたら、「朝起きたら目の前にメモ、寝るときにもメモがある」という生活を一週間以上送ってください。その成果を選考時面接のときに一人3分プレゼンしてもらいます。
このとき使った参考書は、倉下忠憲『Evernoteとアナログノートによるハイブリッド発想術』で、第2章の内容を説明しました。
Evernoteとアナログノートによる ハイブリッド発想術 (デジタル仕事術)
この本の詳細については、以前、別名義のブログで書評を書きましたのでご覧ください。
その成果が実に多種多様でしたので、以下、ご紹介します。
一人目は、「メモを書くクセが付いていないので大変でした」と言いながらポケットサイズのメモを見せてくれました。「スマホにやる方が自分にはあってるかも」と書きながらも、「もう少し大きいのを使えば良かった」とも書いてあります。これは、倉下忠憲さんにお見せしたらすごく喜びそうなメモですね。
「真ん中に一本線を引いて、メリットとデメリットを書き出してみては。決断のときに使えますよ、ほら、ゼミ選びとか。」という何気ないすすめをしたところ、本気で他のゼミとの比較をしてくれた方もいました。
彼女は社会保障や労働問題に興味があったために、最終的には大石先生のゼミとの比較で悩んだそうです。(なお、この写真掲載には大石先生のご許可もいただいています。)
このメモを踏まえて、「大石先生のゼミのほうがテーマ的には興味が強かったが、経済学の手法による分析は自分には合わないように感じたので、法学のゼミである横田ゼミにきました」とのこと。この決断を支えるためのメモとして使ったんですね。ちなみに、何度も書き直したそうです。
もうひとり、悩みに悩んで横田ゼミにオブザーバー参加することになった彼女も、上記の「決断メモ」をつくっていただけではなく、「決断メモを書いているうちに、自分が何を大事かと思っているかが分からなくなってきたので…」と、自分が関心を有していることをすべて書きだしてみたメモをみせてくれました。
ちょっと恥ずかしがっていたけれど、とてもいいなあと思ったスケッチがありました。「これ、何?」「寄せ書きのアイデアです」ああ、そうですね、こういうの書いておかないと配置がおかしくなりますね。また、その日にやるべきことのデイリータスクリストもつくっているようですね。
アピカの「紳士なノート」A5サイズ(無地)を使い倒している彼女。むかって左は、「比較」メモですね。コンタクトを買うべきか否かとか、高額だけど便利なものってなかなか難しいですよね。向かって右側は、今すぐにやらなければいけないことは何か、を見極めるためのメモのようです。
次の彼も、かなり使い倒している感じのノートを出してくれました。まずは、私が貸し出した本についての読書ノートです。
この本の貸出については、また別の記事で紹介したいと思います。
次に見せてくれたのは、「今日一日これをやっていれば上出来、という内容を書き出したんですよ」というメモが冒頭に貼り付けられたノート。
なるほど、ついつい忘れがちな習慣を書いている、という感じですね。このノート、3週間くらい続いているようで、今の内容は結構深化・進化していました。
単なる習慣チェックだけじゃなくて、その日気づいたこともどんどん書いていますね。なお、このノートは一般的な大学ノート(B5)でした。
実に様々なメモ/ノートがあり、それを試している姿がとても楽しそうで、課題を考えた甲斐がありました。わかりやすくメモの効用についてまとめてくださっていた倉下忠憲さんにも、改めて感謝いたします。
これからの二年間、卒論執筆と進路決定に向けて、みんなでレベルアップしていこうと思います。そのひとつひとつを記録する「ぼうけんのしょ」と言ったら、言い過ぎでしょうか。(すくなくともドラクエのやり過ぎですね)
以後、こんな感じで不定期に教育や研究で試していることを書いていこうと思います。
]]>昨日(8月29日)に行われた環境法政策学会 法科大学院修了者・在学者向けシンポジウム「理論と実務の架橋―原子力損害賠償紛争の解決に向けて」 に、環境法政策学会の会員として参加しました。
環境法政策学会トップページ
シンポジウムのプログラム(PDF)
テーマは原子力損害賠償紛争について。福島県でADRの聞き取り調査のボランティアに参加した早稲田大学法科大学院修了生のミニ報告に始まり、実際に損害賠償を求める被害者とのやりとりをしている弁護士や、文部科学省原子力損害賠償紛争解決センター仲介委員を務めていらっしゃる弁護士、環境法と民法に通暁している研究者と、報告者の属性や立場も様々でした。新米会員かつ専門が行政法・行政訴訟である私にはなかなか難しい議論が多かったのですが、フロアとの質問でのやりとりや、壇上の先生同士のやりとりで、この問題の広がりと深みの一端に触れることが出来たと思います。
議論の内容を詳細にメモしたわけではないので、ここでの紹介はむしろこの試みのほうにスポットを当てたいと思います。自分がかつて法科大学院生であった頃、あるいは修了してすぐの頃を振り返ると、学者同士、弁護士同士も立場や考え方の出発点の違いによって様々な議論になるということを、書面の上では見たことがあっても、目の当たりにすることはあまりなかったように思います。
また、学会主催のシンポジウムを開催した経緯として、高橋滋(環境法政策学会理事長・一橋大学教授)先生は、「若い世代にももっとこの学会に入って欲しい」ということを述べていらっしゃいました。私も環境法の講義を持つことがきっかけで学会に加入したのですが、過日行われた年次総会では、若手の方が(環境法を専門とする院生は別として)少ないように感じました。その危機感を反映してのイベントだったようです。
新規入会についてはこちらをごらんください。
入会には会員二名の推薦が必要なのですが、この日は理事がたくさん受け入れていました。シンポジウム修了後、早速入会申請をする方の列ができていました。
また、環境法政策学会が、「法」と「政策」、両方に立脚しているのだということをひしひしと感じました。未曾有の大災害に対応するために、既存の法と法解釈で出来ることは限界があります。今回も、「損害賠償」というテーマ設定そのものにおける限界を指摘する会員もいらっしゃいました。ただ、立法に繋げるといっても、既存の枠組みでどこまでが出来て、どこから先ができないのか、あるいは、どのような観点が検討されるべきなのかを明らかにしておく必要があります。また、立法が動き出すまでの間にどんどん状況が悪化してしまうことにどのように対応するのかと言う問題もあります。過去の事象に対応するだけではなく、今目の前に生成している状況にも対応しなければならないという意味で、この学会が「法政策」学会であることを強く心に刻みました。
会終了後には特に懇親の機会はなかったのですが、残っていた早稲田大学法科大学院の修了生や出身の弁護士の先生にお話を伺うことができました。選択科目や実務応用科目についての各法科大学院の状況は様々です。私自身も東京大学法科大学院で環境法を履修していたのですが、司法試験の選択科目とはしなかったため(労働法を選びました)、環境法選択で受験する予定の法科大学院生のお話を伺う機会は滅多になく、新鮮でした。お話させていただいた皆様ありがとうございました。
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