右手の親指の横でフルートを支えることのもう一つの利点は、フルートの重心を感じ易くなることである。何度も書いたことだが、フルートを支えるということは、不動の3点ないしは4点でフルートを動かなくすることではない。フルートの重心が今どこにあって、どの方向へ動こうとしているのかを感じて、バランスを取るということが必要だ。そのためには、面で接する親指よりも、親指の側面を利用して、線に近い接し方のほうが断然有利である。試していただけただろうか?一切の、無理、無駄を省くためにこの手の形はとても重要だ。
そして、こんな持ち方をしたら、2~3オクターブ目のC(ド)やCis(ド#)の時、フルートを上手く支えられない、安定しない、回転する、フルートを落っことしてしまうと思った人。きょうはそんな人のためのTipsだ。
早いパッセージの中のCやCisなら、そんなに心配することはない。フルートの重心を感じて、柔らかく力を抜いて持っているなら、そのままの運指で苦労はしないはずだ。左手の人差し指でフルートを唇にぎゅっと押し付けていたら少々苦労はするかもしれない。その時点で、もうフルートの重心は感じられていないはずだからだ。そして、ある程度の長さのあるCやCisだったら、親指でH(B)キイのポストを支えてやれば良い。

CやCisのとき
この赤丸の部分を左手の親指で支えると良い

こんな感じ・・・
余談になるが、このポストを支える持ち方で、Cis(2オクターブ目)のロングトーンをやってみると良い。Cisはフルートの管が一番短い状態なので、息がしっかり腹で支えられていないと不安定な音しか出ない。音程が上ずり、ひゃーって音が出てしまう。心当たりがあればチャレンジしてみてくれ。3オクターブ目のCisはこれよりもさらに難しい。唇の力が抜けていないと響きが失われてしまうし、息のスピードが上がらないと音程が下がってしまう。3オクターブ目のCisをpppで吹けたら、上級の技量を持っていると言えるだろう。
さらに、この時、左手の人差し指の第2関節と第3関節の間をフルートから離してみよう。これができれば、フルートを唇に押し付けていない状態がわかるはずだ。この人差し指をフルートから離す奏法は、GやGisでもできるので、曲の中で長めのGやGisが出てきたらゆっくりやってみると、その後のパッセージを豊かな音で響かせることができるだろう。

GやGisのとき、手首の力を抜き、柔らかくして、やや小指方向に回転させ、人差し指とフルートを離してみる。ほんの1mm程度で充分だ。
きょうはここまでだ。 ・・・・暑いよ
訂正:前回の記事中、人差し指の第1関節と第2関節とあるのは、正しくは第2関節と第3関節です。お詫びして訂正します。
3点支持にしろ、4点支持にしろ、この回転しようとするフルートを、どうやってなだめるかの説明をすることが出来ない。単に、重さのかかる点を3点ないし4点挙げただけに過ぎないからだ。そして、どちらもリッププレートを顎や下唇で支えろ、としているのは、この回転しようとするフルートを顎の皮膚と広いリッププレートの摩擦によってなだめようとしているからだ。だから、汗をかくと滑るとか、滑るならリッププレートに切手を貼ると良いとかの、あまりお勧めできないTipsがまかり通ることになる。
では、どうやって回転を止めるかについて解説していこう。ポイントは右手の親指だ。この親指の形が何よりも重要だ。ここで正しい形を保つことさえ守れれば、もう問題は解決するはずだ。まず、右手の人差し指と親指で、力を抜いて自然にきれいな◯を作ってみよう。この時、人差し指の先端は親指のどこに接している?親指の腹じゃないよな?この人差し指と親指の接点でフルートを挟む形で持てればいいんだが、それだと親指のかなり先端がフルートと接してしまうので、それよりはやや関節に近い方、

この人差し指と親指の接点でフルートを挟む形で持てればいいんだが、それだと親指のかなり先端がフルートと接してしまうので、親指は、やや関節よりの部分で支えると良い。

この青色のあたりでフルートを持つ。この部分は押してみるとよく分かるが、うまい具合に凹んでいるはずだ。

親指を爪の方から見たレントゲン写真だ。爪と第1関節の間の骨には、窪みがある。(赤線部分)

こんな感じだ。

前から見るとこうだ。

よくない例。親指をフルートの縦軸方向に寝かせて、腹で支えている。これだと写真のように3.4.5.の指がキイから遠く離れてしまう。この持ち方をしているひとが、結構多い。

これもよくない。親指を回転させて腹で支えている。やってみればわかるが、3.4.5.はキイから遠く離れ、力が入ってしまう。
で、本題なんだが、どうやってフルートの回転を止めて、なだめて、フルートと仲良くなるかだ。右手の手首を少しだけ上に持ち上げてみてくれ。どうだろう、フルートを支えている親指に角度がついてフルートがおとなしくなるんじゃないか?
超厳密に言えば、これだって親指とフルートの摩擦で回転を止めているわけだが、関節の盛り上がった部分がうまくブロックしてくれるので、フルートは抜群に安定するはずだ。慣れないうちは少し親指の爪の脇が痛むかもしれないが、豆ができるほどではないだろう。そして、できれば親指は外側に反らせずに、内側に(自然に)やや曲がっていたほうが、手の甲に力が入らないはずだ。どうか、騙されたと思って試してみてくれ。

今日はここまでだ。 写真・・・汚い手で済まんな。
以前にも書いたことだが、もう一度整理して書いてみようと思う。よく3点支持とか4点支持とか言っているけど、 何言ってんだか、解っているのかねぇ。まずは、言い分を整理しておこう。
3点支持というのはこうだ。
①右手の親指の先端でフルートの側面を向こう側に押す。
②左手の人差し指の第1関節と第2関節の間でフルートをこちら側へ押す。
③顎または下唇で歌口を向こうへ押す。
4点支持というのはこうだ。
①右手の小指でEsキイを上から下へ押す。
②右手の親指でフルートの下部を支える。
③左手の人差し指の第1関節と第2関節の間でフルートを下から上へ持ち上げる。
④顎または下唇で歌口を上から抑えるように支える。
フルートの持ち方という立派な記事を目にするけど、指や顎のことを書いてはいるけど、どの部分でどちらの方向に支えるかということまで書いている記事は少ない。3点なら三脚、4点なら椅子・テーブルみたいな、なんとなく安定するだろうぐらいの考えで説として唱えるのはあまりに乱暴だろう。上記のように、力の加わる方向を示さなければ、なぜそれで楽器が安定して持てるのかの説明にはならない。
だがしかし、上記の説で、どんなに力学的に正しい持ち方が出来たとしても、フルートの持ち方の難しさはそんなことでは解決しない。フルートを少しでも吹いたことのある人なら直ぐにわかる事だが、フルートは常に手前に回転しようとしているのである。たくさんのポストやキイが手前の上になるので、常に内側に回ってこようとする。フルートを持って何より難しいのは左右のバランスなんかではなくて、回転しようとするフルートをどうなだめてやるかなのだ。回転をどうやって止めるのかがフルートを安定して持つための最大の要点だ。
さらに、顎ないしは下唇を、楽器を支えるポイントとする事に支障はないのかについても考える必要があるだろう。唇というのはフルートの音を作る最重要器官だ。それは上唇だけではなく両唇によって作られるべきもので、どちらも自由にコントロールされなければならない。顎だって、重要な働きをする。フルートを持つときの支点なんぞには使いたくないだろう。
正しい持ち方をしていれば、指の形も動きも自然に保っていられるだろうし、柔軟な唇の変化は、新たな素晴らしい音の発見にもつながるだろう。次回から詳しく説明していく。極秘保存版だ。
フルートの持ち方の秘訣、まとめると次の2点だ。
①フルートの回転を止める
②顎や唇でフルートを支えない
今日はここまでだ。 楽しみにしていてね。
訂正:上記の中で、人差し指の第1関節と第2関節とあるのは、正しくは、第2関節と第3関節です。お詫びして訂正します。
2025年6月4日
つまるところ、奏法においても、あるいは日常のフルートにかける時間においても、無駄を省くことが上達の秘訣だ。呼吸の量は限られているのだから、「最も優れた効率でそれを音に変えた時、最高のパフォーマンスを得られるだろう」という前提で奏法を研究してきた。同時に、私たちの使える時間にも限りがあるのだから、上達の秘訣の最も重要なポイントは、「時間をどう使うか」だ。仕事もあるし、家事もある、子育てだって最重要課題だ。その中で、フルートにどれだけの時間を割けるかを研究することは、もしかすると、奏法の研究より上達への効果は大きいかもしれない。「息が足りなくなったら取る」のではなく、息取りそのものを(その音、時間)音楽表現にに含めるように言ってきた。同様に、「時間が空いたから」練習するのではなく、練習そのものが、人生の喜びであるように計画されなければならない。そして、練習そのものがどのように計画されたものであるかが非常に重要だ。その日、楽器を組み立てるまで何を吹こうか考えられていなかったとしたら、時間を無駄遣いしてしまう。何も、はいロングトーン、はい音階、はいエチュード、はい曲という練習をしろとは言わない。ほんとうに重要なのは、フルートを吹いていない時間に、「あぁ、今度フルートを吹く時には、ああやって吹いてみよう」とか「今度フルートを持ったら、あんな音で吹いてみよう」「あんな持ち方をしてみよう」「あの曲のあそこを吹いてみよう」というように、想像を働かせ、何らかの目標や、期待や、喜びを持ってフルートを持つことだ。この想像にかける時間はいくらでもあるだろう。電車の中、退屈な会議、風呂に入っている時、洗濯物を干している時、包丁を持っていてもできる。
もし、練習時間が何分しか取れなかったとか、フルートを何日も持っていないなどと、自責の念に駆られている人がいたら、どうか、この考えている時間も練習時間に加えて欲しい。ね、これだけで健康的だし、フルートの世界が明るくなるだろ?恋人だって、会っている時間だけじゃなくて、会えない時間に、自分の事をどれだけ考えていてくれるかが上手くいくかどうかの分かれ目だな。知らんけど。
さらに付け加えれば、アンブシュアの練習とか、呼吸の練習とか、歩きながらだってできる。唇に力が入りすぎる人は、力を抜いて両唇を閉じて、唇の真ん中にポツンと小さな穴を作るにはどうしたら良いか、マスクの下なら何時でもできる。電車で立っているなら姿勢の練習だ。足を肩幅くらいに開いて、両肩をすっと落として、首を高くして、すくっと遠くを見るような姿勢で立ってみよう。吊り革なんか持たなくても安定して立つことができる。PCの画面と睨めっこしてるなら、両手で椅子の座面を下から持ち上げるように持って、大きく呼吸をしてみると良い。肩が上がらずに呼吸できるだろう。こういった、フルートを持たずにできる練習は実は沢山ある。ご紹介したいところだが、なかなか文章で表すのは困難だ。動画を撮る余裕ができたら少しずつご紹介したいと思う。
個々の情念や、音楽表現そのものを合理化することはできない、だからこそ合理化できるところは極限まで追求し、残った部分を解放する、その「解放される」部分こそ音楽の本質であることは言うを待たないことであろう。平均律というとてつもない合理化を果たした西洋音楽が、その事によってどれだけの果実を得ることができたか、それを想起する時、個々人の内部では、どのように合理化ができるか考えるのはきっと楽しいことだろう。
今日はここまでだ。 更新が1週間も空いてしまった。ごめんなさい。
前回は、不具合部分の合理的解決について述べた。不具合の部分を特定し、どの部品がどのように動かないのかを分析するように勧めた。そして、特定の音を抜き出して「鎖」のように練習する方法を紹介した。その過程で重要なのは「観察」する事だ。コントロールできない指の動きがあったらよ〜く観察してみよう。頭部管を左の肩に担いで、指の動きを目視してみよう。ま、たいてい4と5の指だわな、言うことを聞かないのは。しょうがないんだよ、腱が1本になってるから他の指のようにはいかない。だからこそ、4と5の指には「最適のポジション」を与てやる必要がある。例えば右手。小指がつっぱらかっていないか?小指が逆反りになっていないか?小指が伸びていると、薬指も動かしづらいだろう。そうすると、問題なのは持ち方だ。今までに持ち方については動画をはじめ何回も述べてきたので、もし問題のある人はもう一度読み返してほしい。(この辺に書いてある。)そして左手、小指がキイから5センチも離れてはいないだろうねぇ。ねえ。ねえ。左手の人差し指の第1関節と第2関節の間で楽器をガッチリ持つなんてことを言ってるひとがいるけど、私は採用しない。楽器を唇に押しつける事になるからね。そうやって、原因を煮詰めていくと、指がうまく動かない→持ち方が悪い→フルートの組み立て方が悪い→姿勢が悪い→性格が悪い→親が悪い・・・なんて所に行き着いちゃうことがある。つまり、だんだん解決が難しい問題に遡っていってしまう。練習の質としてはだんだん「イヤ〜な」事に向かい合わなくちゃならなくなてくる。さぁ、ここが問題なんだよ。ここで勇気を持てるかどうかが上達できるかどうかの分かれ目だ。最初に言ったよな。「美味しい所だけ食べようとする奴は嫌いだ」ってね。2〜3本の指の動きを練習するなんて、実はたわいも無いことで、持ち方を改める、姿勢を改めるという時間のかかる練習こそ不味くて、面白くなくて、努力が必要で・・・そして、大人になればなるほどこういう不都合には目を瞑ってしまうんだ。ずいぶん前に書いた記憶があるのだが、私たちの練習において足りないものは、いつだって「勇気」なんだわ。
ちょっと気恥ずかしいが、真に善い行いをしようとするなら、真に善い人にならなければならない、みたいな事を言っているわけだ。大好きなフルートのことなんだから、偽善的にうまく吹いても面白く無いよ。そして、話は元に戻る。ここ十年近く、ずぅっっっっっっと言ってきた事、良い音楽とは何なのか、良い音とは何なのか、なぜ音楽をするのか、そう言った問題に行き着いて、そこから自分自身で、「正しいフルートの吹き方」を見つけるしか無い。ネットを徘徊しても、多分、多分、美味しい話しか転がっていない。「こうすれば上手く吹けますよ」って美味しい話をつまみ食いしても、きっと真に上手くは吹けない、心は満たされない。もう一度おさらいしておこう。世界に暖かい風を吹かせるために、自分の息(生き)を最大の効率でフルートの音に変える。上達の秘訣だけではなく全ての答えはそこにある。
ここまでで今日の分は おしまい にしようと思ってたのだけど、この手の話はきっとウケが悪いので、ここまで我慢して読んでくれた読者諸兄にささやかなTipsを捧げるとしよう。難しいところは何百回練習しても、何千回練習しても、やっぱり難しいんです。簡単に吹けるようになるまで練習しようなんて思っちゃいけません。難しい箇所に来たら、集中力が高まるように集中力の波を自分で作っておくんです。その波もゆったりと揺れを楽しめるような波を、演奏が始まる前から自分の中に作っておくんです。ヤバい箇所に来た時ちょうど集中力の頂点が来るように自分でコントロールするんです。難所が来たら、集中して、キリッと顔を引き締めて、目を開いて、腹に力を入れて、男の子になるんです。別に女の子でもいいけど。絶対に逃げない、諦めない、俺はやる!・・・それで絶対上手くいきますから。
今日はここまでだ。なんか、きょう、調子悪いや。
前回までに、間違えないで吹けるテンポからゆっくりさらうこと、音符をかたまりで読むことを述べた。とはいっても、難易度はテンポや楽譜の複雑さだけで決まるわけではなく、やっぱり「うまく動かねぇな」という単純に指の動きが問題になるケースがある。こんなときどうするかが、今日のテーマだ。
楽譜を合理的に捉えること、つまり、重複部分は省き、似ている部分は差分を取り、連なる音は音階なのか、分散和音なのか、装飾なのか、簡単なアナリーゼをして(正しくなくていい)かたまりで認識する・・・それでもまだ練習には時間がかかってしまうもんだ。よし、もっと合理化だ。
毎度突っかかる部分とか、「なんとかできたけどイヤ~なところ」が当然あるだろう。そこで、<どこがどのようにできないのか>を煮詰める。「だいたいこの辺」じゃぁだめだ。どの音と、どの音のつながりの悪さが、どの指の動きの悪さによって起こっているのかを徹底的に分析するんだ。ある二つの音が特定できればそこだけを解決する。あるいは三つの場合もあるだろうし、四つの場合もあるだろうが、せいぜい四つくらいまでに特定したほうが良い。観察!観察!観察!
この不具合の発生する部分を特定出来たら、もう半分は成功だ。機械の修理だって不具合部分が特定できなきゃ成果はゼロだ。で、そこをどうやって改善するかの方法だ。こんな時はメトロノームなんかメンドクサイので使わない。特定された音が二つなら3連符、三つなら4連符四つなら3連符の輪を作る。それをゆっくりから始めだんだん速くし、まただんだんゆっくりしていって終わる。大切なことは、
①ゆっくりから始める
②コントロールが効かなくなるほど早くしてはいけない
③一番早くなった頂点は全体の中間になるようにすること
④初めのテンポと終わりのテンポが同じになること
⑤一息いっぱいを全体の長さにすること(途中で息はとらない)
これでやってみてくれ。下に譜例を挙げておく。

こんなところが上手く吹けなかったとすると・・・

原因がこの二つの音だったら・・・

この音型で繰り返す
ゆっくり始め、何度も繰り返していく中でだんだん速くする、コントロールが効く範囲でできるだけ速く吹く。そしてだんだんゆっくりしていって最初の速さに戻る。

原因がこの三つの音だったら・・・

この音型で繰り返す
ゆっくり始め、何度も繰り返していく中でだんだん速くする、コントロールが効く範囲でできるだけ速く吹く。そしてだんだんゆっくりしていって最初の速さに戻る。

原因がこの四つの音だったら・・・

この音型で繰り返す
ゆっくり始め、何度も繰り返していく中でだんだん速くする、コントロールが効く範囲でできるだけ速く吹く。そしてだんだんゆっくりしていって最初の速さに戻る。
音型とアーティキュレーションと拍節をわざとずらしてあるだけだが、このことによって毎回、力点が動く。これがコツだ。だから慣れないうちは軽いアクセントを拍の頭に置いても良いだろう。
今日はここまでだ。おや、鶯が鳴いている。
エチュードをたくさんやると、何がいいのかって言うと、前にも書いたと思うけど、「譜読みが早くなる、譜面がよく読めるようになる」という効果が一番大きい。譜読みが苦手な人の特徴は、音符の玉(符頭)をひとつ一つ追っかけていくので、これで早いパッセージを吹こうとするなら、動体視力の勝負になってしまう。譜面を素早く読むには、「塊で読む」「パターンで読む」ことに慣れてしまう以外にない。演奏中、脳の中に音符認識というテーブルを拡げる。このテーブルに、音符を一つずつ置いて解釈していったら忙しくてしょうがない、あっという間に脳のCPUはパンクする。このテーブルの上にできるだけたくさんの音符をバァっと拡げて、一度に認識してやるんだ。これがコツ。間違えないようにゆっくりから練習するというのは、動体視力を鍛えるのではなく、最初はひと粒ずつしか認識できなかった音符を、次第にいくつかの塊として認識していけるようにするのが目的だ。そして、どのように塊を認識すれば良いのかが大切なんだが、次の譜面を見てほしい。

Joachim Andersen Op.15 24Große Etüden für Flöte Nr.1
数回の練習の後、パターンが認識できれば、この楽譜の赤い音符だけ見ていけば吹けるだろう。と、すると、一瞬で一小節分くらいは認識できるはずだ。確か前回に、「差分を認識する」と書いたと思うが、これがその一例である。また、こうすると頂点にある旋律線がちゃんと見えてくるので、表現の上でも役に立つだろう。(1段目のラ・シ・ド・シ、2段目のシb・ド・レ・ド)
そしてここで大いに役立つのが、みんな大好き「楽典」の知識と、「基本練習」の成果だ。上記の譜面で言うと、ハ長調、イ短調、ニ短調、変ロ長調、減七の和音が出てくる。これらのアルペジオ練習をもし普段からやっていたとすれば、大いに役立つはずだ。余談だが、減七の和音は3種類しか存在しないのだが、それだけを取り出して練習されることはめったにない。しかし、エチュードには頻繁に出てくる。やり方は先生に相談してね。
では、こんな譜面はどうだろう。

Joachim Andersen Op.15 24Große Etüden für Flöte Nr.10
この譜面の背景に色がついている部分は全く同じだ。こんな時、眼を真っ赤にして音符一つずつ見ていったら︎ホだぞ。

Ernesto Köhler Op,33-2 Nr.1
譜面に書き込んである赤玉は全部全打音だ。当たり前だが、次の音は2度下で、これを省いて譜面を見りゃ、何のことは無いドミソの和音だったりだラドミの和音だったりする。そして、青玉から次の青玉までは半音階だ。パッと見て半音階だと分かれば、半音階を吹けばいい。臨時記号に惑わされてはいかん、そんなもん見ない。始点と終点さえ分かれば見なくていい。だから、半音階も日頃練習している人は有利だね。ついでに言うと、2段目の3小節目のミ・レ#・ミはモルデントだ。こんな時「え~と、レのシャープだから・・・」なんて考えてたら置いてきぼりを食らう。臨時記号が出てきたついでに言うと、ある臨時記号が「転調したから」出てきたのか「単に経過音や、装飾的な意味」によって書かれているのかを把握しておくと良い。転調していれば、その部分の記号(#がいくつとかbがいくつだとか)を頭に展開すればいいし、装飾的な意味として付いているなら前後の音はたいてい半音上か下だ。それから短調だと6度と7度には臨時記号が付きやすいし・・それでねダブルシャープなんか出てきた時に、「え~と、ファのダブルシャープだから、ファ#でもう一個上だからソだな」なんて考えていたらまずアウト!ましてや、楽譜にカタカナなんかでフリガナ振ってたりしたら、中級レベルとしては、上達は「望み薄」だよ。もしまだやってたら、すぐに止めてね、大丈夫だよ、すぐにできるようになるから・・・と優しく注意しておくよ。
今日はここまでね。か・た・ま・りで読むんだからね。
練習は退屈との勝負だ。練習好きなら多分退屈はしないんだろうけど。退屈でも我慢ができるなんて言ってるヤツは上手くはならんよ。俺は多分、世界的な練習嫌いだ。そうだよ、演奏は◯流だけど練習嫌いは一流だ。でもな、練習好きがうまくなるとは限らんぞお。でだ、昨日決めた発射台からひとメモリずつ上げてきゃ、いつかは吹けるようになるんだが、最初はべらぼうに時間がかかる。そりゃそうだわな、とてつもなくゆっくり吹いてんだから。いいんだよ、本番前日に吹けるようになりゃいいんだ。いつも生徒に行ってるんだよ、「中途半端なテンポで間違えながら練習して、100回の練習で間違えずにに吹けるようになった。101回目は?・・・多分間違えるだろうな。ゆっくりから、間違えずに練習して100回目でテンポで吹けるようになった。101回目は?・・・多分正しく吹ける。」別の言い方をすれば、曲が仕上がった時、それまでの練習で、正しく吹いた回数 > 間違った回数 じゃなきゃ上手く吹けるわけがねぇ。


どっちがうまくいくかって言うと、どう見ても左(上)だな。右(下)の方はやればやるほどキツくなる。目に見えた成果が上がらないもん。そうは言っても、メトロノームをかけてゆっくり練習するのだから、楽だろうが退屈もするだろう。そこで毎回、色々なバリエーションを自分で考えて吹いてみる。少しご紹介しようか。

アーティキュレーションのバリエーション

リズムを変えるバリエーション。3連符が出てくるところは、メトロノームの目盛りを2/3にしてやること。
これで16種類だ。全部はやらなくていい、都度変えて退屈しないようにすればいい。

このリズムでやるのはよく知られているが、符点が甘くなると酔っぱらいの手拍子のようになって、かなりダサい。漫然とやらないほうがいいな。

その逆のこれはかなり難しい。十六分音符が前に飛び出さないようにするのに神経を使う。また譜例にあるように、十六分音符の方にきちんとアクセントが付くようにする。
(シュミッツによくやらされた。嫌だった。)
(この譜例は見やすくするため1に、倍の音価で記してある。実際は符点十六部音符と三十二分音符である)
きょうはここまでだ。明日はレッスンだからな、寝とかなきゃな。風が強いな。きゅうりの苗は大丈夫かな?
スタートのテンポ(しつこく言うが無理しない)を決めたら、まず一回チトテト吹いてみるか。引越しして、駅までの道を地図を見ながら歩いているわけだ。注意すべきは、周りの景色を覚えたり、曲がる角の目印を覚えたり、どんな店があるか探ったりと、なるべく視野を広くとって、「いずれは地図なしで歩く」事を念頭に置いておくことだ。暗譜で吹くという意味ではないが、吹いていて、この先の展開が頭の中に入っていないとまずい。吹いていて、「あっ!ここ間違えそう!、注意!」って思うところがあったら、止まって楽譜に印だ。散歩しながら犬が片足上げるようなもんだな。
アーティキュレーションは全部無視でいい。ややスタカート気味に吹けば、何処でも息をとれるから、とりあえずは足りなくなったら取ればいい。最終的には息取りの工夫をしなけらばならず、これがもしかすると一番厄介だろう。曲によっては、十六分音符がずっと続いていて、「吹けるわけないじゃん!」みたいのがあるが、そんな曲だったとしても、ひとつの曲として吹き通されなければならないので、「テンポを止めてはいけない」という原則は守られなければならない。息取りのたびに、しかも小節線の上で、パタッと止まってヒュッって息とって、ハイ再開!なんてやったらいかんよ。アーティキュレーションを利用して息を取るか、リタルダンドで隙間を作って息を取るか、どうしようもなければ目立たないようにリズムを変えて息を取る。この辺りはかなりの経験を用する部分だな。先生と相談してくれ。間違ってもテンポを止めるなよ、心臓だからな、止まったら死ぬ。エチュードだからなんて言い訳はだめだ。テンポを速めるにしたがってこの息取りについての考察が大きな比重を占めてくるはずだ。
初回のいわゆる譜読みとして吹いてみるのは一回だけにしよう。一回目でつっかえ、つっかえだったら、二回目をやってもいいが、一回目よりはテンポを必ず落とすこと。この一回目の練習で曲の大体の構造をつかんでおく。そして、重複部分をチェックして、無駄な練習を省けるようにしておくんだ。
一番やってはいけない練習は、テキトーなテンポで頭から吹き始めて、つっかえては転び、起き上がってはまた転び、最後までたどり着いて溜息一発、ふぅ~っ。よし、根性!ってなもんでもう一回頭から・・・これ、絶対ダメ。「なんとなく練習して、なんとなく吹けるようになる」のは、初級者までだ。そう、アルテの第二巻くらいまでは、こういった「力ずく」で吹いちまうことができるかもしれない。でもあなたはもう中級者なんだから、合理的に練習しなくちゃ時間がいくらあっても足りない。ただでさえ、練習時間をやりくりしてフルートを吹いているんだから、秒単位で無駄を省くんだ。
多くのエチュードは、後半が再現部だったりするので、すっぽりさらわなくても済む部分がある。そして、この時必要なのは、完全に同じなのか、ちょっとだけ違うのかを見極めておくことだ。つまり、「差分」を頭に入れておく。この「差分」を理解しておけば、「冷静に」楽譜に立ち向かえるだろう。メモを用意して、スタートしたテンポを書いておこう。間違えずに吹けたらメトロノームのテンポをひと目盛り上げてやる。最近のメトロノームはデジタルで目盛りがなく、1ずつ上がっていくが、1ずつ上げる必要は無い。メトロノームの目盛りはこうなっているから覚えておくとよい。40,42,44,46,48,50,52,54,59,58,60,63,66,69,72,76,80,84,88,92,96,100,104,108,112,116,120,126,132,138,144,152,160,168,176,184,192,200,208。40から60までが2ずつ、60から72までが3ずつ、72から120までが4ずつ、120から144までが6ずつ、144から208までが8ずつだ。あぁ、あの三角のメトロノーム懐かしいなあ。あれ、売ってるけど高いよな。音も断然あっちのゼンマイ式のほうが良かったな。難点は、左右が狂ってっ来る場合がって、そうすると下に薄い紙なんか敷いて調整したもんだ。余談ついでに、デジタルメトロノーム、1分間に何百って打てるから、すげえうるさいド速いテンポで練習する奴居たな。健康に悪いから止めといたほうがいいぞ、迷惑だしな。
スタートのテンポを余裕で決めたら、吹いていてそんなに苦労はないはずだ、目が真っ赤になったり、肩が凝りまくったり、左の人差し指が痛くてどうしようもない、みたいにね。だから、よく耳を使って、「自分の音で吹けているか」に注力するのが大切だ。常に「指の練習じゃなくて、音の練習」だと自分に言い聞かせること。どんなに器楽的なフレーズでも「唄う」ように吹くこと。
今日の部分をまとめておくと・・・
①最初のテンポで見栄を張らない。
②徹底的に合理化する。同じフレーズ・パッセージは2度吹かない。
③最終的にどこでどのように息を取るのか、考えながら練習する。
④音が自分の音でなかったら、即、止めて別の音の練習をする。
⑤どこか痛くなったり、青くなったり、赤くなったり、白くなったりしたら、そこの改善が先だ。
今日はここまでだ。 な、吹けるような気がしてきただろ?
おいらの好みではない、えらくキャッチーなタイトルなんだが、検索語句を調べるとこういうのが上位に来る。みんな困ってんだろうな。なぜ、おいらの好みではないかというと「美味しい所だけ食べる奴が嫌い」だからさ。だから、「上達の秘訣って何ですか?」って聞かれると「そんなもんはねぇよ」と言いたいんだが、でも、あるんだよね、少しは。「長生きの秘訣」とか「健康の秘訣」なんかほとんど当たり前のことしか言ってないけど、確かに「暴飲暴食」なんぞはあまりしないほうがいいだろう。ま、それよりはましな事を書いていくつもりだ。
ある試験があったとする。合格点は60点。試験の要素は2種類あって、Aの配点は30点。Bは70点だ。あなたが得意なのはBで、不得意なAなんか捨てても、得意なBで得点すりゃ合格だ。いろいろ考えはあるだろうが、「上達」することを目標に置くとしたら、ここはやっぱりAを勉強・克服しなくちゃならない。そうしなければ一生70点以上は取れないからな。だから、「美味しい所だけを喰う」癖は捨てたほうが良い。賢明な読者諸兄は、今までに私が語ったことをご理解いただいていると思うので、笑いながら読んでほしい。キャッチーなタイトルに釣られてここに来てしまった諸兄には、できれば苦い所を食べてみてほしいが、ま、喰う順番までは口を挟まないよ、安心してくれ。前置きが長くてすまんな。
今までのおいらの論法だと、まず心構えから始まって、姿勢、持ち方なんぞに講釈をたれて・・・みたいな典型的くそジジイ論法だったんだが、キャッチータイトルついでに、逆にいくぞ。えへへ、美味しい所からだな。
「エチュードをうまく吹く方法」「エチュードを早く仕上げる方法」なんて美味しそうだろ?
ここでいう中級者とは、まあ、アルテの第2巻を終えた位のレベルを考えている。「終えた」といっても色々あるが、理解できて、先生とデュエットできるくらいで充分だ。間違っても、YouTubeなんかに上っている腕自慢かなんか知らんが、あんな演奏、参考にしないでくれ。特にテンポな。確かに楽譜にメトロノームの数字が書いてあるが、そんなテンポで吹く必要は全く無い。あれ、聴いている時間があったら、さらうか、散歩に行くか、うまい飯を作るかしたほうが人生にとってプラスになるぞ。悲しいことにジジイには、ナンパという選択肢がない。
なぜ、アルテの第2巻を基準にしたかというと、あの教本、上手く出来てんだよな。第2巻で、いわゆる「装飾法」の基本を全部学ぶことができる。すべての調が出てきて、基本的な奏法や読譜力を身につけることができる。と、言うわけだ。ちょいとわき道にそれるが、フルートクラブ版のアルテはデュエットが省略されていたり、1巻にはガリボルディのエチュードが付いていたり、2巻では15課で全調の退屈な音階とアルペジオ練習があり、終わりのほうでは妙なテレマンが加えてあったりしていて、終えるのにオリジナルより時間がかかってしまう。音階とアルペジオは大切な練習なので、#、bを3つまでにしておいて2巻に入ってから都度、他の調を練習したらいいと思う。オリジナル版でやるのが最も早く終えることができる。
じゃ、いくぞ。まず、エチュードの典型、十六分音符並んでいる系のヤツな。

こんなのや
Köhler Op.33 Nr.10

こんなのや
Andersen Op.33 No.1

こんなのや
Sussman 30 exercices

こんなやつ
Böhm op.26 Caprice Nr.1
十六分音符が最初っから終わりまで並んでいるこの手のエチュードは、山のようにあって、掃いて捨てたいほどだ。このタイプのヤツの練習の仕方だ。メトロノーム用意してね。
あんまりびっくりするなよ。前回、計器に従うやつはアホだ、出ていけ! みたいなこと書いたけど、この手のエチュードは淡々とテンポを刻むメトロノームに乗っかって練習したほうが楽ちんだからな。指と頭を比べると、指のほうが少しお馬鹿さんだから、助けを借りるわけだ。そして、練習に入る前に次のことを確認しておいてほしい。
「初見で吹くとしたら、どの位のテンポで始めれば、間違えずに吹けるか」
個人差があるから、自分自身の最初のテンポは常に考えていたほうが良いだろう。たぶん60のテンポに音符二つくらいだろうな。おいらは、以前にやった曲でも、練習しなおすときは80のテンポに音符二つから始める。所見の能力はこなしたエチュードの量に正比例するから、別に60で始めなくても気にしなくていい。40でも間違えずに初見をこなせればブラボーだ。発射台を高くする必要は無い、大事なことは間違えずに、突っかからずに吹けるかどうかだ。ここで無理すると、えらくしんどい思いをするか、最後までいかずに挫折するからね。
次回までに、このスタートのテンポを探しておいてくれ。
今日はここまでだ。次回からおが楽しみだ。